報知新聞社が「相撲協会」所有のビルに移転へ 業界から“無気力報道”を心配する声

報知新聞社が「相撲協会」所有のビルに移転へ 業界から“無気力報道”を心配する声

中央の建物は相撲協会の持ちビル、そこに報知新聞の本社機能が移転される

 日本相撲協会が所有する東京・両国のビルに、スポーツ報知を発行する報知新聞社が移転することが分かった。このビルは相撲の聖地、両国国技館の目と鼻の先。ほとんど隣と言っていい場所にある。いま相撲関係者の間では、言わば物心両面で相撲協会と報知新聞の距離が近くなりすぎることを危惧する声が上がっている。

「これでますます、報知の相撲記事がつまらなくなるんじゃないですか」

 と、相撲関係者は嘆く。

 もともと、相撲協会と報知新聞を擁する読売新聞グループは距離が近いとされてきた。2016年から現在まで、読売新聞グループの山口寿一社長が相撲協会の外部理事を、報知新聞出身で読売巨人軍アドバイザーの広岡勲氏が同協会の理事補佐・危機管理担当を務めていることからも、それは明らかだ。

 この先、相撲協会と報知新聞が大家と店子の関係になり、さらに距離を縮めれば、「スポーツ報知には、取組への鋭い批評や協会批判なんて、できっこなくなりますよ。相撲協会の顔色を窺って、おべんちゃらしか書けなくなるでしょう。本来、正しい批評や批判があってこそ、大相撲も盛り上がるものなのですが……」(同前)


■移転の背景は


 報知新聞の関係者が移転の経緯を語る。

「数年前より報知新聞の東京本社は、東京・港南にある自社ビルの社屋から移転しようとしていました。1990年に港南の社屋ができた当初、周囲は寂しい埋立地でしたが、いまではタワーマンションが建てられ、人気のエリアになっています。そんな好立地にある社屋をそのまま使い続けるのはもったいない、という経営判断があったんです」

 しかし、なかなか条件の良い物件が見つからず、移転先の選定は難航したという。ところが、今年の4月に相撲協会が件の両国のビルを30億円強で購入したことで、急展開を迎える。

「当初、相撲協会はフロアごとに分けて店子の募集をかけていましたが、そんな折に、報知新聞がビル一棟丸ごとで借りたいと持ち掛けたんです。結果、両者の条件が一致して合意に至った。件の両国のビルは港南の社屋に比べて手狭なので、報知新聞の一部のセクションは大手町の読売新聞ビルの中に入ることになるかもしれませんが、大部分は両国に移ることになりそうです」(同前)

 前出の相撲関係者は、スポーツ紙が全盛だった時代をこう懐かしむ。

「かつてのスポーツ紙は相撲協会のことは気にせずに、書くべきことを書き、スクープを連発していたものです。たとえば、スポーツ報知は1987年10月13日付で、横綱の双羽黒が弟子7人に暴行を働き、その内の6人が部屋から脱走したことを暴いた。これは、その後、双羽黒が横綱を引退する道筋を作りました。不自然な取組に対しては八百長とまでは書けなくても、“無気力相撲”と皮肉を込めて批判した。しかし、いつの頃からかスポーツ紙は相撲協会とベッタリ馴れ合い、ペン先を鈍らせるようになり、ついに、店子に成り下がる社まで出てきてしまうとは寂しいかぎりです」

 さて、当事者に取材を申し込むと――。相撲協会は、「報知新聞社から正式に、当協会が所有する『国技館ビル』(東京都墨田区横網1丁目)全体を借り上げる旨の申し出があったのは、6月中旬です。報知新聞社に賃貸する方向で検討中ですが、契約の締結に向けて協議中であるため、その内容に関する回答は差し控えます」

 報知新聞は、「弊社が東京本社を来年中に移転する方針を決定したのは事実ですが、契約交渉中ですので詳細な回答は差し控えます。国技である相撲に関しては、これまで通り公正な報道を続けて参ります」

 との回答が寄せられた。相撲協会の機関紙にならないことを祈る。

デイリー新潮取材班

2021年8月27日 掲載

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