「地面師の女」検事調書が暗示する「積水ハウス」の罪と罰 「怪しい契約」が結ばれるまで

「地面師の女」検事調書が暗示する「積水ハウス」の罪と罰 「怪しい契約」が結ばれるまで

「海喜舘」解体後

■改印手続き


「生保レディ」だった羽毛田正美(当時64)が偽造パスポートを手に入れ、「地面師の女」へと姿を変えた。「週刊新潮」2019年6月20日号「MONEY」欄に続き、「海喜舘(うみきかん)」の女将になりすました羽毛田の検事調書によって事件の内幕を明らかにしていこう。

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 地面師グループが偽造パスポートの次に手掛けたのは、海喜舘の女将、海老澤佐妃子さん(享年72)の「印鑑」。17年1月、なりすましのスカウト役とともに羽毛田が足を運んだ先は品川区役所だった。偽造パスポートを身分証明書にして改印手続きを行ったうえで印鑑証明書の交付を受けた。なりすましの準備が整い、いよいよ「積水ハウス」が登場する。

〈(4月20日、新宿の)セキスイハウスの入っているビルに着くと、私と(交渉役の)小山さん(フィリピン逃亡後に逮捕されたカミンスカス操)だけがビルに入りました〉

 ここで羽毛田は積水ハウスの担当者と初めて対面。調書には、同席した地面師グループの面々の様子や、積水ハウスが、ニセモノとはいえ地主と面会する前から不動産購入話を進めていたようだとの推測も綴られている。

 そして4月24日、羽毛田は契約書などに署名押印。海喜舘に「売買予約」の仮登記がなされ、積水ハウスは手付金12億円分の預金小切手を騙し取られた。


■干支を訂正


 それからほぼ1カ月後に海喜舘の「内覧」が実施されたが、羽毛田はボロを出さぬよう体調不良を理由に欠席している。この他いくつも不可解な点が浮上したにもかかわらず、積水ハウスは取引に邁進したのだ。

〈私は海老澤さんになりすまし、書類に海老澤さんの名前を書いたり海老澤さんの印鑑を押しました。(略)書類には、干支に○を付けるところがありますが、私は「酉」に○を付けた後、司法書士に誤りを指摘されて、「申」に訂正しました〉

 それでも「地面師の女」の化けの皮が剥がれることはなく、本契約も締結。土地の代金も預金小切手で支払われた。積水ハウスが詐欺を半ば承知で怪しい契約に突き進んだと疑われても仕方あるまい。

 結局、まんまと計55億円もの大金が騙し取られ、地面師グループ17人が逮捕された。だが、預金小切手は複雑な経路を辿って換金されたと見られ、捜査当局は未だその行方の全容を掴み切れていない。

「週刊新潮」2019年6月27日号「MONEY」欄の有料版では、供述調書の内容を詳報する。

「週刊新潮」2019年6月27日号 掲載

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