人流の増減にかかわらず感染者数の波は「4カ月周期」? ロックダウンの妥当性は

【新型コロナウイルス】感染拡大の波について京都大学の宮沢准教授らが語る

記事まとめ

  • 新型コロナ感染拡大の波について、京都大学の准教授や、東京大学名誉教授が語っている
  • 京都大学の宮沢准教授は、ウイルスが規則的に増減する理由を説明している
  • 東京大学名誉教授の唐木英明氏は、「次の波はおそらく12月ごろに来る」と説いている

人流の増減にかかわらず感染者数の波は「4カ月周期」? ロックダウンの妥当性は

人流の増減にかかわらず感染者数の波は「4カ月周期」? ロックダウンの妥当性は

ワクチン接種会場

 時節柄、自民党総裁選の争点もコロナ対策で、3人がロックダウンに触れている。だが緊急事態宣言も、海外のロックダウンも、解除した途端に感染者が増えただけではなかったか。そもそも感染者数の波は定期的に訪れるもので、人流抑制に意味はないというのだ。

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 まもなく終焉を迎える菅政権は、「感染拡大の防止と経済活動の両立」を掲げながら、果たせなかったのが致命的だったようにいわれている。それを受け、自民党総裁選に立候補した4候補の間では、ロックダウンが可能な法整備の必要性なども議論されている。

 だが、そもそも感染が拡大したのは、政府の対策に不備があったからなのか。

 その問いへの答えは、デルタ株の蔓延で大きく拡大した第5波が、ここ2、3週間、急速に収まりつつある理由を考えることで、見えてくるはずだ。

「第5波が収束したのは、感染症の波とは上がっては下がるものだから。感染者数が天井知らずに増加するというのは間違いで、人流は主要因ではありません」

 と、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授は言い切る。

「昨年の第1波も、緊急事態宣言が出された4月7日にはすでにピークアウトしていましたが、宣言を出してからも、感染者数の減少スピードは一定でした。緊急事態宣言による人流抑制が、感染者数に影響するなら、減少スピードは加速するはずです。第3波も同様で、12月末にはピークアウトしましたが、今年1月8日に緊急事態宣言が出され、以後、減少スピードはむしろ遅くなりました」

 東京大学名誉教授で、食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏も言う。

「現象論として、第1波から今回の第5波まで、4カ月周期で非常に規則正しく波がやってきています。対数目盛で見ると、波の増減速度もほとんど同じ。なにがあっても4カ月ごとに新たな流行の波が訪れ、2カ月後にピークを迎え、その後、急速に下がっています。GoToキャンペーンや五輪がウイルスの流行に影響を与えたなら、これほど規則正しく周期的に波がやってくるのはおかしい。なにかが原因で流行し、対策をしたから下がった、というものではなく、かなり自然要因で増減しています」

 その「自然要因」だが、

「ウイルスの性質によるものなのか、季節が関係しているのかわかりません。いずれにせよ、人為的にコントロールできるものではなく、可能なのは波の高さを変えることくらいです。実は、WHOによる世界の感染者数と死亡者数のデータを見ても、4カ月周期の同じ傾向がわかります」


■次の周期は12月頃か


 宮沢准教授は、ウイルスが規則的に増減する理由を、自身が考案した「目玉焼きモデル」で説明する。

「世の中には感染しやすい人と、感染しにくい人がいて、前者にある程度感染すると、ウイルスは自然に減っていく。感染しやすい人とは、たとえば飲み屋で大声を出して騒ぐ人、ファクターXをもっていない人など。彼らが目玉焼きの中央とすると、円の外側に、騒がない人やファクターXをもっている人など、感染しにくい人がいる。そして内側で感染が拡大しても、外側までは広がりません」

 時に波は高くなるが、

「第3波の場合は、寒くなったから。第4波、第5波の拡大は、アルファ株、デルタ株という変異株が、本来なら感染しない人にうつり出したからでしょう」

 現在、緊急事態宣言が解除された後、11月ごろからの行動制限の緩和が議論されている。一方、緩和すれば国民の意識が「緩む」ので時期尚早だ、という意見もあるが、唐木氏が説く。

