大学時代に人妻を略奪、次は会社の後輩と… 40歳の“バツ2”男が語る「波乱万丈」と「これから」

大学時代に人妻を略奪、次は会社の後輩と… 40歳の“バツ2”男が語る「波乱万丈」と「これから」

「30代はリハビリ期間だと思って過ごそうかな」と栄太さんはいう

 知人から「波乱に満ちた人生を送っている男がいる」と紹介してもらった男性がいる。眉をしかめざるを得なかったり笑ったりしながら、彼が語る「ツイているんだかいないんだかわからない人生」を聞いた。【亀山早苗/フリーライター】

「アイツ、僕のことクソみたいなヤツって言ってませんでした?」

 のっけから紹介者のことをそう言ったのは、菅原栄太さん(38歳・仮名=以下同)だった。180センチ近い身長、小顔で細マッチョ系。モテる雰囲気をビシバシ出している。

「いや、いいんです。自分では人に恨みを買うようなことはしていないと思っているんだけど、なぜか悪者にされちゃうんですよ。ぼろくそ言われるのは慣れているので、何でも聞いてください」

 ひがみっぽいのか正直なのかはかりかねる少しだけとぼけた口調。顔を見ると薄い笑顔。愛嬌があるのかないのかもよくわからない。


■最初の妻は“略奪”婚


 栄太さんは現在、ひとりで暮らしている。40歳にして結婚2回、離婚2回。忙しい人生を送ってきたようだ。

「最初の結婚は21歳の大学生時代です。相手の藍子は38歳、知り合ったときは人妻でした。そもそも、彼女の息子が中学受験のためにつけた家庭教師が僕だった。彼女の夫が僕の知り合いと仲良しで紹介されました。ダンナさんはいい人でしたよ。食事に連れて行ってくれたり、息子がいい成績をとると『きみにもご褒美』と1万円くれたり。だけど、藍子に言わせれば『私には厳しい。おまえに学がないから息子も頭が悪いと責められる』って。夫婦のことに口を出す気はなかったけど、あるとき行ったら、ダンナさんが出張で、勉強を見ていた息子は風邪で高熱を出して寝ている。じゃあ帰ると言うと、『帰らないで。せめてご飯でも食べて行って』と言われて」

 夫への愚痴を肴に酒を飲み、簡単に酔い潰れた。気づくと彼女と夫が寝ているはずのダブルベッドにいた。

「『シーッ』と彼女が僕の唇を塞いできました。若いから自分の意志とは反対に体が動いて……」

 抜き差しならない関係になった。彼女のボルテージは上がり、3ヶ月後には彼のひとり暮らしのアパートに押しかけてきた。離婚届を書いて夫に渡し、子どもを置いて出てきたという。

「焦りましたよ、僕には正直言ってそんなつもりはなかったので。でもこうなったら逃げるわけにもいかない。ダンナさんに謝りたいと言うと、『あなた、殺されるわよ』と脅されて、結局、ふたりで逃げるように別のアパートを借りて引っ越しました。もちろんダンナさんは怒っていたんでしょうけど、学生に慰謝料を請求してもしかたがないと思っていたのかもしれません。追ってはこなかった。今思えば、彼女があまりいい妻ではなかったのかもしれない。藍子はいつも逃げ場所を探していたんでしょうね。それがたまたま僕だったんだと思います」


■今度は社内の後輩と…


 22歳になる直前、彼は藍子さんに急かされて婚姻届を書いた。大学をやめようかと迷ったが、いざ結婚してわかったのは、彼女の実家が裕福だったこと。結婚したのならと、学費も生活費も出してくれることになった。ひとり娘の奔放さを親は責めることもなかったようだ。

「僕の家庭は母ひとり子ひとりだったから、これで母に迷惑をかけずにすむ、ラッキーと思ったのが正直なところでした。でも結婚生活はうまくはいかなかった。息子の家庭教師と浮気するくらいなので、彼女、家庭を築く気なんてなかったのかもしれません。魅力的な女性だったけど、とても結婚生活なんて呼べるようなものではなかった。ただのおままごとですね」

 就職活動をしたが、すでに家庭があるとなると二の足を踏む企業が多く、なかなか勤め先が決まらない。見るに見かねたのか、藍子さんの父親が、知り合いの経営する企業に“押し込んで”くれた。

「せっかく入社できたのだから、コネだろうと何だろうとがんばって頭角を現してやると思っていました。がんばればがんばるほど、家庭は家庭として機能しなくなっていきましたけどね」

