東京駅vs.横浜駅 ターミナル駅利用者対決の勝者は? 細かくデータを積み上げると

東京駅vs.横浜駅 ターミナル駅利用者対決の勝者は? 細かくデータを積み上げると

どちらに軍配が?

■1位は新宿駅で変わらずだが


 鉄道会社各社の多くは駅で乗り降りする人の数を発表している。多くの人々にとって興味があるのは大都市圏にある巨大ターミナルの動向だろう。JR東日本は「各駅の乗車人員」(https://www.jreast.co.jp/passenger)と詳細なデータを発表していて、最新版となる2020(令和2)年度の数値がこの夏に発表となっている。そこから何が読み取れるか。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏がレポートする。

 JR東日本は乗車人員という名目、つまりその駅から乗った人数を公表している。気になるベストテンは以下のとおりだ。

・JR東日本各駅の乗車人員ベストテン(2020年度)

順位/駅名/1日平均の乗車人員/2019年度の順位/2019年度の1日平均の乗車人員/前年比(全てマイナス)

1位/新宿駅/47万7073人/1位/77万5386人/38.5%
2位/池袋駅/37万6350人/2位/55万8623人/32.6%
3位/横浜駅/29万0376人/4位/41万9440人/30.8%
4位/東京駅/27万1108人/3位/46万2589人/41.4%
5位/渋谷駅/22万2150人/6位/36万6128人/39.3%
6位/品川駅/22万0930人/5位/37万7337人/41.5%
7位/大宮駅/18万8576人/8位/25万7344人/26.7%
8位/新橋駅/17万5368人/7位/27万8334人/37.0%
9位/北千住駅/16万1271人/10位/22万1634人/27.2%
10位/川崎駅/15万9802人/11位/21万5234人/25.8%


■横浜駅の“台頭”


 首都圏の巨大ターミナルが名を連ねているのは例年どおりながら、コロナ禍で1日平均の乗車人員が前年の2019(令和1)年度と比べて軒並み大幅に減少しているのが特徴だ。

 ベストテン圏内の駅での減少率を示すと、品川駅の41.5%減を筆頭に東京駅は41.4%減、渋谷駅は39.3%減、新宿駅は38.5%減と続く。最も減少率の低かった10位の川崎駅でも25.8%減であったので、コロナ禍が鉄道に及ぼした影響はとても大きかったと言える。

 いま挙げたとおり、1日平均の利用者数の減少率にばらつきがあった結果、2020年度のベストテンは2019年度と比べて順位が大きく変動した。1位、2位は不動であったものの、3位以下はすべて入れ替わった点が特徴だ。

 なかでも注目されるのは2020年度3位の横浜駅であろう。2019年度4位の横浜駅は東京駅を抜いて3位の座を射止め、東京駅は4位と順位を一つ落としている。2020年度5位の渋谷駅、6位の品川駅、それから7位の大宮駅、8位の新橋駅も2019年度の順位はともに反対だ。

 9位の北千住駅、10位の川崎駅に至っては、2019年度に9位であった秋葉原駅が11位になったのに伴って一つずつ順位を上げた。

 ベストテンの順位の変動は、駅を利用する観光客の割合に関係がありそうだ。東京駅は東海道・山陽新幹線や東北・上越・北陸・北海道・山形・秋田新幹線、品川駅も東海道・山陽新幹線、それに羽田空港を発着する航空便のそれぞれ利用者が大きく減ったからであろうし、秋葉原駅は恐らくはインバウンドを中心とした観光客の減少が影響したと考えられる。


■珍しいことではない


 さて、先ほど横浜駅の乗車人員が東京駅を追い抜いたと記した。市販の時刻表を見ると、横浜駅は神奈川県、東京駅は東京都のそれぞれ代表駅として扱われている。乗車人員という限られた部門ながら、都県間でのつばぜり合いという観点から神奈川県が東京都よりも優位に立ったと一部で話題となった。

 しかしながら、過去の記録を調べると横浜駅の乗車人員が東京駅より多いのは珍しいことではない。JR東日本は各駅の乗車人員を1999(平成11)年度分から公表している。横浜駅が東京駅を上回ったのは1999年度から2011(平成23)年度までの13カ年度分でいずれも横浜駅が4位、東京駅が5位であった。

