二階幹事長が自民党から受け取った「機密費」60億円 使い道は何だったのか?

自民幹事長の二階俊博氏、辞任までに機密費60億円が二階氏側に流れているという推測

記事まとめ

  • 自民党で長く幹事長職にあった二階俊博氏は「来るもの拒まず」精神で議員を引き寄せた
  • その力の源泉をたどると、領収書の要らない「機密費」に行き当たったという
  • 党本部の収支報告書などを集計すると、60億円が二階氏側に流れているという推測が可能

二階幹事長が自民党から受け取った「機密費」60億円 使い道は何だったのか?

二階幹事長が自民党から受け取った「機密費」60億円 使い道は何だったのか?

顰蹙(ひんしゅく)を買い続けた

■驚きとミステリーの自民党本部の収支報告書


 自民党の歴史の中で誰よりも長く幹事長職にあった二階俊博氏。自民党を一旦飛び出しながらもその老練なスタンスで自派閥を党内第3派閥に押し上げた。「来るもの拒まず」の精神は多くの国会議員を引き寄せたが、その一方で例えば総選挙時に、党公認候補がいる選挙区で自派閥の候補と戦わせるなど、いかにも自派を贔屓する強引な手法は党内で顰蹙(ひんしゅく)を買い続けた。その力の源泉をたどると、領収書の要らない「機密費」に行き当たった。(※週刊新潮2018年12月13日号掲載の記事を加筆・修正しています)

 自民党の閣僚経験者に、「自民党幹事長」について聞くと、

「自民党の幹事長はカネの面でおいしいから誰もがやりたがる。首相の菅さんでさえ官房長官時代に“幹事長ならやりたい”と言っていたことがあります。官房長官は月に500〜1000万円くらい機密費を自由に使えるわけですが、国会で答弁を求められることもそうですがとにかく激務。一方で幹事長は国会答弁の機会はないし、こちらも領収書の要らないカネを使えるからヒト・モノ、そして色んな話が集まってくるわけです」

 こんな答えが返ってきた。

「その中でも突出していたのが二階さんでしょう。長くやったということもあるけど、年長ということもあり、二階さんに対して面と向かって誰も問題提起できなかったことも大きいと思います」(同)

 自転車事故で職を退いた谷垣禎一氏の後を受け、2016年8月に幹事長に就任した二階氏。そのカネの使い道がクローズアップされることになったのは、2018年の晩秋、前年分の政治資金収支報告書が公開されたことがきっかけだった。


■辞任までに60億に達する“党の機密費”


 自民党本部の収支報告書をめくると、

9月29日:5000万円
10月2日:5000万円
10月3日:5000万円
10月6日:6800万円

 などと、連日のように千万単位の「政策活動費」が自民党から支払われている。〈支出を受けた者の氏名〉の欄には、「二階俊博」の名前がズラリと並んでいた。

 ここに列記した金額を含め、自民党が2017年の1年間に二階氏に支払った総額は13億8290万円に上った。党内で2番目に多い吉田博美・参院幹事長ですら約1億円だから、二階氏の突出ぶりは明らかだ。

 総務省で確認できる過去3年分に加えて別の報告書からも集計した結果、就任から2019年末の3年4か月で受け取ったのは37億520万円だ(https://news.yahoo.co.jp/byline/tateiwayoichiro/20210831-00253894)。

 この金額に2020年1月〜2021年9月の辞任当日までが加わるのだから、これまでの「受け取り実績」を当てはめてみると、計算上はざっと60億円が二階氏側に流れているという推測が可能となる。

 では、政策活動費とは何なのか。政治部記者によると、

「政策活動費は、政党が政治資金から支出する“組織活動費”のひとつです。組織活動費は、県連が主催するセミナーに講師を招く際の“旅費交通費”などに充てられます。ただ、政策活動費として議員個人に支出された場合、その後の使い道を公開する義務がありません。官房機密費になぞらえて“党の機密費”と呼ばれるゆえんです。このカネを差配しているのが二階幹事長なのです」

 いかにも政策活動費は謎に包まれた印象が強いが、その使途のうち、

「最も大きな割合を占めるのは選挙対策費です」

 そう話すのは政治アナリストの伊藤惇夫氏だ。


■選挙後に息子が高級車を


 確かに、2017年10月の解散総選挙に向けて、自民党から二階氏への支出は「激増」している。衆院の解散から投開票までのわずか1か月弱の間に、幹事長にもたらされたカネは5億円を超えた。

「選挙ではカネが多くて困ることはありません。活動費を受け取った候補者側はビラを追加発注したり、より詳細な情勢調査を業者に依頼したりします。違法ですが、スタッフにカネを渡し、選挙区内で配って票を固めるケースもある」(前出・伊藤氏)

 河井克行元法相と河井案里元参院議員が選挙区内の関係者にカネを配りまくって買収した件で起訴され、克行元法相は懲役3年の実刑判決を受けたのは記憶に新しいところだろう。

 もちろん選挙でカネを集中投下するのは接戦区だが、どの選挙区にいくらカネを使ったかが明らかになると党内で軋轢(あつれき)を生む。その点でも政策活動費は都合の良い存在なのだ。

 他にも、

「かつて、ある幹事長が選挙を仕切った際、選挙後に息子が高級車を買ったので“もしや活動費では”という噂が流れたことがありました」(同)

 新車購入はともかく、二階氏が選挙に莫大なカネを費やしたことは想像に難くない。加えて、

「二階派には他党の落選議員や、他派閥からのベテラン議員の移籍が目立ちますが、これは二階さんの“面倒見”がいいから。それだけのカネがあれば子飼いの議員の氷代にモチ代、外遊する際の餞別だけでなく、新人候補を口説く際に、資金援助を申し出ることも容易でしょう」(先の記者)


■カネと公認権を抑え、政治生命を握った二階氏


 こういう状況が好ましいとは言えまい。神戸学院大学の上脇博之教授は、こう語る。

「カネを握れば党内での発言力や影響力も増します。所属議員は幹事長に逆らえば公認をもらえず、しかも、カネも降りてこない。これでは政治生命を握られているのと同じです」

 見えないカネが、陰ながら安倍一強を支え、それが菅政権にも引き継がれてきた。しかし、党内での実力とは裏腹に、その空気を読まぬ言動や傲岸不遜な態度は多くの国民に嫌われていたと言っていいだろう。今回の「二階幹事長斬り」は、二階氏こそが下がり続ける内閣支持率の元凶だと菅首相が判断したということか。それとも「二階幹事長斬り」を売りに総裁選を戦おうとした岸田前政調会長の武器を一つ奪うための菅首相との共謀か。

 それらはいずれ明らかになるだろうが、機密費の使途はベールに包まれ続けるだろう。

デイリー新潮取材班

2021年9月2日 掲載

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