【池袋・暴走事故】被告収監に「京都・亀岡暴走事故」遺族の父・中江美則さんが感じたこと

【池袋・暴走事故】被告収監に「京都・亀岡暴走事故」遺族の父・中江美則さんが感じたこと

2019年6月の実況見分に立ち会った際の飯塚被告。禁錮5年の実刑判決を受けた

■とても他人事とは思えませんでした


 東京・池袋で2019年、乗用車が暴走して母子が死亡、9人が重軽傷を負った事故で、禁錮5年の実刑判決が確定した飯塚幸三元被告(90、旧通産省工業技術院元院長)が12日、東京拘置所に収監された。同様に交通事故で愛娘とお腹の中の7カ月の赤ん坊を亡くした経験を持つ中江美則さん(58)が、今回の件について語ってくれた。

 2012年、京都府亀岡市内で登校中の児童と引率の保護者の列に軽自動車が突っ込んだ事件で、3人が死亡、7人が重軽傷を負った。子供に付き添っていた中江さんの娘・幸姫(ゆきひ)さん(享年26)とお腹の中の7カ月の赤ん坊が亡くなった。軽自動車のハンドルを握っていたのは18歳の無免許の少年で、居眠り運転だった。

「池袋の事故の当事者である松永拓也さんが会見し、叫ぶように訴えているのを見ていると、とても他人事とは思えませんでした。だから見ていて苦しかったです。私の息子は松永さんとリモートで会話をしたことがあるんですが……」

 と話すのは中江さん。

「松永さんは奥さんとお子さんを亡くしてぽつんと1人残されてしまいました。だから、私たち交通事故遺族の仲間が支援しています。遺族とはいえ、先頭に立って活動すると誹謗中傷の声が舞い込んでくることも多く、色々と大変だったと思います」


■自動車メーカーはバカにされているなぁと


 中江さんが続ける。

「松永さんの場合、守るべき家族がすべて失われたところからのスタートで本当に大変だったと思います。投げやりになることなくよく闘い切れたなと本当に感じています」

 今回、飯塚被告はトヨタ・プリウスを運転し、「クルマの異常がきっかけで暴走した」「過失はクルマ側にある」と法廷で主張していた。しかし裁判でそれは退けられ、「約10秒間もペダルを間違えて踏み続けた過失は重大」と断罪された。

「実は、交通事故の裁判を巡ってはそういう弁明が当たり前になっています。ある意味で、自動車メーカーはバカにされているなぁというところも多く、そこはもう少しちゃんとした対応をすべきじゃないかと感じていました。被告側の主張が極めて悪質だと認められる場合には名誉毀損で訴えるということも必要になってくると思いますし、むしろそうすべきではないかと感じるところもあります」

 今回の裁判で車両の技術的欠陥を主張されたトヨタは「(裁判所の)調査への協力の結果、車両に異常や技術的な問題は認められなかった」とコメントを出している。

 何もトヨタ車に限らないが、仮に何らかの原因でブレーキが利かない場合でも、油圧によって機械的にブレーキが作動する機能がある。加えて、速度やブレーキなど車両に関する走行データは記録されている。トヨタは飯塚被告の主張を否定するだけの証拠を持っていたわけだ。


■免許を持ってないのに「運転技能を有する」


「アクセルとブレーキを踏み間違えるというのは運転技術を有しない、免許を持つレベルに達していないということだと思います。飯塚被告は免許を持っていたわけですが、本当にその資格があったのか、そのあたりも厳しく見てもらうべきではなかったかと思っています」(中江さん)

 中江さんがこの点にこだわるのには理由がある。

 中江さんの愛娘が巻き込まれた事故で、京都府警と京都地検は自動車運転過失致死傷罪より罰則が重い危険運転致死傷罪の適用を念頭に置いていた。しかし、その成立要件に無免許運転が盛り込まれていないなどで立件断念を余儀なくされてしまう。

 しかも、無免許運転の常習犯だったことがかえって加害者の少年に有利に働くという不条理な法解釈までされてしまった。

「加害者は免許を取得したことがないのですが、運転には慣れていたために“技能を有する”という解釈をされてしまったのです」

 危険運転致死傷罪が成立する要因として「未熟な運転技術」というものがあった。ところが無免許でも運転を繰り返していたがゆえに、加害者の技術は未熟とは言えない、という理屈だ。

「曖昧な法律だと思いましたね。免許を持ってないのに運転技能を有するというわけのわからない理屈で闘うことになったのは、私たちにとってあまりに残酷でした」


■法律は弱い者のためにあってほしい


 さらにこんな指摘もする。

「できれば知っておいてもらいたいのでお話ししますが、飲酒運転をしていても、危険運転致死傷罪が適用されないことが結構あるんですよ。アルコールの血中濃度が基準値に達していないとか、やはりボーダーラインがありましてね。ただ、飲酒運転も無免許運転もやってはいけないことは誰もがわかっていることだし、人を殺す可能性があるわけだから、悪質か否かの判断はそんな難しいことではないと思うんです」

 法律は弱い者のためにあってほしい、悪人が罰を逃れるためのものではよくない、法律のロジックにはついていけないところがある――そう語る中江さんには次回、2012年の事故で服役し出所した元被告への思いについて語ってもらう。

デイリー新潮取材班

2021年10月18日 掲載

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