茨城、山梨、和歌山の地震で嫌な予感 専門家が解説する「南海トラフとの関係」

茨城、山梨、和歌山の地震で嫌な予感 専門家が解説する「南海トラフとの関係」

12月3日に行われた気象庁の会見(気象庁の公式YouTubeチャンネルより)

 たった2日間で震度4以上の地震が“4連発”という事態に、驚きの声が上がっている。特にTwitterでは不安な気持ちを訴える投稿が目立った。

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《大地震と関係あるかは別として異常すぎると思います…怖すぎる》

《この3、4日間で地震が茨城県で発生し、山梨でも発生し、和歌山でも発生し…って いよいよ怖いんだが》

《国は富士山噴火、南海トラフとは関係ないって言ってるけど、3.11の時も想定外だったって言ってたし、こういう地震の情報って信用できないのが多い》

 最初の地震は12月2日の午前1時58分ごろに発生した。震源地は茨城県南部、地震の規模を示すM(マグニチュード)は5・0だった。茨城県筑西市や栃木県鹿沼市で震度4、東京都内などで震度3を観測。「揺れて目が覚めた」という首都圏の人も多かっただろう。

 次は12月3日の午前2時18分ごろに発生した。震源地は山梨県東部・富士五湖で、M4・1。山梨県大月市で震度4、東京都町田市などで震度3を観測した。

 更に同じ震源地で午前2時23分にM3・6、午前6時37分にはM4・9の地震が発生した。午前6時の地震では大月市で震度5弱、神奈川県相模原市などで震度4を観測した。

 同じ3日の午前9時28分には、紀伊水道を震源地とするM5・4の地震が発生した。和歌山県御坊市で震度5弱、有田市や田辺市で震度4を観測した。


■不安の声は当然


 気象庁は「山梨の地震は富士山の火山活動とは関係ない」、「山梨の地震と和歌山の地震は関係がない」と発表したが、不安の声が消えないのはTwitterで見た通りだ。

 日本地震予知学会会長で東海大学客員教授の長尾年恭氏は、「少なからぬ方が依然として不安な気持ちを抱えているのは当然でしょう。科学的な見地からも、単に“素人の杞憂”と片付けていいとは思いません」と言う。

 気象庁が発表したように、茨城、山梨、和歌山の地震は互いに関係なく、富士山の火山活動と無関係なのは間違いないという。

 まずは3県の地震が“偶然”だと科学的に断言できる理由から解説してもらった。

「満潮や干潮といった『海洋潮汐(ちょうせき)』はよく知られていますが、地球自体が月や太陽の引力でたわんでいます。1日に2回、地球の中心から地面までの距離が20〜30センチ増えたり、減ったりします。これを『地球潮汐』と呼びます」

 複数の地震に関連があるかないかを判断する際、この「地球潮汐」が使われるという。

「地震学では発生した地震による地面の歪みと、地球潮汐で自然に起きる影響を比較します。そして『地球潮汐の影響のほうが大きい』ことが科学的に判断できるのです。そのため気象庁は『山梨と和歌山の地震は無関係です』と発表したわけです」(同・長尾教授)


■南海トラフ地震の予兆!?


 山梨県の地震が富士山の火山活動と無関係である理由は、震源地と富士山の距離だという。

「震源地だった大月市は、富士山から約30キロの距離があります。我々専門家にとっては、『地震の規模を考えると遠いので大丈夫』と判断するのに充分な数字です。東日本大震災が起きた2011年3月11日の5日後、15日には静岡県東部地震が発生しました。M6・4、富士宮市で震度6強を観測。震源地は富士山から4キロしか離れていませんでした。地震の速報を聞き『富士山が噴火する』と考えた専門家も少なくなかったのです」(同・長尾教授)

 富士山についてはひとまず安心だとしても、和歌山県の地震と南海トラフ地震の関係については注視が必要だという。

「12月2日に茨城県で発生した地震は、いわゆる“地震の巣”と呼ばれている場所で起きました。実際に地震活動も活発なため、どうしても注目度は低くなります。一方、3日に山梨県で発生した地震も同じ“地震の巣”で起きましたが、近年は観測例が減少していました。再び地震活動が活発になったのか調べる必要があるでしょう」(同・長尾教授)


■地震は増加傾向


 専門家の注目度は「茨城<山梨」というわけだが、更に「山梨<和歌山」という不等号も成立するという。

「和歌山の震源地は、あまり地震が起きていない場所なのです。短期的には『南海トラフ地震とは無関係』という判断に科学的根拠があるにしても、数十年単位の話では『あの地震が南海トラフの予兆だった』と評価が変わる可能性は否定できません。また『小さな地震が大きな地震を誘発する』というケースもあります。専門家は今後、和歌山県の地震状況には注視すると思います」

 長尾教授は、今年10月1日から12月4日までの中部・近畿地方の地震発生数を線グラフにしてみると、12月1日から発生頻度が急増していることが分かったという。

「鍋で水が沸騰しているところを思い浮かべてください。隣り合った2つの泡に直接的な関係はないかもしれません。しかし俯瞰して見れば、鍋の加熱で泡ができたという共通点が見えるはずです。8月には小笠原諸島で海底火山が噴火し、大量の軽石が発生し注目されました。噴火の規模は100年に1度というクラスでした。日本における地震活動が活発化している可能性があり、『立て続けに地震が起きるなんて怖い』という不安の声も、科学的に間違っているとは言えないのです」


■大災害は必ず起きる


「日本全国、どこでも地震は必ず起きる」、「南海トラフ地震と富士山噴火は必ず発生する」──これは無責任な“予言”ではなく、科学的な検知からも現実性が高いという。

「『南海トラフ地震って本当に起こるんですか?』、『富士山は本当に噴火するんですか?』と訊かれることがあります。これは『人間は死ぬんですか?』という質問と同じだと言えるでしょう。3県の地震が直接的に南海トラフ地震や富士山噴火とは無関係だとしても、リスクは厳然として存在します。むしろ不安な気持を積極的に活用し、防災意識を高めてほしいですね」(同・長尾教授)

デイリー新潮編集部

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