 2012(平成24)年度になって東京駅が4位となって横浜駅を逆転し、翌2013(平成25)年度は前年に3位であった渋谷駅が5位になった代わりに東京駅が3位、横浜駅が4位と変化が生じている。以来、2019年度までの8カ年度分は東京駅が横浜駅を上回り、2020年度は9年ぶりに横浜駅が東京駅を上回ったという次第だ。

 横浜駅、東京駅どちらが上かと言っても、所詮は数値の話であり、ともに立派なターミナルである。それにJR東日本が発表した乗車人員という物差しは横浜、東京両駅が果たす役割の一部を測っているに過ぎない。

 横浜駅には東急電鉄、京浜急行電鉄、相模鉄道、横浜市営地下鉄、横浜高速鉄道と5社の路線が乗り入れているし、東京駅はJR東海の東海道新幹線の起点でもあり、また東京メトロ丸ノ内線も乗り入れる。これらの乗車人員も加えて比較すべきだし、駅の利用者数という観点で言えば各線どうしの乗換者数も考慮しなければならない。


■横浜駅と東京駅の乗降者数を比較


 そもそも、駅に到着して駅舎の外に出る降車人員を無視してよいのかと疑問も生じる。JR東日本をはじめ、多くの鉄道会社は、駅の乗降者数と言った場合、乗車人員の2倍が相当するという。だが、測定するとやはり異なる。誤差程度の違いであっても利用者数を比較するならば正確な数値で行いたい。

 いま挙げた数値の大多数は運輸総合研究所がまとめた各年度版の『都市交通年報』という統計書の「各駅旅客発着通過状況(主要線区)」から得られる。首都圏、中京圏、京阪神圏の主要路線の各駅で旅客がどのように乗り降りしたか、またどのように乗り換えたかを一部を除いて詳しくまとめたものだ。

 そこで、横浜駅と東京駅の乗降者数や乗換者数を比較してみたいと思う。横浜駅の場合は乗降者数、乗換者数ともすべての鉄道会社分がそろっている。

 一方で、東京駅の場合は乗り入れる各新幹線の乗降者数のデータが存在しないので、東海道新幹線についてはJR東海が2015年に「アニュアルレポート2015」として発表の1日平均の乗車人員である9万7000人を2倍にして使用し、東北新幹線など東北・上越・北陸・北海道・山形・秋田の各新幹線の乗降者数はJR東日本が2015年に「新幹線駅別乗車人員」(https://www.jreast.co.jp/passenger/2014_shinkansen.html)として発表の1日平均の乗車人員である7万2774人をやはり2倍にして用いた。

 それから、東海道新幹線と東北新幹線などとの乗換者数は不明だ。以上を踏まえて少々古いのだが、『都市交通年報』の最新版である平成28年版に掲載されている「各駅旅客発着通過状況(主要線区)」のデータは2014(平成26)年度分であるので、この数値を用いて横浜駅と東京駅とを比べてみよう。なお、以下に掲げた路線名は正式名または正式名に準じた名称とし、たとえば「宇都宮線」「上野東京ライン」といった系統名、愛称は省いた。


■差がついた横浜駅vs東京駅


・横浜駅
《1日平均の乗降者数》
JR東日本東海道線・根岸線 51万4758人
東急電鉄東横線 15万6777人
京浜急行電鉄本線 16万7612人
相模鉄道本線 19万3956人
横浜市営地下鉄ブルーライン 13万3015人
横浜高速鉄道みなとみらい線 18万5465人
計 135万1583人

