ネットの罵詈雑言との向き合い方 知り合いが5ちゃんねるに書かれると微妙な気持ちに(中川淳一郎)

ネットの罵詈雑言との向き合い方 知り合いが5ちゃんねるに書かれると微妙な気持ちに(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 匿名掲示板「5ちゃんねる」で知り合いが大きく取り上げられるとなんともビミョーな気持ちになります。何度か仕事を一緒にしたことがあるだけの人なのですが、世間の関心事になって罵詈雑言を浴びせかけられているのです。しかし、「大丈夫ですか?」などと言うほどの関係性でもない。

 しかも、5ちゃんねるで書き込み速度の速いスレッドが分かる2NNというサイトでチェックすると、1時間に約2千のコメントが書き込まれる「祭」状態。そして有力まとめサイト「痛いニュース」にまで登場し、ネタとして消費される。都民ファーストの会から都議選に出馬した木下富美子氏が、選挙の2日前、免停期間中に交通事故を起こしていたという件です。

 5ちゃんねるでは「辞任ファースト」や「法律セカンド笑」などといじられていました。同氏は過去に内閣府にいた時期があるのですが、その時に男女共同参画の大臣懇親会で「識者」としてなぜか私を選んでくれたのでした。そんな縁もあったのですが、いつの間にか議員になっていた。

 結局除名処分になりましたが、過去に自分の名前がネットに大量に書き込まれるという経験を同氏はしたことがないでしょう。そう考えると、私の大嫌いな都ファの議員だったとはいえ、少し気になる。いえ、法律違反の部分は絶対にいけませんが。

 これまでにも知り合いが報道沙汰になりそうになったことが何度かあります。大企業の従業員や国家公務員だったりしたため、一般人でも週刊誌的にはニュースになってしまいそうなもの。内容は大抵不倫なのですが、関係がこじれ、不倫相手のメールが流出したりしてメディアに持ち込まれるのです。

 ぎりぎりのところで報道沙汰にはならなかったですが、もしも報道されていたら彼らの人生はどうなっただろうか……。

 まぁ、私のように実名で記事をたくさん書いている人間はしょっちゅう5ちゃんねるで取り上げられ「またこのバカライターかw」なんて書かれ慣れているので、木下氏や他の知人よりはネットの罵詈雑言への耐性があります。対策は「自分の名前で一切検索しない」だけでOKです。

 しかし、今でもまったく意味の分からない報道に私自身が巻き込まれたことがあります。2016年9月のことなのですが、当時東京都議だった音喜多駿議員(現参議院議員)がFRIDAYに激写されたのです。おっ、先日一緒にイベントした音喜多さん、不倫でもしたのか! と驚きながらよく読むと、同氏が議会で居眠りをした、というどうでもいいネタでした。

 よっぽどその週はネタ枯れだったのでしょう。音喜多氏を囲んで写っている女性2名の目には目線が入り、一人の男性は顔面が隠れている。そしてもう一人の男性にも目線が──。なんと、私だったのです! おい、単にイベント後の打ち上げに行く時の写真でしかないだろ! 女性だって新潮社の担当編集者だし! 記者は、私ともう一人の男性さえいなければ「ハーレム状態の音喜多氏」というキャプションを付けたのに! と思ったことでしょう。さすがにこんなネタではネットはざわめいてくれませんでした。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2021年7月22日号 掲載

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