移住先で上手くいく二つのポイント 専門性と地域のアピールがカギに(中川淳一郎)

移住先で上手くいく二つのポイント 専門性と地域のアピールがカギに(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 東京から佐賀県唐津市に引っ越してほぼ1年が経過しました。いわゆる「移住生活」ですが、この言葉は作家の山田詠美さんが「なんかカッコつけてる感じ。ただの引っ越しじゃん(意訳)」と言ったのに納得したので以来封印しました。ここでは移住をウマくやる方法について書いてみます。

 私はかなりラッキーな部類に入ると思うのですが、まず、東京である程度の貯蓄ができたので「あとはラクに生きよう……」と47歳にして昨年決断しました。「もう、都会に未練がない」という状態をいかに作れるかが大事なのです。

 別に都会が悪いわけではないのですが、私としては(1)人が多い場所はイヤだ。満員電車はイヤだ(2)釣りがしたい(3)クワガタを獲りたい(4)黄ニラを売りたい(5)十分東京でいい思いをしたから後は都会とは別の世界を見たい──こうした感覚を2013年、40歳の時に持ち始めました。

 この五つを実現できる場所として唐津を選んだのですが、なんと、全部達成してしまいました……。で、(4)黄ニラ、についてはまったく理解不能だと思うので補足します。私は全野菜中もっともおいしいのは黄ニラだと思っています。日の光を浴びさせないで育てるニラのことで、これがすこぶる美味。タイ料理や中国料理の定番ですが、日本では滅多に見られません。岡山県が日本一の産地ではあるものの、スーパーで見かけてもとにかく高い。

 なぜ日本でこの流通量が少ないのかと嘆いていたところ、佐賀の農家の方が「やってみましょうか!」と開発に着手。先日、黄ニラがすくすくと育っている写真を送ってくれました。開発に成功した場合はPRと営業をバンバンしようと思います。

 そして移住をウマくする方法ですが、基本的には「移住先に役立つ人」であった方がいい。私の場合は、いろいろと情報発信の術を持っているので唐津・佐賀の良い点を発信できる立場にあります。

 これが案外と重宝されています。先日、駄菓子屋さんの取材をし、記事を書きまして、その後店主に挨拶したら「すごい反響でしたよ。わざわざ仕入れに来てくれる人もいましたよ!」と言われました。

 これは、私の「執筆・編集・PR」という専門分野が役に立った例ですが、やはり完全に新しい土地で受け入れられ、歓迎されるには、都会で培った能力をいかに地元に還元するかが大事だと1年間で思いました。

 あと、とにかく新生活を楽しんでいる様子を日々地元の人に伝えるべきです。ツイッターやフェイスブックやインスタグラムはバンバン活用し、地元の素晴らしい風景等を投稿しまくりましょう。地名をつけて投稿すれば密かに地元の人が見てくれているはずです。

 基本は「私は新参者です。皆さん、どうぞよろしくお願いします。この街は素晴らしいですね!」を日々ネット及び現実社会でアピールすることが大事です。そうすると少しずついろいろな人が「会いましょう」と言ってくれ、移住生活が楽しくなります。

 ちなみに山田さん、言葉への違和感をバシッと言い切るのがすごい。「『コロナ下』っていうけど『コロナ禍下』じゃない?」。確かにそうですよね。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2021年11月4日号 掲載

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