日大のドンは「脱税」のみで捜査終結 私大ガバナンス改革に抵抗する人の正体

日本大学前理事長・田中英寿被告は脱税のみで『逃げ切り』も 日大の体質もそのままか

記事まとめ

  • 日本大学前理事長・田中英寿被告は脱税での起訴に留まり、捜査はこれで終結するという
  • 散々、金銭疑惑がかけられてきた田中被告からすれば、『逃げ切った』ということらしい
  • 日本大学も、学校法人の制度の問題で、第二第三の田中被告が出てくる仕組みだという

日大のドンは「脱税」のみで捜査終結 私大ガバナンス改革に抵抗する人の正体

日大のドンは「脱税」のみで捜査終結 私大ガバナンス改革に抵抗する人の正体

「脱税」での起訴にとどまった田中英寿被告

■田中被告は「逃げ切った」か


 日本大学の病院建て替えを巡る金銭授受事件は、理事だった井ノ口忠男被告が背任で起訴された一方、理事長だった田中英寿被告は「脱税」での起訴にとどまり、捜査はこれで終結する見込みだ。

 日大から業務を受注する業者から「お祝い」などの名目で多額の金銭を受け取っていても、理事長としての「職権濫用」の責任は問われず、所得を申告していなかったという罪だけが問われるという幕引きになりそうだ。日大は田中被告との「永久決別」を宣言しているが、逆にいえば、この事件は田中被告「個人の問題」だと言っているに等しい。これで日大の体質は変わるのか。

「背任事件は組織に損失を与える明確な意図があったことを明らかにしなければならず、立件が難しいのは確かです」と語るのは、大手新聞のベテラン司法記者だ。

特捜部はとにかく田中を有罪にすることを優先して、背任には目をつぶる代わりに本人に脱税を認めさせたのでしょう。よくあるバーターですが、これまで理事長として権勢を振るい、散々、金銭疑惑がかけられてきた田中からすれば、『逃げ切った』ということではないでしょうか」

 捜査関係者から「疑惑のデパート」と呼ばれた田中被告の「本丸」に迫ることができなかったのだ。

「任意の聴取の段階で田中は『俺を逮捕すれば、カネの配り先をすべて暴露する』とうそぶいたと報じられていましたが、背任事件としてカネの流れを追及していけば政治家や官僚などの名前も出てくる可能性があったと見られています。検察が脱税のみで幕引きしたのをみると、田中被告の恫喝が効いたということかもしれません」


■第二第三の田中被告


 もっとも、井ノ口被告が、理事長の「威を借りて」勝手に金銭を受け取っていたという話を世の中は信じるのだろうか。別の私立大学の事務局長は言う。

「大学など学校法人は理事長ひとりに権限が集中する制度になっています。いくら腹心が権限を握っても、理事長が知らないところで工事発注などを決めることは、まず無理でしょう。理事長が事細かに指示していなくても、理事は逐次、報告していたと思います。井ノ口被告が勝手に行うのはどう考えてもありえません」

 絶対的な権限は田中被告にあったはずだ。問題は田中被告という個人もさることながら、大学の仕組みにあるという。事務局長氏が続ける。

「圧倒的な権限を握る理事長が暴走を始めた時、それに歯止めをかけられる仕組みがないのが今の学校法人なんです。例えば公益財団法人などでは、評議員会が理事の選解任権を持っています。ところが学校法人の評議員会は理事会の『諮問機関』という位置付けで、意見を聞けば良い。しかも、評議員には理事が兼務して加わることもできますし、幹部職員が入ることもできます。評議員会は会社で言えば、『シャンシャン総会(質疑応答や議論などがなく、形式的に短時間で終了する総会)』みたいなもので、何の歯止めもかけられません。田中前理事長と決別したとしても、第二第三の田中被告が出てくる仕組みです。特に理事長独裁のカルチャーが染み込んでいる日大は、そう簡単には変われないのではないでしょうか」


■記者クラブに伝えない条件


 そんな学校法人理事長のやりたい放題に歯止めをかけるべく、昨年7月、「学校法人ガバナンス改革会議」が設けられ、制度改革が議論されてきた。しかし、ガバナンス会議が12月3日に報告書をまとめ、評議員会の位置付けを財団法人や社会福祉法人と同等の議決機関にするよう求める提言をしたが、学校法人経営者が猛反発している。取材を続けてきたジャーナリストが語る。

「提言を受けて法案作成に着手することが閣議決定されていたのですが、文科省は改革会議とは別に会議を作って再度議論することになりました。提言が気に入らないからと、もう一度やるというのは前代未聞です。提言内容に反対する一部の私学経営者が自民党の『文教族』に働きかけ、文科省も提言を無視することにしたようです。そもそも大臣に提言を手交する日程も取らず、改革会議の座長がねじ込んで、ようやく実現したのが10日後の13日。しかも当初は記者クラブにも伝えず、座長がひとりで来るよう条件をつけたとか。公式な提言として扱いたくなかったのでしょう」

 いったい誰が反対しているのか。

「私立学校の理事長の半分以上は創立者一族だと言われています。創立一族は学校を自分の財産だと思っていますから、理事長職を得ることで全権を掌握できる今の制度が好都合なのです。国から多額の補助金をもらっていたり、キャンパスの固定資産税が減免されていたりするだけではなく、理事長を代々受け継げば、相続税もかからずに財産を実質的に守っていけますからね。表に出て反対しているのは学者出身や天下りの理事長たちですが、本当に抵抗しているのは創立一族たちです。自民党の大物議員にも創立一族がいますが、裏で後輩の文科大臣に圧力をかけているともっぱらの噂です」

 税制上の恩典や多額の助成金は国民が負担している。「日本は大学への助成金が少ない」と不満を繰り返す一方で、当たり前のガバナンス体制の整備には抵抗する大学は、どこまでも「特別扱いされて当然の存在」だと思っているようだ。

デイリー新潮編集部

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