 帰っても妻がいない日が多くなった。どこかで遊んでいるのだろうと思いながら、やはり寂しさは禁じ得なかった。だが、言葉通り彼は必死で働いた。営業に配属され、2年後にはチーム内でも発言を期待される存在となった。

「そのころ1年後輩の麻里と懇意になりました。だけど一応、僕は結婚しているからつきあうわけにはいかない。社内不倫と言われてせっかく得た居場所を失うのも怖かった。でも、麻里はぐいぐい来るんですよ。『先輩、先輩』ってついて回るようなかわいい子で」

 どうやら栄太さんは、「ぐいぐい」来られると弱いようだ。藍子さんにしろ、麻里さんにしろ女性のほうが積極的だ。どこか優柔不断なところが女性には追いかけるしかないと思わせてしまうのかもしれない。

「ある日突然、麻里に『先輩、お願い。一度だけでいいから』と泣きながら懇願されて、ついほだされて関係を持ってしまったんです。彼女は翌日、会社を辞めました。辞めるつもりで僕を誘ってきたんだと思うと、心配でたまらなかった。社内の噂では実家に帰ったということだったので、あの夜を思い出にするつもりだったのかと……寂しかったですけどね」


■「1000万くれたら別れてもいい」


 1年後、妻から離婚届を突きつけられた。オレが何をしたのかと聞くと、麻里さんの名前をあげ、「彼女と一緒になれば?」と冷たく突き放されたという。

「時間がたっているとはいえ、麻里と何もなかったわけではないからギクッとしました。すると藍子は、『教えてあげる』と言い出した。1年前、麻里は藍子に連絡をとって、『栄太さんをください』と言ったそうです。藍子は『1000万くれたら別れてもいい』と告げた。そうしたら1年後に、麻里が1000万円を持って彼女の前に現れたそうです。『風俗で稼ぎまくったみたいよ。本当に持ってくるとは思わなかった』と藍子は言いました。思わずつかみかかってしまった。麻里の気持ちをそんなふうにもてあそんだのが許せなくて。同時に何も知らなかった自分にも腹が立ちました」

 彼は妻から聞いた麻里さんの連絡先に電話をかけた。麻里さんは声が栄太さんだとわかると嗚咽を漏らした。

「僕が悪かったと言うしかなかった。藍子とは離婚することで話がついたのですが、藍子の父親が激怒して、当然、会社もクビになりました。ただ、社内で応援してくれる先輩がいて、その方の紹介で他企業で働くことができるようになったんです」

 26歳のときだった。仕事が決まると、麻里さんと同居を始めた。

「本当に私でいいのと言う麻里に、オレのせいでこんなことになって悪かったと言うしかなかった。僕のために命がけになってくれる女性がいる。1年で1000万ためるなんて尋常じゃない。そんなことする女性がいるなんて泣けるじゃないですか。彼女だけが僕の支えでした」

 応援してくれた先輩と友人に証人になってもらって、ふたりで婚姻届を書き、提出した。結婚式はしなかったものの、イタリアンレストランでおいしいものを食べながら、「ふたりで生きていこう」と誓った。


■性的関係が失われても…


 ところが人間というのは寂しい生き物である。

「そこは僕の不徳のいたすところというか器の小さなところというか……。差別しているわけじゃないんです。麻里のことは本当に尊敬さえしていた。だけどできなかったんです」

 性的に、彼はできなくなってしまったのだ。彼女が風俗で稼いでくれたことを心からありがたいと思い、その気持ちに報いなければとわかっているのだが、体は反応してくれなかった。

「麻里も最初のうちは『心労が大きかったのよ。気にしないで』と言っていましたが、何度もそうなるとつらそうで……。『やっぱりそうだよね、私みたいな女とその気にはなれないよね』と。いや、違うと言葉では言っても、実際にできないので僕自身もつらくてたまらない」

 心では麻里さんを愛しているのだ。それは間違いなかったと栄太さんは言う。だが体が言うことを聞かない。

「こんなせつない話、ないですよ。自分で自分を呪いましたから」

 性的関係が失われてもふたりの絆は消えないはず。彼はそう考えた。もちろん病院にもかかったが、やはり心因性のものなので実質的に治療法はない。カウンセリングには何度も行った。だが彼の中で問題が解決されない限り、ことは好転しないのだ。

「僕自身、風俗に関して悪いイメージはありません。行ったことがないわけでもない。風俗で働いてお金を貯めた彼女を汚いとも思っていない。ただ、深層心理では汚いと思っているのではないかとカウンセラーに言われました。思っていないんです、本当に。だけどできない。自分で自分を裏切っているような感じですよね」


