コンビニスイーツに見る安すぎる日本の物価 サービス過剰を止めて値上げすべき(中川淳一郎)

コンビニスイーツに見る安すぎる日本の物価 サービス過剰を止めて値上げすべき(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 1ドル=114円に! 過去、79円の時にアメリカ旅行をした際には現地での物価の安さに仰天しましたが、今行ったら高さに仰天するでしょう。ここ数年、私は日本の物価と賃金の安さを問題視し続けてきました。各国の物価の指標を表す「ビッグマック指数」で日本は390円ですが、アメリカ621円、タイ429円です。アメリカはさておき、今や日本はタイよりも物価が安い「世界から買われまくる国」に落ちぶれました。東京の土地は高いものの、500円で海鮮丼が食べられるんですよ!

 そして、土地にしても、私が住む佐賀県唐津の名士からこの前、「この山、所有権を移す諸費用で支払う3千円以上だったら売るよ」なんて言われ「4千円でいいですか!」と聞いたら「いいよ」。まぁ、冗談だと思いますが。

 タイの物価の上昇については2019年末訪れた時にしみじみと感じましたが、最近一緒に壱岐へ旅行に行った会社員時代の同期・Sが日本のヤバさを的確に表す見事な発言をしてくれました。Sは上海支社→東京本社→福岡支社となり、今、唐津に住んでいます。朝食を買うため、コンビニへ行く車内での会話です。

「日本のコンビニ、やべーよ! 100円とか200円であのクオリティーのスイーツが食べられるんだぜ! 中国のスイーツってバタークリームで昭和の日本の洋菓子的。日本人のパティシエがやっているウマい店もあったが、バカ高い! それが日本では100円だぜ! オレ、東京に戻った時、毎日会社の下のセブンイレブンで1つずつ買っていたら太っちゃったよ。しかも、毎月新作が出るからそれを全部買う」

 ここまではほのぼのエピソードでいいのですが、次の言葉がかなりクリティカルヒットでした。

「この安さでこんなに幸せなんだったらあくせく働かないでいいじゃん、なんて思っちゃったよ! だからオレは出世欲もなくなった」

 Sは、グータラ社員として知られる漫画「美味しんぼ」の山岡士郎と「釣りバカ日誌」の浜崎伝助を目指すと明言していますが、まさかのその宣言の裏に「コンビニスイーツが安くてウマい」があったとは!

 本人の名誉のために言っておきます。彼は自由奔放ですが、グータラ社員ではありません。きちんと成果を挙げています。

 さて、ここから読み取れるのは、日本のサービス・商品提供者の過剰なまでの奉仕精神です。どう考えても、日本で買うものは値段の割にクオリティーが高過ぎます。今の日本は「ステルス値上げ」に象徴されるように、本当は苦しいので上げ底の容器で量を減らして値段は変えない。これでは、物価は上がるでしょうが、給料は上がりません。値上げすればいいんですよ。

「安さ」のみを重視したこの約25年間、そろそろ価格上昇を受け入れ、過度なサービスの要求をやめる時です。コンビニバイトにまで敬語を求める必要はない。「袋いる?」とかタメ語でいいんですよ。

 ただ、小室圭さんの家賃が60万円とか80万円とか言われているアメリカ、ビールが安いんだよな〜。355ミリリットル24本入りケースで1本あたり90円とか。そこは呑兵衛の私には羨ましい!

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2021年12月9日号 掲載

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