テレビに出る医者が白衣を着るのは無意味 作られたイメージに従うカッコ悪さ(中川淳一郎)

テレビに出る医者が白衣を着るのは無意味 作られたイメージに従うカッコ悪さ(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 コロナ騒動以降、すっかり医者がテレビに出まくるようになりましたが、なんで患者を診るわけでもないのに白衣を着ている人が時々いるんですかねぇ? 番組側が「お医者さんだと一発で分かるようにぜひ!」なんて言っていることは想像できるのですが、どうせテロップで医者であることは説明するのだからスーツだったり普段着でもいいのではないでしょうか。

 というのも、「その職業だと一目で分かる格好をしろ」と言われた場合、ボクサーだったら上半身裸でグローブ着けなくてはいけないし、食品工場の管理者であれば、髪の毛が落ちない帽子をかぶらなくてはならない。こんな格好でテレビに出たらただのバカです。

 そんな状況下、なんで医師だけがこの格好をするのだろうか……。もしもテレビ局のプロデューサーが出る場合はカーディガンを首に巻く「プロデューサー巻き」でしょう。では、私のような編集者・ライターはどんな格好をすればいいのでしょうか! まんきつさんのような漫画家であれば「ベレー帽をかぶる」というやり方がありますが、編集者・ライターはとんと格好が分からん。

 考えられるのは、「タバコを20本くわえて薄汚いセーターを着て出ていく」というものでしょう。まぁ、編集者のイメージを作りたいのであればコレです。あとは、完全に酔っ払って両脇にスナックのママを抱えて「ウェ〜」みたいに登場するぐらいでしょうか。

 さて、今回は「いかにイメージを作るか」について考えてみますが、イメージというものは自分では絶対に作れません。世間様が作ったイメージに従うしかないのです。1980年代の野球雑誌で、新幹線から降りたところの選手の写真を見ると大抵は「パンチパーマ」「サングラス」「セカンドバッグ」でした。20代の選手でさえこのベテランオッサンのような風貌をしているのです! 完全にヤクザの下っ端のいでたちですが、この頃のプロ野球選手はこんなもんでした。

 イメージ作りというものは、「ミュージシャンだったら刺青」「IT経営者だったらタートルネックのセーター」みたいなものがあります。

 このイメージに従うってとんでもなくダサくありませんかねぇ? 私は、夏は「短パン・Tシャツ」で、秋から春は「スーツ」です。とにかく、格好を考えたくないんですよ。いくら「編集者・ライター」という職業であろうとも、そのイメージとは関係なく「気温が高いか低いか」だけで、格好を考える。

 以前、アメリカのバスケNBAの監督がビシッとスーツで指揮を執っているのに、野球の監督は選手と同じユニフォーム姿でダサい!といったことを書きました。すると「野球はマウンドにも上がらなくてはいけないからユニフォームじゃなきゃダメなんだ!」みたいな反論がネットでバンバン寄せられました。まぁ、いいわ。

 ただ、バスケの監督だって、審判に抗議する時はスーツ姿で反論するわけですよね。やっぱり、「適切な格好」ってものはその場を仕切る人のテキトー過ぎる感覚で決めていると思います。テレビに登場する医師は白衣なんて絶対必要ありません!

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2021年11月11日号 掲載

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