事件現場清掃人は見た ネクタイで自分の首を絞めて死んだ60代「元ヤクザ」の人生

 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、自分の首を絞めて亡くなった60代男性について聞いた。

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 高江洲氏は、これまで自ら命を絶った人の部屋を何度も訪れた。ところが今回ご紹介するのは、同じ自殺でも非常に稀なケースである。

「半年ほど前のことです。30代の男性からの依頼で、60代の父親がアパートで亡くなっていたという話でした」

 と語るのは、高江洲氏。

「驚いたことに、自分の首を絞めて自殺したというのです。普通、自分の首を絞めて死ぬのはまず不可能です。絞めているうちに意識を失って、手が緩んでしまうからです。特別な恨みや悔しさなどがあったのでしょうか。余程の覚悟がない限り、死ぬのは難しいそうです」


■角田美代子容疑者


 現場は、都内にある1DKの古いアパートだった。

「部屋には家具や洋服は少なく、質素な生活ぶりが伺えました。男性は、6畳の和室に敷いた蒲団の上で亡くなっていました。きちんとワイシャツと喪服を着た上、クビにネクタイをまいて、自分で絞めたそうです。死後数日で発見されたので、多少の汚れしかありませんでした」

 実は、刑務所で自分の首を絞めて亡くなった凶悪犯がいる。2012年10月に発覚して世間を震撼とさせた尼崎連続殺人死体遺棄事件の主犯だった角田美代子容疑者(当時64)だ。この事件は少なくとも10人の死者、行方不明者を出した犯罪史上有数の凶悪事件で、“モンスター”と言われた彼女は、2012年12月、留置場の蒲団の上で、Tシャツで自分の首を絞めて亡くなっている。

 60代男性も一筋縄ではいかない人生を歩んできたのか。

 高江洲氏は、依頼主の息子に、なぜこんな死に方をしたのか聞いてみた。

「亡くなった男性は、若い頃はヤクザだったそうです。土建会社も経営していて、一時はかなり羽振りが良かったといいます」

 男性は結婚して、子どもをもうけた。

「ところが、土建会社の経営が行き詰まり倒産してしまった。奥さんとも別れたそうです。息子は関西に引っ越し、普通のサラリーマンになりました。一家離散ですね」

 男性はヤクザから足を洗って、まともな職に就こうとしたが、

「結局、潰しがきかなくて、日雇いの仕事をするようになったのです。生活にも困っていました。息子さんは時々、一人暮らしの父親に電話をかけて、近況を聞いていたそうです」

■近所でも変り者


 男性が50歳を過ぎて体力が衰えてくると、昔羽振りが良かった頃に面倒を見た若い衆から見下されるようになったという。

「本人からすれば、いじめられているような心境だったのでしょう。落ちぶれて舐められているのが悔しいと嘆いていたそうです」

 男性は、近所でも“変り者”として見られていたという。

「時々居酒屋で酔って暴れたりする元ヤクザとして、疎まれていたそうです。息子さんは父親に電話するたびに、グチを聞かされたといいます」

 男性が亡くなったことを知ったのは、警察からの電話だった。

「若い衆や近所の人から除け者にされたことがすごく悔しかったようです。最期だけは元ヤクザらしく、覚悟を決めた死に方を選んだのではないでしょうか。ネクタイも、失神しても緩むことがないよう2重に首に巻かれていたそうです」

デイリー新潮取材班

2021年10月1日 掲載

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