レースクイーンから「ギャラ飲み」斡旋業に… 貯金2000万円のアラサー女が口にした“不安”

レースクイーンから「ギャラ飲み」斡旋業に… 貯金2000万円のアラサー女が口にした“不安”

インタビューに答える珠緒(仮名)さん

 夜の世界に生きる人々を記事にする際には、人脈を頼って取材相手を探す。だが、珠緒(仮名)は自ら〈私、取材受けたいです!芸能人です〉と接触してきた珍しいケースだった。身長170センチのモデル体型で、現在28歳。話を聞いていると、実態は「ギャラ飲み派遣」で生活をしている女性だった。【酒井あゆみ/ノンフィクション作家】

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 コロナの時期、飲食店は一斉に営業自粛を強いられた。表立っての夜遊びも憚られていたわけだが、その間、ひっそりと「ギャラ飲み」「パパ活」が盛り上がりを見せていた。たとえ酒を提供する場などが開いていなくても、闇営業中の飲食店やマンションの一室、あるいはホテルで、人目を忍んで遊ぶことができたからだ。

 緊急事態宣言下でもギャラ飲みが活況だったことは、デイリー新潮の記事「緊急事態宣言は完全無視…コロナ禍でギャラ飲みに励む『港区女子』の呆れた実態」(21年3月12日)でも触れた。ギャラ飲みやパパ活相手の募集は、もっぱら専用のグループLINEを通じて行われている。今から来られる子、と声をかけ、それに女性たちが手を挙げる方法だ。

 今回、取材場所に現れた珠緒は「私はLINEグループで募集はあんまりしないんです」というものの、依頼の斡旋を行い、その仲介料で暮らしている。

「知り合いのお客さんから『来られる子いない?』と聞かれて、自分の知っている女の子たちに直接案件をふっています。男性側からギャラ、たとえば2時間いっしょに飲んで10万円をもらったとしたら、私は手数料として3万円をもらい、残りの7万円のギャラ、を“エントリー”してくれた女の子に渡しています。私みたいなことをやっている女性も何人か知っていますが、3対7の取り分はかなり良心的なほうだと思いますよ」

 まさに女女衒である。LINEの「友だちリスト」を見せてもらったところ、およそ1500人が登録してあった。うち半分が案件を振る女性だというが、安定して仕事をふる“主力”メンバーは5〜60人ほどだそうだ。スケジュールカレンダーには、だいたい1日3〜4件の案件が入っている。

 基本的には女性の派遣だけで、珠緒自身は現場には行かない場合が多いそうだ。先に触れたLINEグループを使って募集をかけた場合、不特定多数の女性たちが手を挙げるため、募集をかけた本人とは面識のない女性も参加することになる(事前に写メを送っての“審査”があるのが一般的だが)。その点、珠緒は、自分の抱える女の子全員と面談を済ませているという。不思議な職業意識の高さが見て取れる。

「以前、知り合いでない女の子を派遣したら、お客さんからめっちゃ怒られたことがあって。写真と全く違う女が来た、ってクレームだったんです。その時は私も参加したギャラ飲みでしたが、確かに実物は写真の2倍以上太ってて、顔もまったく別人。写真修正アプリって今は凄いから。でも、本人は自分だって言い張るし。確かに元はそうなのかもしれませんが……。それからは、案件を振る前に、必ず女の子と会う事にしたんです」

 ただし、免許証などを見せてもらっての身元確認をきちんとしているのかと問うと、そこまではしていないというから抜けている。実は未成年だったらどうするのだ、今は小学生も化粧する時代だよ、と問うと、

「私も小学生の頃から化粧してましたしね…」

 と、とんちんかんな返事が返ってくる。


■「私、人材派遣業の資格とか持ってないし」


 珠緒のこうした“ズレた”感覚は、取材を通してずっとあった。「平均では、お茶飲みかギャラ飯でしたら1万円くらい。お酒を飲むんだったら1時間2万円ですね」とか「一番アツかった案件は1時間ぐらいで100万円もらえました。男性陣はアジア系のギャンブル系、クスリ系の仕事してる人たちで、脱いだり触られたりも一切なく」と、自分の仕事について嬉々として語ったかと思えば、突然、

「こんなこと話しちゃって法律に触れないですかね。私、人材派遣業の資格とか持ってないし。捕まっちゃうんですかね……。でも、オトナ(肉体関係を結ぶことを指す隠語)する子は、その子の自由で会って、強制はしてない。それに最初からそういう条件だというのを正直に提示していますから、大丈夫ですよね」

 と真顔で言いだす。資格うんぬんの問題ではないのだが……。ちなみに彼女自身は、ギャラ飲みには参加しても、パパ活はNGだそうだ。

「私は潔癖症なので、そういうのは。オトナは若くてイケメンでお金持ってて優しい人に10万円でした経験の一度きりです。そこまでしなくても、仲介やギャラ飲みで一日10万円くらいは入ってきますし。もちろん、何にも無いときは0ですけど、平均すれば月々100万円は稼いでいますね」


■自称“芸能の仕事”