「次の波は先の周期から考えると、おそらく12月ごろに来る。波が来ないように、制限をロックダウンなど、より強固にすることは意味がありません。インフルエンザは毎年約1千万人が感染し、約1万人が亡くなりますが、コロナでも同様に受け入れられるか。それが今後のカギになります。尾身茂会長は、今後2、3年はコロナとの戦いが続き、国民の不安が解消されないと言いますが、ワクチン接種が進み、抗体カクテル以外の経口薬も間もなく登場すれば、そこまで怖がる必要はなくなると思います」


■人流一本足打法を反省せよ


 だが、ワクチン接種者のブレークスルー感染に不安を募らせる人は多い。また、2回の接種では心許ないと感じている人も多いようだが、東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授は、

「3回目の接種への言及が増えましたが、社会全体として、感染や発症自体を抑えるのか、重症化や死亡を減らすのを目的とするかによっても変わってくる」

 と言って、続ける。

「ワクチン接種後、半年で中和抗体が4分の1に減るというデータがありますが、感染予防効果も同様に減るわけではありません。イスラエルの査読前の論文では、ワクチンを1月に打った人と5月に打った人では、5月に打ったばかりの人は感染予防効果が、1月の人の2倍あったとのこと。しかし、1月に打った人たちも未接種者とくらべ、50〜60%の感染予防効果を維持し、年齢にもよりますが、90%前後の重症化予防効果を維持していることがわかりました。また、カタールの査読前の論文では、2回目の接種から数カ月経った人でも、ファイザーで感染予防53・5%、重症化予防89・7%、モデルナでは、それぞれ84・8%と100%、確認されています」

 ワクチンは現状、接種から時間が経過しても、かなり高い効果が確認されている。あとは意味のある対策に絞って実行しつつ、社会、経済を動かしていくことだろう。医師でもある東京大学大学院法学政治学研究科の米村滋人教授が言う。

「今後も同じ緊急事態宣言を発令し続けるのは、非現実的で、宣言に頼らずに感染をコントロールする方法を、見出す必要があります。私は三つのミクロ対策をすべきだと思います。一つは、不織布マスクの義務化。二つ目は、換気の徹底。もう一つは、換気をしにくいときには空気清浄機を使うということです」

 加えて政府に望むのは、

「医療体制の整備。感染者が急増しても十分に受け止められる体制が整っていれば、ミクロ対策などの新しい施策も導入しやすい。これまで国は病床数を増やすことに注力し、数字上は増えました。しかし、運用してみると、スタッフが足りなかったり、設備が整っていなかったりで、患者の受け入れが困難な場面も多かった。政府と行政は医療の実態をもっと把握すべきで、私は協議会方式を導入すべきだと思います。行政が音頭をとり、地域の病院の代表者が集まる場を設け、各病院の代表者に、うちはコロナ患者を受け入れられないが、受け入れている病院の緩和ケアの患者を受け入れるとか、スタッフが足りなければ、余力がある病院が派遣するとか、病院間で協議してもらうのです」

 だが、政府も専門家もその前に、これまでの誤りを認めるべきで、そこからしか、新しい一歩は踏み出せまい。東京脳神経センター整形外科、脊椎外科部長の川口浩医師が訴える。

「政府分科会も医師会も、感染症対策といえば、人流抑制しか言ってきませんでした。尾身会長をはじめとする医療の専門家も、対策はサイエンスとかけ離れた人流のみ。日本医師会も本来は医療体制の改善、構築の具体案を出すべきなのに、人流に関する政府や分科会の対策が甘いと批判することで、存在感や優位性をアピールし、国民を脅迫するのみでした。それが少しおかしいのではないか、となったのは、第5波になってから。人流の制限にも効果はあったかもしれませんが、解決策にはなりませんでした。人流一本足打法でやってきてしまったことを、政府分科会も医師会も反省すべきだと思います」

 毎日新聞の最新の世論調査によれば、政府が示した行動制限の緩和方針が「妥当だ」と答えた人は、49%に及んだ。恐怖を煽る戦術にいつまでも騙されるほど、国民はバカではない。重症化をある程度予防できる以上、人知を超えた感染の波への抵抗はやめ、ミクロ対策はしつつ、日常を取り戻すことが大切である。

「週刊新潮」2021年9月30日号 掲載

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