システム障害8回「みずほ銀行」がグダグダすぎてメガバンクから脱落する日

システム障害8回「みずほ銀行」がグダグダすぎてメガバンクから脱落する日

2021年11月26日、引責辞任の意向を表明する会見に臨むみずほFGの坂井社長(左)とみずほ銀行の藤原頭取

■10年ごとの危機


 2021年、金融業界で最も大きな話題になったのは、みずほ銀行のシステム障害問題だろう。年末にも人為的なミスとはいえ、他銀行に振り込みができない不具合が発生し、またかとため息をついた方も多いに違いない。同行では2月以降、計8回のシステム障害が連発し、11月に金融庁から業務改善命令、財務省から外為法に基づく是正措置命令を受けた。

 みずほは第一勧業、富士、日本興業の3行が統合し発足した2002年4月と、東日本大震災直後の11年3月にも大規模システム障害を引き起こしており、ほぼ10年ごとに自ら危機を招いてきたことになる。大手新聞社の経済記者がこう解説する。

「金融庁幹部は『みずほは過去のシステム障害から何も学んでいない。経営陣の独善や暴走を防ぐようなガバナンス(企業統治)体制が甘い。組織内の情報共有がグダグダだ』と激怒しています。システム障害の背景にあるのは、“風通しの悪さ”。上司や他の部署への報告をためらうような雰囲気があるんです。組織のカルチャーが変わらなければ、今年もさまざまなトラブルが起きかねません。そうなれば、日本の3メガバンクから、みずほ銀行が脱落する日が来る可能性は高く、今年が正念場になりそうです」


■「ネットのニュースで初めて知った」


 昨年、最初のシステム障害が表面化したのは2月28日だった。みずほはシステムに負荷が掛かりやすい月末にデータ移行作業を実施しており、そのトラブルで全国の現金自動預け払い機(ATM)の8割に当たる約4300台が一時的に停止してしまった。キャッシュカードや通帳を吸い込むトラブルが多発し、コールセンターの電話がパンクしたという。にもかかわらず、藤原弘治頭取は行内からの報告ではなく、「インターネットのニュースでトラブルを初めて知った」とのんきなもので、お粗末な情報管理体制があらわになった。

 3月には通信ネットワークのハード面の故障によるATM停止、外貨建て決済システムの停止など、さらに3件のトラブルが発生。みずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長とみずほ銀行の藤原頭取は続けざまに会見で釈明を求められた。ある大手銀行の幹部は、「トップが何度も会見をせざるを得ない状況は、銀行としては最悪の事態」と語っていた。

 金融庁は春にはシステム障害の背景に経営体制の問題があるとみて、システム専門家と金融経営に詳しい検査官らのチームをみずほとFGに派遣し、トラブルの原因究明に乗り出した。ある霞が関官庁の官僚は、「金融庁は当初、8月にはめどを付けて検査チームを引き揚げさせ、みずほとFGに業務改善命令を出す方向でした」と話す。

「ところが、金融庁が検査を始めたところ“病巣”は想像以上に深く、検査チームの担当者たちは『みずほのトラブルの背景には構造的な問題がある』と判断せざるを得なくなりました。結果的に、担当者らは『システムではなく、組織の意思決定に問題があるに違いない』と、みずほとFGに徹底的な調査を求めたようで、予定よりも検査が長引きました。そのさなか、8月20日に店舗で入出金ができなくなるという同年5度目のシステム障害が発生してしまいました」


■風通しの悪さまで指摘


 その後も、システム障害は続出。金融庁は9月22日、システムの更新や更改がさらなる障害の連鎖を招きかねないと判断し、みずほとFGに店舗システムからスマートフォンのアプリまでありとあらゆる更新・更改を報告するよう業務改善命令を発動した。

 大手新聞社の担当デスクは、「この命令で、みずほは金融庁にお伺いを立て、許可がないと何もできなくなりました。実質的に更新手続きを管理する措置とも言えます」と語る。だが、金融庁が強権を発動したにもかかわらず、みずほ銀行では命令の1週間後の9月30日に、外国為替送金ができない状態となった「8度目のトラブル」が発生した。

「金融庁がシステム更新を厳しく監視する中、『9度目のトラブル』は幸い起きず、同庁は11月中旬に検査を終了しました。金融庁は検査の内容を踏まえ、11月26日に最終的な業務改善命令を発動し、『短期間に複数のシステム障害を発生させ、個人・法人の顧客に重大な影響を及ぼした』と、命令で経営陣の責任を厳しく問いただしたのです。また、『(経営陣から現場の中堅幹部、IT担当者まで)言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない』と、みずほ、FGの企業統治での風通しの悪さをずばり指摘しました」(同)

 大手銀行幹部も、「行政処分で社内の組織性まで指摘するような表現を用いるのは極めて異例です。過去の経験から何も学ばないみずほへの金融庁のいらだちが明確に表れています」と驚く。


