夫の白骨遺体を井戸に隠した「年金不正受給」妻の凄絶人生 障害を抱える息子を養育しながら一人で生活費を工面

夫の白骨遺体を井戸に隠した「年金不正受給」妻の凄絶人生 障害を抱える息子を養育しながら一人で生活費を工面

遺体が発見された家

 齢を重ねれば、いずれどちらかを看取ることになるのは夫婦の宿命だが、夫の遺体を井戸に放置した妻の心境はどうだったか。少なくともこの10年間、夫の年金が支給されていたことから、事件を扱う新聞記事は「年金不正受給」だと短く報じるだけだが、彼女をそうまでさせた心の深層へ降りてみると……。

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 12月1日、徳島県警は年金を不正に受け取った詐欺容疑で山田民子容疑者(73)を逮捕した。先月、徳島県藍住町にある山田容疑者の自宅から男性の遺体が発見されたが、県警は一つ年上の夫、啓夫(よしお)さんだと特定できたことで、彼女が死亡届を出さずに月7万円ほどの夫の年金をだまし取っていたとして逮捕したのだ。死体遺棄にかかわった可能性もあり、今後も捜査を続けるという。

 改めて所轄の徳島板野署に事件の概要を尋ねると、

「町役場から“この5年間、啓夫さんが病院を受診した記録がなく、職員が訪問をしても奥さんが会わせてくれない”という通報がありましてね。安否確認のため、捜査員が山田容疑者の自宅敷地内を調べたところ、水のたまった深さ5メートルほどの井戸の底に、白骨化した遺体が沈んでいるのを発見しました」

 機動隊員が網ですくい回収したが、頭蓋骨などの骨は原形をとどめないほどバラバラになり、DNA鑑定でようやく身元を割り出すに至ったそうだ。遺体の状態から啓夫さんは死後数年が経っているものとみられ、死因の特定は困難をきわめるが、山田容疑者は夫が亡くなっていたことについての認識はハッキリ持っているという。

 亡くなった啓夫さんの曾祖父は村長を務めていたほどの名士で、山田家は戦前から続く大地主だった。実際、規制線の張られた現場の家は、立派な屋敷門がそびえ立ち、高い石垣と漆喰の外壁に囲まれている。

「武家屋敷みたいに立派な壁だけど、これは10年くらい前に民子さんが古くなったブロック塀を壊して作り直したものだよ」

 と明かすのは、近隣に住む60代の男性だ。

「ちょうどその辺りだよな。彼女は町内の清掃活動だとかに一切顔を出さなくなって、旦那さんの姿も見かけなくなった。高い塀で周囲を遠ざけ、夫が亡くなったことを隠そうとしていたのかもしれないね」


■「気の強い女性」


 およそ40年前、他所から見合いでこの家に嫁いできた山田容疑者は、昔から近所づきあいを好むタイプではなかったとして、先の男性はこう振り返る。

「結婚した当初、民子さんは“だまされた”と周囲に愚痴っていてね。亡くなった旦那さんは知的障害があって満足に働ける状態ではなく、同居していた姑ともうまくいっていなかった。結婚してすぐ生まれた一人息子も、重度の障害を抱えて苦労が絶えない様子だったから……」

 現在40代という一人息子は、全裸で外を歩き回る癖を持ち、スーパーや女性のいる家に侵入して警察が出動する騒ぎになることも度々あったようだ。

 別の近隣住民によれば、

「お巡りさんから“息子さんを施設に入れては”と提案されたけど、民子さんは“うちの子じゃ。ほっといてくれ”とすごい剣幕で食ってかかっていた。男みたいな口調で喋る気の強い女性で、町の住民が訪ねても“ウチは阿呆が2人いるから近所づきあいはできん”と怒鳴っていた」

 孤独を深めていく一方で、同居していた義理の両親を20年ほど前に亡くしてから、暮らしの負担が増えていった様子も窺(うかが)える。

「遺された広大な畑や果樹園を実質的に民子さん一人で切り盛りしなくちゃならなくなった。梨の栽培は結構な収入になるけど、消毒作業など人手がかかるからできなくなってね。一つ何十円かにしかならない大根とか白菜とかの野菜を軽トラに積んで、徳島の日曜市で売って生計を立てていた。場所代も取られるから大した儲けにはならんでしょ。それでも生活費を稼ぐため、毎日モンペ姿になって朝から日が暮れるまで野良仕事をしていた。そこまでしても食べていけず、土地も少しずつ切り売りしていたようだね」(同)

 一人息子の様子をしきりに心配する山田容疑者は、病院にいると警察から聞かされると、安堵の表情を浮かべていたという。

「週刊新潮」2021年12月16日号 掲載

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