コロナ離婚、どうすれば避けられる? 家族問題の専門家が教えるテクニックとは

コロナ離婚、どうすれば避けられる? 家族問題の専門家が教えるテクニックとは

篠原涼子

 コロナ禍で気をつけるべきは、なにもウイルス対策に限らない。自粛生活を強いられて1年半、我々はさまざまなストレスと向き合ってきた。それが積もり積もって、家庭内には“紛争”の火種があちらこちらに……。識者が教える、「コロナ離婚」予防の具体策。
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 コロナ離婚。

 未曾有のウイルス禍が始まった1年半ほど前からこんな言葉が飛び交い、離婚増が危惧されてきた。自粛生活でのイライラが募り、夫婦間のいざこざが増えて離婚に――。そんな負のスパイラルが懸念されたのだ。

 だが、厚労省の人口動態統計によると、2020年の離婚件数は19万3251組で、前年比7・3%減という予想外の結果となった。とはいえ、この数字だけを見て胸を撫でおろすのは早計のようだ。

「確かに昨年の離婚件数は減っていますが、それはコロナという、夫婦や家族にとって『共通の敵』と対峙していたからに過ぎません。私のところに来る離婚相談の件数は間違いなく増えています」

 こう実感を明かすのは、東京家族ラボを主宰する家族問題コンサルタントの池内ひろ美氏だ。

「東日本大震災の時もそうでしたが、災害、惨事を目の前にすると、その共通の敵にともに立ち向かおうと、夫婦の絆は深くなったように感じられるものです。ところが1年以上経つと、共通の敵と戦うことへの疲弊感が出てくる。そして、命の危険を伴うコロナ禍を改めて振り返り、『やっぱりこの人と一緒に最期を迎えるのはイヤだ』という結論に至るケースが少なくない。したがってコロナから1年半が経った今、共通の敵を前に、後回しにしてきた夫婦の関係を見直そうとする人が多い。今後、離婚件数は増えていくのではないかと思います」

 この現状認識については他の識者も同様で、家族問題カウンセラーの山脇由貴子氏が、

「月4、5件だったものが2桁になるといった具合に、昨年6月頃から離婚相談は多くなっています」

 と言えば、離婚問題に詳しいフラクタル法律事務所の田村勇人弁護士も、

「コロナによる離婚相談の件数は、昨年の6、7月頃から顕著に増えています。統計的に離婚件数が増加していないのは、離婚を考えてから成立するまで2、3年かかることが多く、タイムラグがあるからでしょう」

 と、口を揃える。つまり三者ともに、件数として顕在化していないだけで、「コロナ離婚リスク」は潜在的に増大していると言うのである。池内氏はその原因を一言でこう喝破する。

「巣ごもりによるストレスです」

 池内氏が続ける。

「熟年離婚の引き金となる代表的な例として、定年退職後に家にずっと居る夫のために、妻が毎日お昼ご飯まで作って出さなければならないことによる衝突が挙げられますが、今、テレワークによって、同じ現象が起きているんです」

 令和の時代に改めて、昭和の金言が身に沁(し)みる。

 亭主元気で留守がいい。

 そうはいっても自粛生活を強いられるなか、亭主もそう簡単に留守にはなれない。そこで大事なのは、

「自分のことは自分でする。つまるところ、離婚の回避策はそれに尽きます」

 として、池内氏はこう説く。

「基本的に家は『妻のテリトリー』。夫はそこを、リモートワークによる在宅勤務で“間借り”している格好です。それなのに妻の家事のやり方に、あれやこれやと小言を言っていいはずがない。『夫のテリトリー』である職場に妻がやって来て、仕事に口出しをされたら堪(たま)ったものではないのと同じこと。ですから、妻の家事に文句を言うのではなく、自分のことは自分でやらなければ、離婚リスクは高まるばかりです」


■「形容詞の共有」


 また山脇氏は、離婚回避のためには、一にも二にもコミュニケーションが大事だと言う。

「相手に対する興味・関心が希薄だから、お互いに何を不満に思っているのかが分からない。そのコミュニケーション不足を補う最良の手は『形容詞の共有』です。楽しい、面白い、嬉しい。つまり感動を共有する。なかでも、男性側から一番簡単に持ち掛けられるのは『美味(おい)しいの共有』でしょう。夫がいきなり妻の服を買って帰り、『きれい』や『可愛い』を共有しようとしても、似合わないものを買ってしまえば元も子もない。しかしケーキを買って帰れば、まず不味(まず)いということにはならず、手軽に美味しいを共有できます」

 夫婦のコミュニケーションを円滑にする前提として、池内氏は意外にもお互いの「非尊重」を勧める。

「コロナは、普段は潜在化していて見えにくい夫婦の価値観の違いを浮き彫りにしました。例えばワクチン接種の是非。夫は打つべき派だけれど、妻は副反応がイヤなので打ちたくない。内心の問題ではなく生活上のことなので、どうしても価値観の違いが表面化し、衝突しがちです。そこでのトラブルを避けるために大事なのは、相手の意見を尊重する必要はないということ。尊重すると、自分を相手に合わせなければならなくなり疲れ果て、喧嘩にもなる。ですから、相手はそう考えているんだ、くらいに受け流すことです」

 さらに田村弁護士は、離婚回避の鍵は「コロナ前」の生活に隠されているとアドバイスする。

「コロナ前であれば、仕事帰りに居酒屋で一杯ひっかけたり、電車の中で本を読んだり音楽を聴いたりして、『ワンクッション』おいて帰宅していましたよね。しかし、在宅勤務によってこのワンクッションがなくなり、仕事、すなわち外部のストレスをそのまま家庭内に持ち込んでしまい、それが衝突を招く。とにかく、夫婦が24時間一緒にいることはあまり望ましくなく、在宅勤務であったとしても、可能な範囲で少しでも場所を移し、ひとりになる時間を持つことがとても重要だと思います」

「週刊新潮」2021年8月26日号 掲載

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