■高校時代の同窓会で…


 新たな職場では仕事がうまく回り始めていた。社内の人間関係も風通しがよく、居心地のいい場所だった。心機一転、栄太さんも腰を据えてがんばっていたが、心の中には常に「自分の深層心理への疑惑」があった。

 栄太さんはほぼ毎晩、麻里さんと手をつないで寝た。抱きしめたまま朝を迎えることもあった。麻里さんもアルバイトを始め、家庭的にはうまくいっていたはずなのに、深夜、目覚めると麻里さんが静かに泣いていることがよくあった。そこでさらにプレッシャーがきつくなっていく。

 30歳を迎えたころ、高校時代の同窓会があった。当時つきあっていた亜由美さんと再会、オープンで明るい彼女にならと後日、相談をもちかけた。

「亜由美にすべて話しました。前の結婚のことも。『あんた、相変わらずろくでなしだね』と言われてなんだかホッとしましたね。亜由美とはつきあっていたとはいえ、淡い関係でした。でも10数年ぶりに会うと、当時を思い出して自己開示ができる。そうやって話しているうち、彼女が『ねえ、試してみる?』と言い出したんです」

 妻とだけEDなのか、誰とでもできないのか。それは栄太さんが知りたいところでもあった。

「私も結婚している身だから、お互いに口外しない、そして一度きりという約束よ、と亜由美に言われて助かったと思いました。そしてホテルに行って……。そうしたらできちゃったんですよ。しかもふたりとも燃えに燃えて。当時、キス止まりの関係だったから、ふたりともやっと完結できたような妙な達成感のおまけまでついてきた(笑)。笑いごとじゃないんですけど、できたときはうれしかった」


■「麻里でなければできるんだ」


 相性がよかったのだろう。一度きりのはずが二度になり、三度になり、月に1,2回は会うような関係になってしまった。まずいと思いながらも、会うと居心地のいい関係から抜け出すことはできなかった。そのころ、麻里さんはかなり鬱々としており、家庭内の雰囲気が暗かったせいもある。

「麻里が鬱々としているのは僕のせいなんです。それはわかっているけど、性的な話がタブーになっているのが怖かった。ドラマなどを一緒に観ていて、キスシーンからベッドシーンへの流れがあると麻里はブチッとテレビを切るんです。恐ろしく暗い表情で。抱きしめてキスすると、『この先がないのに、キスなんてしないで』と言われるようになっていた。僕は浮気なんてするつもりはなかったけど、麻里でなければできるんだとわかってしまうと、やはり性欲は止められない。亜由美と一緒にいると楽しかったし……」

 そんな関係は1年足らずで麻里さんにバレた。麻里さんの傷がどれほど深かったか、彼には想像もつかなかっただろう。

「麻里は暴れました。家の中のありとあらゆるものを投げて、テーブルをひっくり返して、テレビも窓ガラスも破壊して……。近所から警察に通報されました。一応、夫婦げんかということで納得してもらいましたが、その後は麻里が泣き続けて。僕にはどうすることもできなかった。無力感に苛まれました」


■「殺してやりたい」


 麻里さんは「殺してやりたい」と言った。「殺していいよ」と栄太さんも言った。彼は本気だった。自分を殺して麻里さんの気がすむなら、それでもいいと思った。

「麻里が包丁を手にしたんです。こういう人生を招いたのは自分だから、殺されてもいいと本気で思いました。だけど麻里は結局、できなかった。『私はあなたを愛した自分を裏切れない』と名言を吐いて出て行きました」

 それから約6年、彼は今も独身だ。麻里さんがどこでどうしているのか、彼は知らない。離婚したばかりのころ心配で連絡をしたのだが、着信拒否された。関わりを持たないことが自分にできることだと悟り、彼は以来、いっさいの連絡を絶った。

 亜由美さんとは、今もときどき「友だちとして」会うことがある。彼女に対しての性欲はなくなった。あのころ、どうしてあれほどまでに彼女を求めたのか、今となっては記憶が定かではないらしい。

「何年もできなくて、ある日、突然できるとわかってケモノになっちゃったんでしょうね。今振り返ると、20代は狂気の時代でした。自ら望んだわけではなかったけど、いろいろなことに巻き込まれたり流されたりしてしまった。30代はリハビリ期間だと思って過ごそうかなと思っています。今は特定の彼女はいませんが、40歳までには今度こそ、ちゃんとした家庭を作りたい」

 彼にとってのちゃんとした家庭とは、「夫と妻の間に上下関係がなく、お互いに居心地がいいと思える空間と雰囲気があること」だという。2度の結婚と離婚で、彼なりに学んだことがあるようだ。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月27日 掲載

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