水商売で違法労働の「ベトナム人留学生」が急増 彼女らを「救世主」と言うスナック経営者の本音

水商売で違法労働の「ベトナム人留学生」が急増 彼女らを「救世主」と言うスナック経営者の本音

夜の街で違法に働く「ベトナム人留学生」をよく見かけるようになったという

■中国に次いで2番目


 10月20日、警視庁が約40人のベトナム人留学生の女性を東京・北区などにあるガールズバーで雇い、無許可で営業していた疑いで経営者の男らを逮捕した。言うまでもなく、風俗営業許可が必要なキャバクラやスナック、パブのほか、接待行為があるガールズバーなどで、「留学生」が働くことは違法である。

 私は報道を見て、やはりなと思った。というのも、近年、他の外国人以上にキャバクラやスナックで接待をするベトナム人留学生を頻繁に見かけるようになっていたからだ。

 日本に在留する外国人留学生は増加の一途を辿っているが、近年、急激に増えているのがベトナム人留学生だ。今年3月に発表された独立行政法人日本学生支援機構の外国人留学生在籍状況調査によると、外国人留学生数は27万9597人で、中国の12万1845人に次いでベトナム人留学生は6万2233人と2番目に多い(2020年5月1日現在)。夜の街で働くベトナム人留学生の女性も急増中だ。


■中高年男性に人気


 中国スナック、韓国クラブ、フィリピンパブなど外国人女性が働く店は珍しくはない。しかし、なぜ今、ベトナム人女性を雇う店が増えたのか。日本人のスナック経営者に話を聞いた。

「昔は中国人留学生の女をよく雇ったけれど、中国は豊かになったからか、日本に出稼ぎに来る女性は減ったように思う。それに中国人や韓国人の女は気が強くて、給料を上げろとか、客のセクハラがひどいとか色々文句言われて大変なんだ。それに比べて、ベトナム人の女は勤勉なうえに従順で、安い給料でも文句も言わずに頑張って働いてくれる。本当にありがたいよ。

 何よりも、ベトナム人は優しい性格だし、小柄で可愛らしいアジア系の顔立ちだから、中高年男性にものすごく人気があるんだ。純粋そうで尽くすタイプが好きな彼らにはたまらないだろうね」

 だが、留学生という身分のベトナム人女性を働かせるのは「違法」である。


■「むしろ人助け」


「もちろん警察や入国管理局に摘発されるリスクはある。でも、長くこの商売をしているけど、自分も周りの同業者も捕まったことは一度もないから、逮捕されるヤツがいても“運が悪い”としか思えないね。

 それに万が一、警察に踏み込まれたときの対策として、ベトナム人には接客しているんじゃなくて、自分も一緒に客として飲みに来ていると言えと話してあるし、スタッフや常連客とも口裏を合わせている。知り合いの店では日ごろから、店に遊びに来た客を装って客と同席させているしね。

 それに違法に働かせている手前、帳簿もまったく付けないから警察は証拠を掴めないだろうね。スナックなんか、領収書なんて言われなきゃ出さないし、売り上げの操作なんていくらでもできる。日本人女性を雇うと時給は最低でも1500〜2000円、中国人や韓国人は1100〜1200円だけどとにかく文句が多くて面倒くさい。ベトナム人なら1000円でも喜んで働いてくれる。500円でも仕事させてほしいって言われたこともあった。法律違反をしているんだろうけど、こっちはむしろ人助けをしているっていう気でやっている」(同)


■一番の理由はコロナ


 スナック経営者からすれば、ベトナム人留学生の女性は正式な雇用契約を結ばずに低賃金で働いてくれる使い勝手の良い存在なのだ。

「話を聞かせていただき、ありがとうございます。ベトナム人留学生を違法に雇っていることを擁護はできませんが……」

 私がそう伝えると、男性は突如、険しい表情になりこう本音を語り始めた。

「ベトナム人留学生に頼る理由の一番は新型コロナだよ。水商売をやっている店はどんどん潰れていっている。緊急事態宣言が出ようものなら、いつ営業できなくなるかわからない。休業の協力金なんて微々たるものだし、振り込まれるのもずっと後。だから、働いて欲しいときに安い給料で働いてくれるベトナム人は、コロナ禍で救世主みたいな存在なんだ。違法なことだけど、追い込まれれば手段は選んでいられない。国から食い扶持を奪われている状態だったんだ。飯が食えなくなったら生きていけないだろうが!」