《1日平均の乗換者数》
JR東日本東海道線と同根岸線 27万7719人
JR東日本と東急電鉄東横線 5万6928人
JR東日本と京浜急行電鉄本線 8万6097人
JR東日本と相模鉄道本線 16万1526人
JR東日本と横浜市営地下鉄ブルーライン 3万0873人
JR東日本と横浜高速鉄道みなとみらい線 1万5876人
東急電鉄東横線と京浜急行電鉄本線 2万5495人
東急電鉄東横線と相模鉄道本線 3万0449人
東急電鉄東横線と横浜市営地下鉄ブルーライン 4422人
東急電鉄東横線と横浜高速鉄道みなとみらい線 相互直通運転を実施しているために省略
京浜急行電鉄本線と相模鉄道本線 3万2621人
京浜急行電鉄本線と横浜市営地下鉄ブルーライン 5617人
京浜急行電鉄本線と横浜高速鉄道みなとみらい線 8146人
相模鉄道本線と横浜市営地下鉄ブルーライン 1万0833人
相模鉄道本線と横浜高速鉄道みなとみらい線 1万3712人
横浜市営地下鉄と横浜高速鉄道みなとみらい線 977人
計 76万1291人

横浜駅の1日平均の利用者数(乗降者数+乗換者数) 211万2874人

・東京駅
《1日平均の乗降者数》
JR東日本在来線(東海道・中央・東北・総武・京葉の各線) 68万1572人
JR東日本新幹線(東北・上越・北陸・北海道・山形・秋田の各新幹線) 14万5548人
JR東海東海道新幹線 19万4000人
東京メトロ丸ノ内線 14万3851人
計 116万4971人

《1日平均の乗換者数》
JR東日本各線内
東海道線と中央線 18万1515人
東海道線と東北線 大多数の列車が相互直通運転を実施しているために省略
東海道線と総武線 22万8398人
東海道線と京葉線 6万1860人
東海道線と東北・上越・北陸・北海道・山形・秋田の各新幹線 2万6673人 
中央線と東北線 5人
中央線と総武線 1万2471人
中央線と京葉線 3万2399人
中央線と東北・上越・北陸・北海道・山形・秋田の各新幹線 1万1425人
東北線と総武線 1万1649人
東北線と京葉線 3万1241人
東北線と東北・上越・北陸・北海道・山形・秋田の各新幹線 7556人
総武線と京葉線 4666人
総武線と東北・上越・北陸・北海道・山形・秋田の各新幹線 1750人
京葉線と東北・上越・北陸・北海道・山形・秋田の各新幹線 3314人
計 61万4922人

JR東日本各線(新幹線を除く)とJR東海東海道新幹線 7万3437人
JR東日本各線(新幹線を除く)と東京メトロ丸ノ内線 6万6637人
JR東海東海道新幹線と東京メトロ丸ノ内線 データなし
計 14万0074人

東京駅の乗換者数計 75万4996人

東京駅の1日平均の利用者数(乗降者数+乗換者数) 191万9967人


■1日中大変な数の人々で埋めつくされている


 以上のように1日平均で乗降者数と乗換者数とを合わせた利用者数を求めてみたところ、横浜駅は211万2874人、東京駅は191万9967人と結構な差がついた。東海道新幹線と東北新幹線などとの乗換者数は恐らくは1日平均数万人程度と見られるから、両者の差はなかなか縮まらない。

 とはいえ、横浜駅には利用者数が減少する要素が存在する。相模鉄道の相鉄新横浜線が2019(令和1)年11月30日に開業してJR東日本東海道線との相互直通運転が開始された結果、横浜駅を経由する乗換者が減ったと考えられるからだ。

 なお、相模鉄道は2022(令和4)年10月から翌2023(令和5)年3月までの間には相鉄・東急直通線を介して東急電鉄東横線ともやはり相互直通運転を実施する予定で、乗換者数はさらに減少するであろう。

 朝5時から深夜1時までの20時間が営業時間であるとすると、1時間平均の利用者数は横浜駅が10万5644人、東京駅が9万5998人にも達する。順位がどう変動しようが、両駅とも構内が1日中大変な数の人々で埋めつくされているのは間違いない。

梅原淳
1965(昭和40)年生まれ。三井銀行(現在の三井住友銀行)、月刊「鉄道ファン」編集部などを経て、2000(平成12)年に鉄道ジャーナリストとしての活動を開始する。著書に『新幹線を運行する技術』(SBクリエイティブ)ほか多数。新聞、テレビ、ラジオなどで鉄道に関する解説、コメントも行い、NHKラジオ第1の「子ども科学電話相談室」では鉄道部門の回答者を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月30日 掲載

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