「家族の気持ちをわかることで国民の気持ちもわかる」 上皇陛下の「本心」があらわれたおことば集

 2021年は過去にもまして皇室に関連するニュースが多く伝えられた年だった。小室圭さん、眞子さんの結婚関連のニュースが多かったこともあり、残念ながら前向きな話題ばかりとはいいづらいのだが、それもまた国民が皇室にこれまで抱いていたポジティブなイメージがあってこそ、ともいえるだろう。信頼、期待、尊敬の裏返しである。

 朝日新聞の世論調査では昭和40〜50年代には皇室に「親しみを持たない」が「持つ」を上回る時期もあったものの、昭和末期以降は「持つ」が増え続け、平成になってもその傾向は続いている。

 背景には、平成の天皇陛下(現・上皇陛下)ご夫妻が示してきた姿勢が大きく影響しているのは間違いない。

 時には被災地に自ら赴き、被災者の前で跪いてまでおことばをかけられる。そんなお姿に感動し、勇気づけられた国民も多くいることだろう。

 産経新聞記者の山本雅人氏が宮内記者会の経験をもとに著した『天皇陛下の本心 25万字の「おことば」を読む』は、タイトル通り、天皇陛下の「おことば」から真意を読み取ろうという試みである。結果として、平成の天皇陛下の名言集という趣の一冊となっている。

 同書から、印象的な「おことば」をピックアップしてみよう。そこには本来、国民が皇室に抱いていたイメージ通りの天皇陛下の「心」が語られている――。

■「国民に親しまれる皇室」にするためにどうすべきか、との問いに対して――(皇太子時代)


――国民に親しまれる皇室ということは私はいった記憶がないんですけれども。ただ国民とともに歩む皇室でなければならないと。(中略)国民の苦労はともに味わうということを昔の天皇はしていらしたわけです。そういう意味で、国民とともに歩むという意味で私は使ったと思います。(昭和57〔1982〕年12月17日、49歳のお誕生日会見)

 この言葉について、山本氏は次のような解説を加えている。

「『国民とともに』ということは『国民に親しまれる』とは違う。国民の苦労をともに味わう、国民の悲しい折にはともに悲しむ、という深い内面の部分が大切であることを伝えられているのである」

■好きな言葉について(同じく皇太子時代)


――好きな言葉に「忠恕」があります。論語の一節に「夫子(ふうし/筆者注・先生=孔子のこと)の道は忠恕のみ」とあります。自己の良心に忠実で、人の心を自分のことのように思いやる精神です。この精神は一人一人にとって非常に大切であり、さらに日本国にとっても忠恕の生き方が大切ではないかと感じています。(昭和58〔1983〕年12月20日、50歳のお誕生日会見)

 今年の皇室の話題の中心には常に「結婚」「親子」「家族」といったキーワードがあったわけだが、ご自身の結婚観などについて語ったお言葉もある。

■結婚について――


――(結婚25周年を前にして)この25年間を振り返ると、やはり絶対にそれまで味わえなかった心の安らぎを得られたと思います。(中略)それまで一人でしたから、心の安らぎというか安定はありませんでした。(皇太子時代の昭和58〔1983〕年12月20日、50歳のお誕生日会見)

――(還暦に際し最も印象に残っていることは)私自身のことに関しましては、結婚が挙げられます。温かみのある日々の生活により、幸せを得たばかりでなく、結婚を通して自分を高めたように感じています。(平成5〔1993〕年12月20日、60歳のお誕生日会見)

――私自身にとり、深い喜びをもたらしてくれたものは皇后との結婚でした。どのようなときにも私の立場と務めを大切にし、優しく寄り添ってきてくれたことは心の安らぐことであり、感謝しています。(平成15〔2003〕年12月18日、70歳のお誕生日会見)

――天皇という立場にあることは、孤独とも思えるものですが、私は結婚により、私が大切にしたいと思うものをともに大切に思ってくれる伴侶を得ました。皇后が常に私の立場を尊重しつつ寄り添ってくれたことに安らぎを覚え、これまで天皇の役割を果たそうと努力できたことを幸せだったと思っています。(平成25〔2013〕年12月18日、80歳のお誕生日会見)


■親子、家族について――


――皇族の場合、親を理解することは、とくに大切だと思っています。皇族が成人して、皇族のつとめを果たしていく時、親と苦楽をともにしてきた経験は、さまざまな面で生きていくのではないかと思っています。私自身、葉山などで陛下(筆者注・昭和天皇)とご一緒に過ごした時に学んだことは大変多かったと思っています。(陛下が皇太子時代の昭和59〔1984〕年4月6日、ご結婚25年会見)

――私にとって家庭は心の平安を覚える場であり、務めを果たすための新たな力を与えてくれる場でありました。また、実際に家族と生活を共にすることによって、幾らかでも人々やその家族に対する理解を深めることができたと思います。(平成11〔1999〕年、66歳のお誕生日に際しての文書回答)

――家庭作りについては、孟子の中に「国のもとは家にあり」という言葉がありますけれども、家族という身近なものの気持ちを十分に理解することによって、はじめて遠いところにある国民の気持ちを実感して理解できるのではないかと思っています。(皇太子時代の昭和59〔1984〕年4月6日、ご結婚25年に際しての記者会見)

 2022年こそ、皇室の話題がポジティブなものばかりになることを願っている国民は多いだろう。

デイリー新潮編集部

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