ワクチンは「南米ラムダ株」にも効く?  デマも多いワクチンへの疑問を専門家が徹底解説

ワクチンは「南米ラムダ株」にも効く?  デマも多いワクチンへの疑問を専門家が徹底解説

ラムダ株の影響に医師が見解

ワクチンは「南米ラムダ株」にも効く?  デマも多いワクチンへの疑問を専門家が徹底解説

ワクチン接種会場

 どれほど残念な宰相と政府を戴いていようと、今後、ワクチン接種率がさらに高まれば、コロナ禍は収束に向かう。だが、その前にワクチンについて、接種スピードの鈍化もさることながら、副反応や後遺症に対する種々のうわさに、疑問や不安が尽きないようだ。そこで、ワクチンへの疑問を解消しておきたい。

 Q.ファイザーのワクチンはデルタ株への感染予防率が39%。イスラエルでの調査結果だが、デルタ株には効果が落ちる?

「たしかに、デルタ株に対しては従来株より、感染予防効果が下がっているというデータがあります。しかし、イスラエルの研究でも、入院や重症化の予防効果は依然として93%と高い。イギリスの研究では、感染予防効果は88%、入院予防効果は96%という数字もあり、打って効果がないということはありません」

 とは、東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授の説明だ。埼玉医科大学の松井政則准教授も言う。

「デルタ株に対しては従来株にくらべ、感染予防効果は60〜80%といわれますが、重症化予防効果は10%程度の低下にとどまっています。重症化や死亡のリスクに対しては、依然として効果が高いと考えられます」

 Q.ワクチン接種後の感染も。効果はあるのか?

「どのタイミングで感染したのか、ということも重要になります」

 と話すのは寺嶋教授だ。

「1回目の接種後1〜2週間に陽性となった場合、予防効果が表れるのは、一般に12〜13日経ってからなので、打つ前の感染、予防効果が出る前の感染などが考えられます。1回目から時間が経過して感染がわかった場合も、臨床試験では1回目のワクチン接種後の感染可能性は約50%なので、まだ感染可能性が高い段階でした。2回目を打って直後の感染も、効果が表れる前だった可能性が高い」

 2回目から一定の期間を経た後の感染はどうか。

「それでも、ワクチンによって重症化が抑えられている可能性があります」

 松井准教授によれば、

「体質的に強い免疫を得られる人と、逆に得にくい人がいます」

 とのことだが、浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師が説く。

「ファイザーかモデルナのワクチンを2回接種し、2週間経過すれば、十分な免疫を獲得したといえますが、それでも稀に感染する人がいます。これをブレークスルー感染と言い、多くは軽症か無症状で、気道から排出されるウイルス量も少なく、周囲にウイルスが伝播(でんぱ)する可能性はほとんどありません。すなわち感染は予防できないことがあっても、発症や重症化の予防は期待できます」

 Q.「2回目難民」となり、1回目から6週間以上空くとワクチンは無効になる?

「mRNAワクチンは生ワクチンより不活化ワクチンに近く、不活化ワクチンは一般に、1回の接種後、時間を空けて再接種することで免疫を増強します。ブースター効果と呼ばれ、接種の間隔が延びても効果が減弱しないことが知られています。入院や出張などで接種の間隔が推奨日数より大幅に空いても、心配はいりません」(矢野医師)


■mRNAは壊れやすい


 Q.副反応に年齢や性別による差はある?

「若い人ほど副反応が出やすい傾向があり、うちの医学部の学生も7〜8割が副反応を示したそうです。若い人のほうが免疫反応は強いからだと思います」

 と、松井准教授。矢野医師はこんな説明をする。

「アナフィラキシーは女性に多い。理由は明らかではないものの、一つの仮説として、ファイザーとモデルナのワクチンが含む、ポリエチレングリコールの関与が指摘されています。化粧品や薬品、食品に多く使用されている物質で、男性にくらべ日常的に化粧品に曝露している女性は、皮膚を介してアナフィラキシーの基礎状態が作られ、そこにワクチン中のポリエチレングリコールが注射されることで、アナフィラキシーになるのかもしれません」

 ただし、女性にとっても極めて稀な反応だが。

 Q.遺伝情報を体内に投与するmRNAワクチンの接種で、将来、身体や子どもに影響は出ない?

「ファイザー製とモデルナ製は、ともにmRNAワクチンですが、mRNAは非常に壊れやすく、親から子どもに受け継がれることは、まずありえません。ですから親がワクチンを打っても、遺伝情報が原因での悪影響などが子どもに生じることはありえません」

 と、松井准教授。矢野医師も同様の見解で、

「将来のことは不明ですが、悪影響はないでしょう。mRNAは非常にもろく体内ですぐに壊れてしまう。ワクチンとして体内に入れる際は、微小な脂質膜で包むことで、かろうじて安定性を保っていますが、裸のmRNAが人体に残存することはありえません」

 Q.ホルモンのバランスが狂って、更年期障害が悪化する?

「現時点で、ワクチン接種後にホルモン系に異常が見られた、という報告はありません。更年期障害が悪化したという報告もありません。mRNAワクチンは注射された後、ホルモンのバランスに影響を与えるほど、長期間安定していることはありません」(矢野医師)

 Q.月経不順になる、というのは本当?

