熱海土石流、次に危ないのは箱根? 専門家が指摘「伊豆半島のほぼ全域が熱海と類似した地形」

伊豆半島ほぼ全域が熱海と類似した地層と地形 三浦半島の逗子・横須賀の危険性も指摘

記事まとめ

  • 気象庁が線状降水帯の情報を発表するようになったが、静岡で『隠れ線状降水帯』が発生
  • 伊豆半島のほぼ全域が、熱海に類似した地層と地形を有しているという
  • 勾配がある三浦半島の逗子や横須賀も今後はがけ崩れの恐れがあると指摘されている

熱海土石流、次に危ないのは箱根? 専門家が指摘「伊豆半島のほぼ全域が熱海と類似した地形」

熱海土石流、次に危ないのは箱根? 専門家が指摘「伊豆半島のほぼ全域が熱海と類似した地形」

7月3日に静岡県熱海市伊豆山で起きた土石流災害

 近年の日本列島では、梅雨前線の停滞などにより7月上旬に大規模な水害が頻発している。2018年には西日本を豪雨が襲い、200人以上が死亡・行方不明に。また昨年の九州豪雨でも、熊本県をはじめ被害は広範囲に及んだ。この2件ではいずれも「線状降水帯」が発生しているのだが、今年もまた、それらに“酷似した状況”が展開されていたという。

 気象庁のHPでは、線状降水帯について、

〈次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50〜300km程度、幅20〜50km程度の強い降水をともなう雨域〉

 と記されている。気象予報士の森田正光氏が言う。

「気象庁は今年6月から線状降水帯の発生情報を発表するようになりました。これには対象面積(500平方キロ以上)や3時間積算降水量(150ミリ以上)などの基準があり、今回はその降水量に達していなかったため、情報発表が見送られたのです。ただ、その他の基準はすべて満たしており、形状も線状に広がっていました。いわば『隠れ線状降水帯』だったと言えるのではないでしょうか」

 1時間あたり10〜20ミリという今回のような雨は、梅雨時にはさして珍しくない強さであるものの、

「それが延々と続いたのは前代未聞でした。例えば箱根では、3日間の降水量が800ミリを超えている。これは7月の降水量の1・9倍にあたります。1時間20ミリ以上降ると土砂災害のおそれが生じるとされますが、今回はだらだらと降り続け、気がつけばその値を上回っていた。大量の雨がしみ込んだ土壌が、一気に流れ出てしまったのです」

 暖気と冷気の境目である「前線」は空気の壁のようなもので、海側から湿った大気が次々と送り込まれてその壁に当たり、継続的に雨雲が作られていく。そうして水蒸気が延々と補給され、雨が降り続けることになったのだという。

「今回の『隠れ線状降水帯』は静岡県を横断し、伊豆半島の付け根あたりに広がっていました。その周辺の土壌雨量指数は今も高い水準にあるといえるので、引き続き注意が必要でしょう」

 地域の土壌について、静岡大学防災総合センターの北村晃寿教授は、

「現在の伊豆半島の地層は、数十万年前の火山活動によって形成され、おもに火山岩や火山砕屑(さいせつ)岩から成り立っています。熱海と同じように火山性の岩石でできており、急勾配の坂があって山が海岸のすぐ近くまで迫っている地形となると、伊豆半島のほぼ全域が熱海に類似した地層と地形を有しているともいえます」

 今回は土石流の起点となった付近に盛り土があり、その5万立方メートルとあわせて約10万立方メートルの土砂が流出した。

「この人為的な要因が、災害の甚大化に繋がったのは間違いありません」

 そう前置きしながらも北村教授は、

「例えば火山性の地層で急勾配の多い伊東や網代、下田、そして箱根などが警戒すべき地域となるでしょう」

■逗子や横須賀も


 土石流が襲った伊豆山地区は、熱海市のハザードマップで土砂災害警戒区域に含まれていた。こうした場所は現在、全国に約66万カ所あるという。東京農工大の石川芳治名誉教授は、

「盛り土でなく、通常の斜面が崩壊したとしても土石流になっていたケースだと思います」

 そう指摘する。

「勾配が30度以上ある斜面では崩壊が起こりやすく、それが15度以上の勾配がある川に入り込むと土石流になります。今回の場所もこれに該当するので、結果としてたまたま山の斜面でなく盛り土が崩壊したということになります」

 表層部には火山灰が多く堆積しており、

「火山灰は、特に水を含むと柔らかくなるため、雨が強まると滑りやすくなります。ただし、火山灰でなくても柔らかい土というのは全国に散らばっている。つまり土石流はどこでも起こり得るのです」

 その中でも今回、前出の「隠れ線状降水帯」に重なっていた地域でいえば、

「三浦半島は勾配がある地形ですし、もともと地質が脆いところが多い。特に逗子や横須賀は砂岩、泥岩、そして頁岩(けつがん)(泥質の堆積岩のうち、堆積面に沿って薄く割れやすい性質があるもの)といった地質で、弱く亀裂も入りやすいのです。地形的には大きな谷もなく土石流の危険はさほどありませんが、今後はがけ崩れのおそれがあります」

 実際に3日朝にも、逗子の横浜横須賀道路で土砂崩れが起きており、また昨年2月にも、市街地で土砂崩れが発生。女子高生が亡くなっている。

「雨が止んでも、土に含まれた水がすぐに乾くわけではありません。2〜3週間は、土中に水が残っているのです」

 そんな状況でさらに雨水を吸えば、影響はより大きくなるというのだ。

「関東地方の梅雨明けは今月20日前後とみられています。それまでに再び降れば、大被害になるおそれがあります。また箱根は、地質的に火山灰が堆積しているところが多く、地形的にもがけ崩れだけでなく土石流の危険があると思います」

 防災システム研究所の山村武彦所長が言う。

「市民の方が災害に備える方法としては、やはりまずハザードマップを見て自分が住んでいる地域がどのように分類されているかを知るよう勧めます。また、避難情報は気象庁の『キキクル』というページにまとめてあり、各々の地域の危険度が分かります」

 身の安全のために、情報は自ら手にすべきである。

「週刊新潮」2021年7月15日号 掲載

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