元公安警察官は見た 外務省官僚を震え上がらせた中国人「仲間由紀恵似スパイ」の素性

 日本の公安警察は、アメリカのCIAやFBIのように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁後、公安畑を17年務め、数年前に退職。この9月『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、ロシアと中国のハニートラップについて聞いた。

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 スパイ映画では、よくハニートラップが出てくる。ハニートラップとは、主に女性スパイが色仕掛けで行う諜報活動のことだ。

「日本の公安警察が、ハニートラップを仕掛けることはありません」

 と語るのは、勝丸氏。

「その理由は簡単で、費用対効果が悪すぎるからです。女性の公安捜査員はごく普通の容姿の人ばかりです。痩せすぎず、太り過ぎずで、目立ちません。映画に出てくるような絶世の美女やナイスバディの女性は人の記憶に残りやすいので、公安には向いていません」

 しかし、海外の諜報機関は、今でもハニートラップによる情報収集しているという。アメリカや韓国も使っているそうだが、特にロシアと中国のハニートラップは有名だという。


■アンナ・チャップマン


「東西冷戦時代には、主にヨーロッパで旧ソ連の美人スパイが暗躍していました。性的な羞恥心を取り去るため、彼女たちは、訓練所で全裸のまま生活させられ、同僚の男性と肉体関係を結ばされたりしていたと言います。」

 最近のロシアの女スパイはどうか。

「“美しすぎるスパイ”と言われたアンナ・チャップマンが有名です。彼女はSVR(ロシア対外情報庁)の要員として訓練を受け、2010年2月、アメリカに入国しました。表の顔は不動産会社のCEOで、裏ではアメリカの核弾頭開発計画の情報を色仕掛けで収集していました。ところがその年の6月、FBI(連邦捜査局)のおとり捜査員が接近したところ、彼女は2日以内にロシアへ逃亡する意志を示したので検挙しました。検挙後、彼女はロシアへ帰国したのです」

 日本で、ロシアの女スパイは活動しているのか。

「日本には、ロシアの女スパイはほとんど潜入していません。シャラポワみたいな美人が寄ってきたら、日本人はかえって警戒するでしょう。尻込みしてしまい、色仕掛けにはかからないんです」

 日本で積極的にハニートラップを仕掛けているのは中国だという。

「中国は、ロシアのように訓練した女スパイを派遣しているわけではありません。日本には、中国人留学生のコミュニティがありますが、そこからハニートラップが出来そうな素人女性を中国大使館がスカウトしていると言われています」

■「仲間由紀恵」


 どうやってスカウトするのか。

「目をつけた女性に、大使館のメッセンジャーとして協力してくれないかと持ち掛けるのです。『協力してくれれば、本国にいるあなたの両親の年金額をアップします。あなたの一族は安泰だし、謝礼もでます。でも協力しないと、どうなるかわかりませんよ』と半ば脅すのです。そう言われれば、ほとんど協力しますね」

 中国の女スパイが狙うのは高級官僚や大企業の幹部だという。例えば、こんなケースがあったという。

「知り合いの外務省の若い外交官が中国人が経営するバーに行った時のことです。彼は将来の大使候補でしたが、迂闊なことに名刺を差し出してしまった。すると、バーのオーナーは好きな女性のタイプを聞いてきたと言います。彼は『女優の仲間由紀恵』と答えたそうですが、その後、周囲に仲間由紀恵そっくりな女性が何度も現れたのです」

 自宅近くのコンビニで肩が触れ、カタコトの日本語で謝る女性。行きつけのバーや居酒屋で、たまたま隣に座った女性。電車の中でたまたま目が合うと、そこにも……。

「よくよく見ると、みな同じ仲間由紀恵似の女性だったそうです。恐くなった彼は警察に相談しようとしたが、外交官としてさすがにそれはどうかと考え、元々面識のあった私にコンタクトをとってきたのです」

 勝丸氏は、部下や仲間と一緒に外交官の行動を監視したという。

「すると、確かに外交官の後を尾行する女性がいました。仲間由紀恵に少し似ていましたね。その女性を尾行すると、案の定中国人留学生であることが判明しました。バーのオーナーはスパイで、外交官の好みの女性を聞いて、ただちに日本語ができる仲間由紀恵似の女性を探してきたのです」

 中国のハニートラップに引っかかると、どうなるか。

「女性スパイとイチャイチャしているところを動画に撮られます。それをネタに脅され、情報を求めてくるのです。大企業の幹部だったら、企業の機密情報を求められます。勿論謝礼もでるので、協力する人もいますね。今回のケースは、彼が将来大使になった時に備えて、今から関係を作っておこうと思ったのではないでしょうか」

 ハニートラップが盛んな某国大使館主催パーティでは、必ずと言っていいほど美しい女性がたくさんいるという。

「外事課に勤務していると、こういうパーティに顔を出すことがよくあります。男性の同行者には、『美人がたくさん寄ってくると思うけど、気をつけてくださいね。後日、美人から電話がくることがありますが、誘いに乗るのは絶対危険ですよ』と釘をさしておきます。こういうことを何度も続けていると、仕事以外のパーティで女性と知り合っても、その場の挨拶で終わってしまいます。公安の悲しい性で、身構えてしまうからです」

デイリー新潮取材班

2021年10月19日 掲載

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