グローバルダイニングが瀕死の外食産業で一人勝ち 「深夜営業」「酒」提供で奇跡のV字回復

グローバルダイニングが瀕死の外食産業で一人勝ち 「深夜営業」「酒」提供で奇跡のV字回復

都に損害賠償訴訟をし記者会見するグローバルダイニング長谷川社長(2021年3月22日)

■訴訟も継続中


 飲食チェーン「グローバルダイニング」が東京都に賠償を求めた裁判の第2回口頭弁論が7月9日、東京地裁で行われた。

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 グローバルダイニングは3月、新型インフルエンザ対策特別措置法(特措法)に基づき、営業時間の短縮を命じられた。

 これに同社は「営業の自由を保障した憲法に違反する」などと主張、東京都に対して104円の損害賠償を求めた。金額が少ない理由は「損害賠償が主目的の訴訟ではない」と説明している。

 裁判の行方に関心を持つ人は多いだろう。そして外食産業では、別の観点からもグローバルダイニングが注目されているという。関係者が明かす。

「少なくとも関東圏の外食産業で、グローバルダイニングが唯一の勝ち組だというんです。営業時間の短縮やアルコール提供の自粛要請に応じている店舗は、売上が下がって当然です。ところが同社は夜遅くまで営業しているし、酒も堂々と出しています。客数や客単価はコロナ禍前の水準を維持していると考えられ、だからこその“圧勝”というわけです」

 グローバルダイニングの公式サイトで調べてみると、海外店舗を除くと15のチェーン名が記載されている。この中で特に知名度が高いのは、イタリアンの「カフェ ラ・ボエム」、エスニック料理の「モンスーンカフェ」、和食の「権八」といったところだろう。

 特に「権八」は2002年に当時のブッシュ大統領が来日した際、小泉純一郎首相が夕食の席を用意して話題になったことがある。


■深夜営業に酒の提供


「ラ・ボエム」、「モンスーンカフェ」、「権八」で、営業時間やアルコールの提供がどうなっているか調べてみた。すると、それぞれの公式サイトでは、わざわざ断り書きが用意されていることが分かった。文面は、ほぼ統一されている。以下のような具合だ。

《当社はこの度の緊急事態宣言下、またまん延防止等重点措置の下におきましても、時短・休業要請には応じず、平常通りの営業を続ける方針です》

 この後に《酒類につきましても、提供させていただきます》と明記した一文が続く。

「グローバルダイニングが運営するレストランが人気を博したのは、深夜営業が消費者の支持を集めたからです。内装にこだわり、夜中でも質の高い料理やアルコールを提供したことでファンを増やしました。そうした“経営理念”をコロナ禍でも貫いたわけですが、当然ながら現在でも賛否両論を引きおこしています」(同・関係者)

 グローバルダイニングは1999年、東証2部に上場した。公式サイトには経営に関するデータが開示されており、これを使ってコロナ禍が同社に与えた影響を振り返ってみよう。


■2020年の売上高は?


 中国の湖北省武漢で初めて新型コロナウイルスの感染者が発症したとされているのは、2019年の12月8日のことだ。

 グローバルダイニングは公式サイトで、国内店舗数を40店と記載している。2019年、国内全店の売上高は91億255万2000円だった。

 これを12で割ると、約7億5854万円という金額になる。これをグローバルダイニングの1か月平均売上高と仮定してみよう。

 2020年1月29日、武漢からチャーター機の第1便が羽田空港に到着した。ダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に停泊し、除染作業が行われたのは2月のことだった。

「1月の売上高は6億4613万円で、2月は5億7411万円。前年対比はマイナス1・5%と、マイナス9・7%という数字でした。下落が1割近いので、既に新型コロナの影響があったのかもしれません。とはいえ、その後の下落率に比べると、まだまだ“序の口”と言えます」(同・関係者)


■マイナス84・7%


 新型コロナウイルスが同社に襲いかかるのは、3月になってからだ。当時、北海道で感染が拡大しており、死者も発生していた。道内には緊急事態宣言が発令されていた。

「3月の売上高は3億7047万円でした。先に月の平均売上高として約7億5854万円という金額を仮定してみましたが、そのおよそ半分です。実際、前年対比はマイナス56・6%と大きく落ち込んだことが広報資料に残されています」(同・関係者)

 4月になると、当時の安倍内閣は全国に緊急事態宣言を発令した。大半の教育機関も通学停止を求めるという厳しい内容だった。街が閑散とした鮮明な記憶をお持ちの方も多いだろう。

「4月に至っては、売上高は1億1952万円でした。前年対比はマイナス84・7%。5月も2億3370万円で、マイナス69・8%でした。東京都では5月25日に宣言が解除されましたが、客足は戻りませんでした。年末まで、月の平均売上高は3億円から5億円の範囲にとどまり、前年対比も4割台までしか回復しなかったのです」(同・関係者)

 今年1月8日に東京都では再び緊急事態宣言が発令された。だが、グローバルダイニングは営業時短要請を無視した。


■軌跡のV字回復!?


 毎日新聞は1月17日、「新型コロナ 時短要請、外食の乱 都の協力金、大手は対象外 『雇用守れぬ』苦渋の営業」との記事を掲載した。この中でグローバルダイニングの様子が詳報されている。

《居酒屋「権八(ごんぱち)」の西麻布店は午後8時を過ぎても庭木のイルミネーションが輝き、カップルや仕事帰りの会社員のグループなどが次々と店に入っていった》

《運営する東証2部上場のグローバルダイニングは、宣言下の首都圏1都3県にある約30店で時短要請に応じていない。同社の広報担当者は「店名を行政に公表されても覚悟の上だ」と言い切る》

 ところが、である。同社の売上高は回復基調に乗っていく。まず2月の売上高は、宣言が解除になったこともあり、6億3498万円まで回復した。

「都は3月、グローバルダイニングに対して全国初の時短命令を発します。同社はこれを最終的には無視し、逆に都を提訴しました。マスコミ各社は、これを大きく報道。社会的関心事となる中、3月と4月は6億円の売上高をキープし、5月と6月は7億円台に上昇させました」(同・関係者)


■コンプライアンス問題


 ちなみに4月の売上高は6億7814万円で、前年対比が467・4%という見たこともない数字が記録されている。もちろん、前の年があまりにも悪かったことから生じた数字のマジックだ。

 回復基調にあるとはいえ、2019年の平均月売上高である約7億5854万円を突破したのは、今年5月と6月に過ぎない。

「とはいえ、大手から個人店まで、時短やアルコール自粛の要請を守った外食店からすれば、到底、信じられない数字です。その手法には様々な意見があるでしょうが、グローバルダイニングがコロナ禍で唯一の“勝ち組”と言われるゆえんです」(同・関係者)

 問答無用の落ち込みから、“軌跡のV字回復”を果たした経緯を、折れ線グラフにしてみた。

「グローバルダイニングの方針に賛成する人は運営されている店に行き、賛成できない人は店に行かなければいいだけだ、という考えがあります。それが正論だとは思いますが、1つだけ気になることがあります。仮にも上場企業なので、コンプライアンス(法令遵守)が求められることは言うまでもありません。訴訟を起こすほどですから、同社は経営哲学に基づいて行動しているのでしょう。とはいえ、銀行が懸念を示しても不思議はありません。今後、同社が融資を求めた時、銀行がどう動くかは関心が集まると思います」(同・関係者)

デイリー新潮取材班

2021年7月15日 掲載

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