熱海土石流、盛り土業者の社長が「自分は悪くない」 「逃げる金がない」と周囲に相談も

【熱海土石流】盛り土業者の社長は雲隠れ 「自分は悪くない」と開き直る発言か

記事まとめ

  • 熱海市を襲った土石流問題で、盛り土業者の社長は現在も雲隠れしている
  • 社長は「盛り土の届け出をしたのだから自分は悪くない」と開き直っていたという
  • この社長は00年に逮捕・起訴されており、09年にも組織犯罪処罰法違反に問われていた

熱海土石流、盛り土業者の社長が「自分は悪くない」 「逃げる金がない」と周囲に相談も

 今月3日に熱海市を襲った土石流の犠牲者は20人ちかく、いまだ多くの人の安否が不明である。現場から流出した盛り土は、小田原市の不動産業者の手によるものだが、当人は現在も雲隠れ。実はこの社長には「別の肩書」があり、市議会でも畏怖された存在だった――。

 ***

 静岡県は8日、今回流れ出た土砂の総量について、当初の10万立方メートルとの見立てを修正、正しくは約5万5500立方メートルだったとの分析結果を公表した。

「盛り土をした神奈川県小田原市内の業者は、この土地を2006年9月に取得し、翌年4月には熱海市に『残土処理』の名目で届け出をしています。09年には県の土採取規制条例に基づき、盛り土を15メートル、約3万6千立方メートルとする変更届を出したのですが、実際の高さは3倍超の約50メートル、容積も1・5倍の約5万4千立方メートルにのぼったとみられています」(全国紙社会部デスク)

 すなわち、土石流の大半がこの盛り土だったわけである。現在の土地の所有者は都内の民間企業で、11年2月に小田原の業者から土地を購入した。この現所有者の代理人弁護士は本誌(「週刊新潮」)に、

〈欠陥のある土地を売りつけられたのならば、前所有者の責任を追及しないといけないかもしれない〉

 そう話しており、責任は前所有者にあると主張。名指しされた格好の小田原の業者もまた、相談を持ち掛けた弁護士に“悪いことはしていない”と漏らしていたというから、罪のなすりつけ合いの様相を呈しているのだが、

「小田原の業者は、以前から熱海市の行政では知られた存在でした」

 とは、さる市の関係者である。例えば07年夏には、こんなことがあった――。

 同年7月、台風4号の被害で、今回の現場から100メートルほど上方で土砂が崩れた。この土地を所有していたのも小田原の業者で、現場に置かれていた熱海市の貯水タンクが土砂に覆われてしまった。市は業者に土砂の撤去を求めたのだが、業者は「自然災害なので知らない」などと応じなかったという。

 これに関して同年8月7日、熱海市議会の建設公営企業委員会では、以下のような質疑がなされている。

〈土砂災害の土地所有者がすぐに行動しない向こう側の言い分は何ですか〉(委員)

〈こちらでお願い文書を出した回答がありまして、これは自然災害だから我々はやる気がないというふうなことでございました〉(当時の水道温泉課長)

 土砂はその後、市の費用で撤去されたのだった。

 この小田原の業者は、かつて小田原駅前の一等地に建つビルに事務所を構え、70代の男性社長は現在も複数の関連会社を実質的に運営している。その傍ら、00年には債権回収妨害事件で逮捕・起訴されており、09年にも違法な風俗店をテナントにした容疑で組織犯罪処罰法違反に問われていた。

 今回、大惨事のきっかけを作ってしまったこの社長とは、いかなる人物なのか。さる知人が言うには、

「小田原市内で育ち、大学を出た後、測量会社に勤めていました。本人によれば、働きながらいくつかの大学院に通ったとのことで、テーマは土地の起源論から地租改正、被差別の歴史と多岐にわたったといいます」

 25歳の頃、実家の近くで学習塾を開業。すでに妻帯者だったが、この頃に最初の離婚をしたという。

「塾に通う子たちの親から、周囲の農地の売買に関する相談などを持ち掛けられるようになりました。そのうち、自身で不動産売買も手掛けだした。実家の裏手で事務所を構えていましたが、30代半ば頃、にわかに同和関係の書物を買い集め始めたのです」(同)

 それが今日の活動へと繋がったというのだ。小田原城に近い自宅は、敷地面積およそ500平方メートルの瀟洒な一戸建て。現在の妻は3人目で、40代の外国人女性だといい、

「ロシア系モンゴル人だと聞きました。元々、飲食店で働いていた彼女を見初めて数年前に一緒になったのです。夫婦には、小さい女の子もいます」(同)

■「うるせえ」と聞かず


 ところで、この業者が熱海市議会で俎上に載せられたのは一度ではない。08年9月2日の観光福祉委員会では、業者が市内の日金地区にあるホテル社員寮を改修し、よからぬことに使うのではないかとの「うわさ」を質す中で、委員の市議がこう評しているのだ。