■「外為法で是正命令」は金融史の汚名


 さらに、この金融庁の検査では、みずほが昨年9月に発生した外為取引トラブルへの対応で、法令違反を犯していたことも発覚した。みずほは外為取引での海外送金の遅延を避けるため、外為法上不可欠なマネーロンダリング(資金洗浄)の事前確認を省いて送金を実施していたのだ。

「金融庁の報告を受け、財務省は11月26日、外為法に基づく是正措置命令を発出しました。銀行が外為法で是正命令を受けるのは、1998年の改正外為法施行後初めてです。金融史に汚名を残すことになってしまいました」(大手新聞経済記者)

 この金融庁の処分を受け、FGの坂井社長、みずほの藤原頭取は22年4月1日付で辞任すると発表した。FG内の主導権争いで「暗躍した」(金融関係者)とされる佐藤康博FG会長の退任も決まった。藤原頭取の後任には加藤勝彦副頭取が就くことがすでに決まり、社長の後任も指名委員会が選定を急いでいる。新経営陣の最大の課題が「失われた信頼の回復」であることは間違いない。

 というのも、ATMなどのシステム障害が起きたことで、個人顧客の間では「怖くてみずほを使いたくはなくなった」「スマホアプリも使いにくい」といった不安や不満が高まり、若者を中心に利便性が高いインターネット銀行などへのシフトが進みつつある。みずほ側でも、FGの坂井社長は昨年11月の中間決算発表で、「口座解約が多少は増加している」と明かしている。

 さらに法人の顧客からも「これからもシステム障害が続くようであれば、取引を見直さざるを得ない」(中堅メーカー)、「みずほの社風が変わらなければ、問題を起こしていない他のメガバンクとの取引を増やすよう株主から提案を受けかねない」(東証上場企業)といった声も出ている。金融機関の競争が激化する中、個人、法人の顧客離れが進めば致命的な打撃になるだろう。


■新生銀行との統合構想


 M&Aを手掛ける外資系投資銀行の金融担当者は、「今年が正念場」と話す。

「みずほの収益性やシステムの安定性は他の2メガバンクと比べて明らかに見劣りしています。システム障害が発生する前から『あと10年もしたら、みずほは3メガバンクから脱落する』と言われていましたが、昨年のシステム障害によって、脱落する時期が早まることになるでしょう。

 実際、金融機関の間では、みずほのシステム障害が再び問題になった昨夏、法人部門(旧みずほコーポレート銀行部門)と個人顧客部門を分離させ、前者の法人部門を新生銀行に、個人顧客部門をりそな銀行にそれぞれ統合させる案が取り沙汰されていました。『金融庁も黙認した』と報道する夕刊紙やネットメディアも現れ、根も葉もない話ではないなと思っていたんです」

 こうした「新生銀行とみずほ銀行の統合構想」をめぐる憶測は、新たな金融の中核を目指すSBIホールディングスが昨年9月、新生銀行の事実上の買収に名乗りを上げたことで「絵に描いた餅」となった。だが、あるメガバンクの関係者は「何らかの検討がされていたことは間違いない」と語る。

 ただ、M&A関係者らがどれほどみずほ再編を仕掛けようとも、実はFGの業績は他のメガバンクグループと大きな差が生じていない。新型コロナウイルス感染拡大で中小企業の業績悪化が見込まれたため、政府は無利子・無担保融資による財政支援を実施した。それが結果的にメガバンクなどの「融資焦げ付き」に備えて準備しておく引当金を減らしており、みずほFGの決算でもその効果が出ているからだ。


■未だに出身銀行意識


 このことがみずほの緊張感をそいでいるのは間違いない。同行の中堅職員はため息をつく。

「21年4〜9月期の連結業績が他のメガバンク同様に堅調だったことで、経営陣や行内には一種の安心感が生まれてしまいました。真剣に改革に向けた経営トップを選ばないといけないのに、未だに役員や幹部は派閥争いを繰り広げています。第一勧業、富士、日本興業の3行が統合してから、20年近くが経つのに、派閥の根底には未だに出身銀行意識があり、『あの役員は興銀、あの幹部は第一勧業』といった色分けが出世や人間関係に色濃く影響しているのです」

 一方、金融界ではインターネットサービスの発展や地域経済の疲弊、日銀の超低金利政策によって地方銀行を中心に事業モデルの見直しが迫られつつある。

「SBIが昨年末に新生銀行を事実上傘下に収め、動きを活性化させています。みずほと違って金融システムの構築、投資商品の開発にも力を入れており、2030年代にはみずほに取って代わるメガバンクのような存在になるのではと言われています」(メガバンク幹部)

 昨夏に取り沙汰された「みずほ分割案」は幻に終わったとはいえ、みずほ銀行のガバナンスが改善しなければ、別の形でのみずほ再編、分割の話が盛り上がる可能性は高い。

「新興勢力が競争力を増し、ゲームのルールを変えようとしています。みずほ、FGが自主的に動き、ガバナンスを改善していけなければ、3メガバンクから脱落してもおかしくはないでしょう」(金融庁関係者)

デイリー新潮編集部

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