NHK岩田明子氏の復権、菅シフトを敷いたら退陣で岸田首相に直電できる記者が不在に

NHK岩田明子氏の復権、菅シフトを敷いたら退陣で岸田首相に直電できる記者が不在に

捲土重来を期す岩田明子氏

■岸田氏と読売新聞の関係


 このところNHK政治部の報道が他社に比べて見劣りするケースが少なくない。菅前首相の退陣が濃厚になって以降、といってもいいだろう。前内閣発足時に菅氏に近いとされる記者を配置して備えたが、肝心の首相が政権を投げ出してしまったから致し方ないといえばそれまでだが……。一方で、「岸田文雄総裁・首相」が誕生し、総選挙を経てひとまず政権継続となる中、「安倍晋三元首相に最も近い記者」として知られた岩田明子氏がNHK内で存在感を強めているという。

「岸田さんが総裁選に出馬し、有力だと言われてから、読売新聞の力が際立つようになりましたね。読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡辺恒雄さんは岸田さんの父・文武氏と旧制東京高校時代からの同窓。代議士5回生だった文武氏が65歳で急逝した際に、渡辺さんが友人代表として弔辞を読み、号泣したことは語り草です」

 と、読売ではない社の政治部デスク。加えて、

「渡辺さんと岸田さんは開成高の同窓。4年前に開成OBで作る『永霞会』が発足し、会長には岸田さんが収まっています。読売は2014年9月、安倍政権での内閣改造・党役員人事をめぐって『小渕幹事長で調整』などと報じて結果的に誤報になり、釈明記事を出したことは記憶にありますが、永田町にも霞ヶ関にもしっかりと浸透し、一番取材力があるメディアだと思います」


■身内に出し抜かれて追いかけままならず


 一方、NHKは今年6月の人事で菅氏に近い記者を政治部長に配すなど、「菅シフト」を敷いた。安倍元首相に最も近い記者とされ、首相在任中はスクープを連発してきた岩田明子氏も菅氏と距離があることもあって政治部を離れることになった。1996年に入局して岡山放送局に配属。2000年から報道局政治部に異動して以降、東京どころか政治部を離れることがなかった岩田氏は現在、解説委員とネットワーク報道部の記者主幹を兼ねている。

 しかし、菅氏の退陣、岸田政権の始動によって、菅シフトの目論見は脆くも崩れ去ってしまったのだ。

「新しい部長と副部長は政治部での実績がほぼなく、そういう人たちがトップになったことはこれまでなかったので、“大丈夫か?”と今後を危ぶむ声が上がっていたのですが、実際にその通りになりました」

 と、NHKの局員。そこで再び存在感を示しはじめたのが岩田氏だった。

「安倍さんの弟・岸信夫防衛相の留任をBS番組内でスクープしたのは岩田さんでした。彼女は安倍さんが官房副長官時代に日朝交渉に携わった関係で外務省に食い込み、後に次官となる斎木昭隆氏ら有力な外務官僚と良い関係を築きました。そしてその人脈を通じて省内に影響力を保持し、後から外相としてやってきて右も左もわからない岸田さんをいろんな面で助けたと言われています。岸田さんもその恩を忘れておらず、彼女からの電話には必ず出るそうです」


■人事はいじれない


 岸防衛相の留任報道を巡っては、政治部は後追いさえままならず、他メディアに後れを取るという嫌なオチまでついた。一方で岩田氏は、総裁選時から岸田選対に出入りしていることが目撃され、報じられてもいた。その良好な関係を生かし、自身の取材力をアピールする機会が増えるかもしれない。

「岩田さん一人に政治部がやられるという体たらくでした。正籬(がき)聡NHK副会長は政治部時代には宏池会の担当でしたし、古い話ですが島桂次元会長も宏池会の担当で、伝統的にあの派閥に強いはずだったんですが……。もうそういう時代じゃないのかもしれません」(先の局員)

 闘えない組織なら即座に見直せばいいのではと誰もが思うところだが、

「ウチの人事は年に1度ですし、みずほ銀行出身の前田伸晃会長と正籬(がき)副会長を中心に練った人事をすぐに覆すのは無理だと思います。来年6月までのらりくらりとやり過ごすしかないでしょうね」

 今回の総選挙では、報道各社の事前予想がおしなべて外れたことがクローズアップされた。中でもNHKは自民党の獲得議席数を212〜253とかなり幅をもたせた予想をした挙句、それさえ外す(実際は261)という後味の悪さが残った。

「投票締め切りである午後8時の“せ〜の”の発表では、民放各社も外したとはいえもう少しピンポイントで予測の数字を出していたから、NHKに比べて潔いという印象が視聴者にはあったかもしれませんね。NHKとしては情勢が読みづらい苦しさが幅の広さに表れていましたが(笑)」(先のデスク)

「皆様のNHK」の政治報道における苦境は、しばらく続きそうな気配だ。

デイリー新潮取材班

2021年11月5日 掲載

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