税関を悩ます「覚醒剤入り木炭24トン密輸事件」押収量過去最多記録を更新する可能性は?

税関を悩ます「覚醒剤入り木炭24トン密輸事件」押収量過去最多記録を更新する可能性は?

押収された覚醒剤入り木炭

 コロンビアの麻薬王、パブロ・エスコバルの伝記ドラマに出てきそうなスケールの話である。11月25日、警視庁組織犯罪対策5課は、外国人の男性ら5人を麻薬特例法違反(規制薬物としての所持)容疑で逮捕したと発表した(追記・12月14日に5人のうちベトナム人の会社経営者ら2人は、処分保留で釈放された)。彼らが海外から密輸しようとしたのは、覚醒剤が練り込まれた木炭24トン。前例のない手口で、警察と税関は覚醒剤の抽出作業に頭を抱えているという。

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■泳がせ捜査ですり替えられたブツ


 ダンボール2万4000箱に詰められた覚醒剤入り木炭を積んだ船が、トルコの港を出たのは9月のこと。翌月、船は東京都大田区のコンテナ埠頭に到着したが、すぐに東京税関の麻薬検査に引っかかった。

 ここから警視庁と東京税関の連携による「泳がせ捜査」が始まる。ダンボールの中の“ブツ”の中身をすり替え、届け先に運搬されるまで怪しまれないよう見張るのだ。あらかじめ捜査員は、男性らが勤務する会社の作業場周辺に張り込んで着手の瞬間を待つ。偽のブツが届き、彼らが受け取った瞬間に“お縄”となった。

 この時点での逮捕容疑は「麻薬特例法違反」。平たくいうと、“本物のブツだと思って受け取っただろう”という罪だ。


■難航する抽出作業


 麻薬特例法違反は2年以下の懲役にしか問えないが、彼らはこれからみっちり絞られ、次はより重い罪状の「覚醒剤取締法違反」で再逮捕される見通しだ。ただし、同法の中でも最も重い「営利目的所持」や「営利目的輸入」を適用する場合は、覚醒剤の含有量を確定させることが必要。だが、警察も税関も、木炭に染み込ませた”ブツ”を扱うことなど初めてのことなので、抽出作業に悪戦苦闘しているという。

「おそらく薬剤を使って分離させるのでしょうが、ノウハウもないので手探りの作業となると頭を抱えています。通常ならば、そのままつないで再逮捕となるところですが、いったん麻薬特例法違反容疑で起訴し、起訴後勾留したのちに再逮捕か追送検される見通し。『年内は厳しそうだ』と捜査員は話しています」(警視庁担当記者)

 覚醒剤が入っていることは分かっているのであれば、素人目にはそれで十分ではないかとも思うが、

「そうはいかないのです。現状でも単純所持で罪を問うことは可能ですが、営利目的となると一定量が必要。量によって罪の重さが変わってしまうので、正確に抽出しなければなりません」(同前)


■記録更新なるか


 だが、彼らがこだわりたいのは決して罪状だけではないという。“最多記録更新”がかかっているのだ。

「これまでの覚醒剤密輸の押収最多記録は、19年に警視庁が静岡・伊豆の港で摘発した約1トン(末端価格約600億円)。洋上で船から船へと物資を積み換える“瀬取り”で密輸しようとした中国籍の7人が逮捕されました。16年に沖縄の那覇港で停泊中のヨットから押収された約600キロを一気に倍近く超える記録となりました」(税関関係者)

 今回は、元の木炭が24トンもの量だから期待がかかる。4パーセント以上の含有量で記録達成となるのだが、すでにフライングぎみの報道も散見された。

「朝日新聞は、『当局は過去最多となるとみている』と書いていましたね。実際、当初、捜査員たちが沸き立ったのも事実。ただ、その後捜査がある程度進んでからは、『ぎりぎり超えないんじゃないか』という悲観的な見方が強くなっています」(同前)

 最近は、海外で流行している大麻リキッドを紙に染み込ませて郵送する手口も横行しているという。いたちごっこの格闘を続ける税関職員たちには、頭が下がる思いだ。

デイリー新潮編集部

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