「女性ホルモンについての報告はありませんので、影響はないと思います」

 と話すのは寺嶋教授。矢野医師が補って言う。

「逆に新型コロナに感染して重症化すれば、月経に影響することはありえる。月経不順は、ホルモンバランスや精神状態の崩れによっても引き起こされます」

 過度な不安の解消も大切なようだ。

 Q.妊娠中、授乳中、または妊娠する計画がある女性も接種していい?

 寺嶋教授は、

「ワクチンによるメリットとデメリットを天秤にかけ、そのバランスを見て、主治医と相談して決めるのがいいと思います」

 と前置きして、説く。

「米国では、妊娠中は重症化リスクの一つと見られています。国内でも、妊娠後期のコロナ患者を診られる病院はかぎられ、新生児への感染リスクもある。妊娠後期に感染すると、帝王切開になる可能性も高い。ですから打ったほうがよいとは言えます。ただし“バランス”は住んでいる地域によっても変わる。感染爆発が起きている都市部では打つメリットが大きく、人口が密集しておらず、感染者が出ていない地域では、副反応のデメリットのほうが大きくなります」

 一方、松井准教授は、

「妊娠している方も、副反応が表れる割合は一般の方との間に差がなく、ワクチンの影響で母体や胎児に悪影響があったという報告も、まったくありません」

 と強調する。

 では、今後の妊娠を望んでいる人はどうか。

「接種を妨げる条件はありません。ねずみを用いた実験でも、妊娠率に差はなく、不妊や流産のデータもありません」(寺嶋教授)

 Q.妊娠中に接種なら新生児にも免疫がつく?

「海外で妊娠中にmRNAワクチンを接種した人の臍帯血(さいたいけつ)(へその緒と胎盤に含まれる血液)や母乳を調べた研究で、臍帯血や母乳中にも抗体があると報告されています。これが新生児の感染を減らすかどうかまではわかっていませんが、母親から新生児に抗体が移行する可能性はあります」

 と、矢野医師。松井准教授も同様の理由で、

「生まれてくる子どもに免疫が受け継がれることは、大いに期待が持てます」

 とつけ加える。


■重症化予防は維持される


 Q.ピルを飲んでいる女性は血栓ができやすい?

 寺嶋教授が答える。

「たしかにピルは、副作用として血栓ができやすくなります。そして、アストラゼネカのワクチンの副反応として、まれに血栓ができますが、ピルによる血栓と仕組みが同じで関連性があるのかどうかなど、なんとも言えません。ただ、国内でアストラゼネカ製はまだ打たれておらず、打つ場合も60歳以上に限定されるといわれているので、問題ないと思います」

 Q.うつ病になりやすくなる?

「ワクチンの成分に、うつ病につながるものは入っておらず、ワクチンが原因でうつ病になったとの報告もありません」

 と、寺嶋教授。松井准教授は、ワクチン接種後にうつ病になった人もいるかもしれないが、

「ワクチンが原因ではないのでは。ワクチンの副反応を恐れる不安が引き金になった可能性はなきにしもあらずですが」

 との回答。やはり不安の解消が大切である。

 Q.副反応の高熱に安全な市販解熱剤はどれ?

 現在、副反応に備えて、子どもや妊娠中の女性も安心して飲めるアセトアミノフェンを含む解熱鎮痛剤を買う人が増え、在庫が不足気味だというが、

「いずれの解熱剤でも問題ありません。強いて言うなら、アセトアミノフェンのほうが胃腸にやさしく、ロキソニンは副作用として胃腸が悪くなることがあります。その意味ではアセトアミノフェンのほうがいいかもしれませんが、ロキソニンがいけないというデータもありません」(寺嶋教授)

 Q.10代の死亡者はゼロでも子どもには打たせるべきなのか、それとも?

「米国で、12〜17歳の青少年の新型コロナ関連の入院を調査した結果が公開されており、入院した204人の31・4%が集中治療室に入り、4・9%が人工呼吸を必要としました。死亡はありませんでしたが、未成年でも一定の割合で重症化し、その際は後遺症が数カ月続くので、12歳以上であれば接種すべきです」

 とは矢野医師の意見。副反応のデメリットより、

「自身の免疫や集団免疫を獲得するメリットのほうが、後遺症のリスクも下がり、よほど大きい」

 と語るのは松井准教授。

「親から子どもに感染が拡大することも多く、どうしても子どもにワクチンを打たせたくないなら、周囲の大人がしっかり打って集団免疫をつけてあげることを考えてほしい」

 Q.五輪で上陸という南米ラムダ株にも有効か?

「ワクチンの効果に影響を与えるかどうか不明ですが、重症化予防は維持されると考えてよいと思う」

 とは矢野医師の見解。松井准教授が追加する。

「ワクチンを打つと複数の種類の抗体が産出されるようになり、そのなかの一部は変異株に効かないかもしれませんが、その他は作用するといった具合に、すぐにワクチンが効かなくなるということはありません」

 しかもファイザーも、モデルナも、ワクチンをアップデートしている。心配して心のバランスを崩さず、変異株の前にも冷静でいることこそが、コロナ禍で健康を保つ秘訣だろう。

「週刊新潮」2021年8月5日号 掲載

関連記事(外部サイト)