〈熱海に非常に大きないろいろな問題を提起している会社〉

 実際に質問をした村山憲三市議が言う。

「当時は熱海の旅館やホテルが何軒も倒産するなどして、競売物件が次々と出回っていました。そこに目を付けたのがこの業者。それまでもあちこちで荒っぽい工事を行っていたと聞いていたし、地域住民からも“何とかしてほしい”という声を頂いていた。だから議事録に残るよう、あえて議会で社名を出したのです」

 この社員寮は結局、解体され、跡地は分譲地となる予定だった。ところが現場では、コンクリートの破片や土が敷地から道路にはみ出すなど、杜撰(ずさん)な作業から地元住民とトラブルに。当時の町内会幹部が振り返る。

「解体作業の後、宅地造成のために社長自らやって来て、本人がユンボで土地の中にある木をなぎ倒していきました。近くにハイキングコースもあって危ないので、市の職員から注意してもらったのですが、社長は『うるせえ』と言って聞かなかった。まるで“自分の敷地で何をしようが勝手だろう”といった態度でした」

 分譲地はその後、買い手が現れず。現在は草木が生い茂ったままである。

「今回の盛り土も同じ業者だったと聞いて、当時の記憶が一気に蘇ってきました。行政にはまず、被災者支援と補償の問題を最優先にしてほしいですが、その後、なぜあのような業者が野放しになってしまったのか、他にも被害が出るおそれのある地域がないか、しっかり調べてもらいたい」(同)

 現に、熱海市上多賀でも12年、この業者が造成した土地から300メートルにわたって土砂が流出し、隣接する寺院の敷地に流れ込むトラブルが起きている。こうしたトラブルは決して過去のものではない。業者の地元・小田原市内でも今回、大雨の影響でトラブルが発生していたのだ。

 現場は、小田原駅の北に位置する久野地区。地域住民が言うには、

「ここの丘陵地に、業者の関連会社が手掛けるバーベキューハウス兼体験農家があります。これまでセグウェイやカフェ、金魚すくいなど、思いつくまま片っ端から商売を始め、コロナ禍でも夜までお客さんが入って騒いでいました」

 とのことで、

「昨年の暮れでしたか、施設のすぐ下部にある耕作放棄地で、この業者が復旧工事を始めました。重機で土地をならしたりしていたのですが、土留めもなく竹で囲っているだけ。危ないし、まともな会社ではないと思っていましたが、今月初めの大雨で、この農地が崩れたのです」(同)

 規模は小さいものの、隣接する狭い農道に土が流れ出し、車両通行が困難になったという。

「現場には“土が乾き次第、早急に片付けます”などと、おわび文も張り出されていて、市議や県の職員も視察に来ていました。あんないい加減な業者が農業なんて、勘弁してほしいです」(同)

 そう断じるのだ。

■「多いのかもしれないが…」


 この社長のもとで働いていた元役員が明かす。

「熱海の崩落現場には、コンクリートガラから木屑、プラスチックなど、あらゆる産業廃棄物が埋まっていました。実はそうしたゴミは、日金町の社員寮解体工事現場から運ばれたものなのです。その近くでトラックが埋まっているという話も聞きました」

 むろん違法行為であり、それらが今回、5万立方メートル以上の土石流となって街なかを襲ったというわけだ。続けて、

「数日前、知り合いのところに当の社長から電話がありました。『金を貸してほしい。逃げる金がない』と言っていたそうですが、その一方で、今回の土石流については『盛り土の届け出をしたのだから自分は悪くない』と開き直っていたというのです」

 そこで、雲隠れ中の社長をつかまえ質してみた。すると、

「私は逃げているわけでは決してありません。何か話すことでさらなる波紋を呼んでしまう。本当でないことを書かれるのは辛いのですが、それを否定すると今度は言い逃れにしか聞こえないので、弁護士から止められているのです」

 などと要領を得ない。代わりに、その動静を知る近しい友人に聞いたところ、

「本人は、今回の現場について『10年前に売った土地で、それ以来、全く現場に行っていない。現在の所有者はこれまで何をしてきたのか』『盛り土があると分かっていたはずで、その証拠もある』と、現所有者に疑問を呈しています。届け出を大幅に上回る盛り土が積まれていたことについては『確かに多いのかもしれないが、自分も現場に出向いても土の量はわからない。最初は請負業者にやらせていたのだが、その業者が途中で投げ出してしまった』と説明しています」

 まさしく“言い逃れ”“責任転嫁”である。その盛り土には種々の産廃が混じっており、この友人が言うには、

「社長いわく『産廃を入れろ、なんて指示するわけがない。もともと、あそこは産廃の宝庫だった。現場の奥にも産廃があったのを覚えている』と。挙げ句『熱海市が安直に許可を出していたということも問題』とも漏らしていました」

 そうした“市の姿勢”をもたらしたのは他ならぬ自身なのだが……。

 荒唐無稽な「言い草」を放置すれば、原因の究明が遅れるばかりである。一連の問題行為は時効かもしれないが、警察はいったい何をしているのか。

「週刊新潮」2021年7月22日号 掲載

関連記事(外部サイト)