かっぱ寿司に並んだ人々の心理を分析 「得したいだけ」層に向けたキャンペーンは無意味?(中川淳一郎)

かっぱ寿司に並んだ人々の心理を分析 「得したいだけ」層に向けたキャンペーンは無意味?(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 久々に来ました、私の好物!「ケチな連中が行列を作る」騒動です。9月26日、回転寿司チェーン「かっぱ寿司」の半額キャンペーンです。この件についてのネットニュースの見出しを見てみましょう。

〈かっぱ寿司で「入店20時間待ち」表示 全皿半額キャンペーンで全国に大混雑、入店困難な状態に〉(ねとらぼ)

〈全皿半額 かっぱ寿司待ち時間10時間超お詫び半額券が即メルカリ登場 1枚2千円で落札〉(中日スポーツ電子版)

 もう、これがすべてを表していますが、まとめると「かっぱ寿司がこの日だけ半額にしたところ、大行列ができ、各店舗で混乱が発生。待ち時間の異常な長さからお詫びのため半額クーポン券を発行したところ、転売された」ということです。

 あのね、この手のキャンペーン、もう無理なんですよ。何しろ日本人は貧乏なんで。2009年に銀座の外資系宝石店が5千円相当の0.1カラットのダイヤモンドの裸石を先着5千人に渡すというキャンペーンを発表したところ、大行列ができました。

 元々、このダイヤモンドを渡した上で店員が商品説明をし、その後の加工に繋げようとしたのですが、とにかく、5千円相当のダイヤモンドをもらいたい人が殺到した。正直、説明なんていらないんですよ。当時の記事では並んだ人の「誠意がねーよ。誠意がよー。こっちはもらえるっていって並んでたんだからさ」というコメントが話題になりました。

 はい、無理なんです。無料とか安くするとかで客を集めてスマートな結末にするのは。何しろ、ソフトバンクがキャンペーンで吉野家の牛丼を1杯無料にすると発表すると、都会の店では店舗前に大行列ができ、ロードサイド店では渋滞が発生する。

 数百円の商品であろうが「無料」になったり、回転寿司が半額になれば、人が殺到して「オペレーションがなってねぇんだよ!」なんて罵声を浴びせられるのが分からないんですか? この手のキャンペーンなんてやってもただネット炎上するだけだし、人々の怨嗟を買うだけです。

 かっぱ寿司にしても「半額にすればガンガン客が来て我が社の寿司のウマさをSNSに書いてくれるだろうなウヒヒ」みたいに考えていたと思います。しかし、彼らの読みは甘い。とにかく人々は「安ければ並ぶ」「そこで不快な思いをしたら文句を言いまくる」存在なのです。

 正直、かっぱ寿司に並ぶなんて私にとっては絶対にありえない行為です。しかし、世の中には、行列に並ぶことを「思い出」とする層が案外多いわけで、そうした方々がかっぱ寿司の企画者からすれば想定外に多かったということでしょう。

 かっぱ寿司は事前から大々的にこの日の半額キャンペーンを謳っていました。私が同社の宣伝担当だったら「こんなキャンペーンはやめたほうがいい」と言っていたでしょう。本当に、この日、かっぱ寿司で食べた人なんて、今後のロイヤルカスタマーになるわけがない。あくまでも「安いものが好き」「得したいだけ」の人なんです。

 そういった状況で私が提案したいのは「19時以降にスーパーへ行け」です。パックの寿司が4割引きで売ってますよ。これがウマいんだな。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2021年10月14日号 掲載

関連記事(外部サイト)