 もっぱら自身のもつ人脈で仕事をこなしているという珠緒。それは、彼女のいう「芸能人」の仕事を通じて培われたものらしい。

 地方の都市で生まれ育った彼女は、地元の専門学校を卒業して、一般企業に就職。だが「ずっと座ってるのが辛くて」すぐに辞めた。厳しい実家から出て一人暮らしをしたかったこともあり、いまから5年ほど前に上京した。専門学校時代に取っていた資格を活かし、東京でも就職先はすんなりと決まった。と同時に、副業で働いていたキャバクラで「モデルにならないか」と客から誘われた。それが、レースクイーンの仕事だった。

「鈴鹿(サーキット)や(大分県の)オートポリスまで遠征して、1日に5万円をもらっていました。私はいわゆるフリー、直(ちょく)の営業だったのでかなりいい方です。事務所に入っている子だと、中抜きされて、日給7000円の子もいましたね」

 芸能人というのはつまり、レースクイーンということかと質すと「雑誌の仕事もしていました。普通に」と言い張る。だがよくよく聞けば、実際はレースクイーンをしている時の写真がマニア向けの写真雑誌に載っただけだった。しかもコロナ禍もあってか、最近は“芸能の仕事”はあまりしていないという。就職した会社も今は辞め、もっぱらギャラ飲み斡旋の仕事で生活をしているようだ。

 こうした経歴があるから、案件をふる女の子は、レースクイーンの同僚や仕事を通じて知り合った子が多いという。男性側はキャバクラ時代についたお客さんや、その紹介。案件を持ち込む側もふられる側も、信頼関係がなければ彼女に頼まないから、これもひとつの彼女の才能なのかもしれない。街を歩いていたときに「ギャラ飲みの仕事に興味ありませんか?」とスカウトされたこともあるというから、なにか人を惹きつける魅力はあるのだろう(声をかけてきた相手とはその場でLINEを交換し、今は自分の客にしているそうだ)。


■憧れの芸能人とギャラ飲みしたが…


 ギャラ飲みで会った中には芸能人もいるといい、一番の大物は?と聞くと、あるジャニーズグループのメンバーがいる席に呼ばれた時の話をしてくれた。

 いわく、小学校の頃からグループのコンサートに通っていたファンだったそう。憧れ続けて10数年の本人が目の前におり、しかも「会場は貸し切りのカラオケ付き飲食店だったんですけど、いつの間にか彼と別室で二人きりになっていたんです」という絶好のシチュエーション。もちろん、ギャラ抜きでお持ち帰りされるのも辞さない相手だった。

 だがいよいよ、という瞬間に、

「もうその時、私はベロベロに酔っ払ってて。緊張しすぎてワインがぶ飲みしちゃってたんです。吐き気が限界で。でも床に吐くのはお店に申し訳ないと思って、テーブルに置いてあった空のグラスに吐いたんです。それでドン引きされて……『もうやめとこうか』といわれて、それっきりでした」

 実物はどうだったのか?

「肌荒れがすごくて、思ったより背が小さかったですね」


■貯金は2000万円でも口にした不安


 現在、珠緒は「財布を持ち歩いていない」生活を送っているそうだ。

「PASMOをスマホに入れてありますしね。昼も夜もご飯はギャラ飯で済ませます。洋服も、“買い物案件”っていうのがあって、渋谷の109なんかに一緒に行って、服を買ってもらう。ギャラ自体は5000円くらいで安いんですけれど、3万円くらいの服代が浮きますから大歓迎。美容院やエステは、無料モニター募集がギャラ飲みのグループLINEでいつも出回っているし。ホント、お金使うところがないんです」

 30歳を前にして、貯金は2000万円あるそうだ。一方で、こんな将来への不安も口にする。

「最近、彼氏と別れたんです。友人の紹介で知り合って、2年ぐらいは付き合いましたかね。普通の会社員ですよ。もちろんギャラ飲みの仕事は内緒にしていました。別れたのは、彼と金銭感覚があわなかったからです。レストランとかに連れて行ってもらっても、ギャラ飯で連れて行ってもらうような良いお店と違って。口には出しませんでしたが『ショボい』と思っちゃったんですよね。誕生日のプレゼントも……グッチのペンダントでした。わたし、結婚できるんですかね」

 なにより“一緒に飯を食べているのにギャラが出ない”男との付き合いに違和感を覚えていた、というから問題は根深い。風俗で働いていた経験のある私も、その感覚はよく分かる。恋人と過ごしているときも「これが仕事だったらお金になるのに」と考えてしまうのだ。彼女も「売る女」の思考になりつつある。しかし、そう生きるほどの覚悟が感じられない。

「いつまで今の仕事をやるか、ですか? 多分、35歳ぐらいまでですかね。あと10年ぐらいは……。でも、最近知り合って案件をふるようになった40代の人、めちゃくちゃ綺麗でしたから。お客さんの大半は『20代の子』っていうリクエストが多いですが、最後は年齢よりも見た目が重視ですしね。もうちょっとギャラ飲みで暮らしていけるかな……でもそろそろ、投資とか考えた方が良いんですかね。みんな仮想通貨とか株をやってるので。どうなんでしょう?」

酒井あゆみ(さかい・あゆみ)
福島県生まれ。上京後、18歳で夜の世界に入り、様々な業種を経験。23歳で引退し、作家に。近著に『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち』ほか、主な著作に『売る男、買う女』『東電OL禁断の25時』など。Twitter: @muchiuna

デイリー新潮編集部

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