■「良い男がいたら紹介して」


 ベトナム人留学生たちは、なぜ水商売で働くことを選択するのか。スナックで働くベトナム人女性(22)に話を聞いた。彼女はファッションの専門学校に通う留学生でもある。

「(留学するために)借金をして日本に来た。勉強するためじゃない、日本でお金稼ぐため。週28時間(※)のアルバイトじゃ、お金足りないよ。ベトナムにいる家族、私が働かないと暮らせない。スナックでは日本人からキスされたり、抱き付かれたり、身体触られたりする。嫌だよ。でも、お金のためだから我慢してる。私の時給は1200円。お客さんから、チップをもらったりすることもある。スナックで働きたいベトナム人の友達は沢山いるよ。SNSを使って紹介もする」
※「留学」という在留資格で就労できる上限時間

 アイドル並みの容姿を持つこの女性は、涙ながらに語った。水商売で働く理由に同情はするが、やはり「留学」は建前で、本当の来日目的は出稼ぎだとわかった。しかし、一般のアルバイトでは低賃金で、労働時間も制限されてしまう。水商売で不法労働することは効率の良い金儲けの手段なのだ。

 日本語学校に通いつつ、ガールバーで仕事をするというベトナム人留学生の女性(19)も、「お金のため」と言い切る。

「ベトナムにいたら私は(貧しくて)酷い生活です。お金持ちになる夢見て、日本に来ました。留学生の時だけ、日本にいたいんじゃないです。バーで働くのは、日本人と結婚して日本にいたいから。良い男いたら紹介してください」

 この女性は、「日本人の配偶者等」の在留資格を獲得することが目的のようだ。日本人と結婚すれば、日本での活動内容に制限がなくなる。水商売の仕事は、日本人男性との出会いの場なのだと話す。


■「国もわかっているはず」


 それにしても、違法労働をするベトナム人留学生が溢れているにもかかわらず、なぜ警察は、雇う側も雇われる側も取り締まれないのか。警視庁関係者はこう語った。

「実は警察でもベトナム人に限らず外国人留学生の違法労働に、どう対処するか、はっきり決めることができずにいます。国としては外国人留学生をどんどん受け入れる方向ですが、実体が伴っていない日本語学校も数多くあり、留学生を受け入れている日本語学校、大学、専門学校の中には助成金目的のところもある。こうした体制のまま外国人留学生を来日させたら、違法労働が増加していくのは当たり前です。今の状況は国もわかっているはず。さらに留学生ばかりではなく技能実習生の受け入れにも問題点は多く、違法就労は増えるばかりでしょう。それでも国が対策を採らないので、我々も対応に困っているというのが現状です。

 さすがに目に余るので、今回は立件しましたが、いちいち逮捕していたらキリがない。たとえば、中国人や韓国人、フィリピン、ベトナムなどから来ている留学生の女性を性風俗店で働かせ、性交渉も自由恋愛として容認していたり、マッサージ店では、これらの若い外国人女性に性的サービスをさせていたり……。風俗営業の許可を取らずに飲食店として営業しているスナックもザラで、本格的に取り締まりを強化すれば、いったいどれほどの雇用主、外国人が逮捕されることになるのか見当もつきません」

 外国人に頼らないと雇用が維持できないというのなら、日本は外国人留学生の就労条件を緩和し、日本人の学生と同じように週28時間以上の労働を許可すべきだろう。

真樹哲也
1985年、北関東生まれ。裏社会に入り込んで取材をし、アンダーグラウンド記事を書くことを得意としている。近著『ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団』(彩図社)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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