熱海土石流の「盛り土業者」社長が語っていた「静岡県は俺の言いなり」 関係者が明かす杜撰な工事

 列島を震撼させた悪夢から1カ月半が経った。7月3日、静岡県熱海市伊豆山地区を襲った土石流災害は、神奈川県小田原市の不動産管理会社「新幹線ビルディング」が造成した盛り土が元凶とみられる。崩壊した土地の工事に関与していた人物が、新たな証言を口にする。

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 死者・行方不明者27人(8月16日現在)を出した重大な“人災”にもかかわらず、当の土地を造成した前所有者と現オーナーの二人は共に雲隠れしたままだ。

 当事者たちに代わって口を開くのは、冒頭の不動産管理会社の役員である天野二三男(ふみお)氏(71)と交流があり、下請け業者として盛り土の造成に関与した静岡県の建設会社社長である。

 この社長が工事に携わったのは06年から07年頃にかけて。天野氏が盛り土を含む件(くだん)の土地を取得し、熱海市に届け出をした時期にあたる。

「伊豆山のアパートに部屋を借りて住んで、そこから現場に通った。4トンのローラー車で地面を踏み固めて舗装する仕事です。盛り土の中に、伐採した木や軽トラック、それにユンボが捨てられているのを見ました。彼は『大丈夫だよ。俺は同和だから。静岡県や熱海市は何も言わねえよ。俺の言いなりだから』って豪語していましたね」

■金払いが悪い


 これまでも仕事で全国を回っているが、あんなに杜撰な工事現場は、後にも先にもないと話す社長は、こうも言う。

「ずっと気になっていたんです。大丈夫かなって。そうしたらあの土石流でしょう。あれだけ多くの人が亡くなったり、家を失くして苦しんでいるのに、当事者は責任逃ればかり。せめて自分の知っていることを話そうと思った」

 通常、残土が積み上がると、コンクリート擁壁で土を留めた上、水を通すパイプなどを設置する。だが、パイプは設置したが、擁壁は造らなかったという。7月7日に会見した静岡県の難波喬司副知事が「排水設備などの設置がなされておらず不適切な工法」と指摘したような現場だったのだ。県の熱海土木事務所が透水性試験に来たこともあったが、ザーザーと水が漏れる状態。それを見た県の職員は「コンクリートで塞いでおいてください」と言ったというのである。

「仲間うちで『みんな崩れて、海まで行っちまうぞ』と話していました。ニュースで土石流の一報を聞いた時には、『あそこだ』とすぐにピンときましたもん」(同)

 加えて、天野氏は金払いが悪いことでも知られ、持ち込んだ残土代は取るくせに、工賃を支払わないことが常態化していたそうだ。

「小田原の新幹線ビルの事務所まで取り立てにいった。すると天野氏と一緒に頭の禿げあがった老人がいた。自分がいる間、ずっと無言でしたけど、背が低くて体つきががっしりしていた」

 そう語る社長は、本誌(「週刊新潮」)7月29日号に掲載された、崩落現場の現所有者である、「ZENホールディングス」の実質的オーナー、麦島善光氏(85)の写真に目を落とすと、

「そう、この男だ。この男に間違いない」

 と話す。盛り土周辺の土地は2011年2月に天野氏側から麦島氏側に売却されたが、今年7月20日付の時事通信の報道によると、10年8月、静岡県と熱海市の担当者が天野氏と麦島氏立ち会いの下、盛り土に産廃が混じっているのを確認したという。社長の証言と合わせれば「盛り土の存在など知らなかった。自分に責任はない」と言い張る麦島氏の主張も、かなり怪しいものとなってくるのだ。

“殺人盛り土”の新旧所有者は何と答えるか。

 天野氏に取材を申し込んだが期日までに回答はなかった。

 片や現所有者の麦島氏の代理人弁護士によれば、

「麦島は前所有者とは本件取引前には面識は無かったということです」

 と、まるで他人事。生命や財産を奪われた被害者や遺族のためにも、司直による追及が待たれるのである。

「週刊新潮」2021年8月12・19日号 掲載

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