コロナで得をする政治家、企業、芸能人 スキャンダルが報じられにくいメリットが(中川淳一郎)

コロナで得をする政治家、企業、芸能人 スキャンダルが報じられにくいメリットが(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 コロナ、ワクチン接種が進んでも終わってくれませんね。テレビに出る専門家は「ワクチン打ってもマスク」なんて言い出した。せめてなんか「餌」くださいよ。毎度「我慢の2週間」「勝負の2週間」「真剣勝負の3週間」「山場」「瀬戸際」や「これが最後の緊急事態宣言」と言い続け、自粛を要求してきた。「ワクチン打ったら終わる」はずだったのに専門家や政治家は終わらせないつもり。

 ここまでくると、コロナが終わらない方が得する人間がいるのでは、なんて思ってしまうんです。妙な陰謀論は述べませんが、取り敢えず得する人間が誰かを考えてみます。巷でよく言われる製薬会社やそこから謝礼を貰う専門家はさておき、「ヤバいネタを報道されたくない人々」というのがあるのでは。

 散々私もメディア運営にかかわってきたから分かるのですが、大事なネタがある時、それ以外の部分がおざなりになるんですよ。それは人員の問題に加え、紙メディアだったらスペースが足りず、テレビなら尺が足りなくなる。

 案外今回のコロナ騒動を喜んでいるのは、スキャンダルの三大巨頭である政治家・企業・芸能人ではないでしょうか。政治家の場合、自粛を呼び掛けているのに会食をしていた件がすっぱ抜かれることは増えましたが、それ以外の「過去にパンツ泥棒をしていた高木毅氏」や「不倫疑惑の今井絵理子氏」みたいな報道は少なくなる。

 三菱電機の30年にわたる不正検査なんて、コロナがない時代だったら一大スクープで連日新聞もテレビも追及し上場廃止に追い込まれてもおかしくない。過去の社長も次々と取材され、「私は当時把握していなかった」などと言い訳に追われていたはずです。

 あと、違法薬物で逮捕される芸能人についても報道がダラダラと長引くものですが、昨年でいえば槇原敬之と伊勢谷友介の逮捕についてはそれ程引きずらず皆忘れてしまった。それだけ「コロナと比べればどうでもいい」話題なのでしょう。

 それにしても隔世の感があるのは、2020年初め、ネットで最大の話題は、木下優樹菜と乾貴士の不倫疑惑でした。19年秋の「タピオカ屋恫喝騒動」で時の人となり、延々ネットで炎上し続けた木下に追加のネタが飛び込んできた。

 この時クローズアップされたのが、「鬼女(きじょ)」の存在です。5ちゃんねるの「既婚女性板」住民の略で、ネット上の点と点の情報を繋ぎ合わせ線にする、いわばネット探偵団ともいえる存在。彼女たちが木下と乾の関係性に着目したことから、不倫疑惑報道にまでなりました。

 この頃、私もテレビ出演などして鬼女について解説したり、知り合いの鬼女を番組に紹介したりしました。わずか1年半前までこんなネタで盛り上がっていたんですよね。それが2月13日、屋形船で1月18日に新年会に参加していたタクシー運転手が陽性になった頃からざわめき始め、コロナパニックが開始。すっかり木下と乾のことなんてどうでもよくなり、以来コロナパニックはまったく終わらず。政治家・企業・芸能人の一部はこの状態を好ましく見ているでしょう。

 そういやタピオカ屋ってどこに行ったんだろう。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2021年8月5日号 掲載

関連記事(外部サイト)