独特なルックスに注目集まる「Osaka Metro」新型車両 見た目だけじゃない新しさ

「走り続ける、変わり続ける」をキャッチフレーズとするOsaka Metro(大阪市高速電気軌道株式会社)。その言葉どおり、2025年の万国博覧会(以下、万博)開催に向けて、大きな変化を遂げようとしている。その象徴が万博アクセス輸送を担う中央線で、鉄道車両の概念を大きく打ち破る400系が目玉と言える。その魅力やOsaka Metroの今後をご案内しよう。【岸田法眼/レイルウェイ・ライター】


■400系のエクステリア


 中央線新型車両400系の先頭車前面を眺めると、現代の地下鉄車両では珍しい左右対称のデザインが目を引く。先頭車前面の右側は運転台、左側は非常用の貫通扉を配している。前照灯を四隅に配することで、トンネル内や夜間の視界向上を図る狙いがあるものと推察する。イメージパースを眺めると、昭和の時代に描いた未来の車両が現実になるような印象だ。

 Osaka Metro によると、400系という車両名の由来は、万博対応をメインとした4号線(中央線)に特化した編成とすることから、号線を意味する「4」を用い、なおかつケタを短くして、「400系」にしたという。車両番号は大阪市営地下鉄時代からの基準を踏襲しつつ、新しいパターンを生み出した。詳細は掲載の表をご参照いただきたい。

 車体はアルミで、側面の乗降用ドア及び周囲に着色を施している。ホームドア(可動式ホーム柵)を設置した際、ひと目で中央線の車両(ラインカラーはグリーン)と容易に判別できるようにしている。また、フリースペース付近の乗降用ドアのみブルーで、車椅子やベビーカーの大小のピクトグラムを配し、乗客がひと目で把握しやすいようにしている。ブルーは四つ橋線のラインカラーだが、400系は中央線専用車なので混乱を招くことはないと思う。

 このほか、従来の車両に比べ側窓が小さく、乗降用ドアの窓が大きいのも特徴だ。


■400系のインテリア


 インテリアは明るく、中吊り広告を挟むバインダーを廃したことで、落ち着いた雰囲気を演出している。各乗降用ドア上にLCD式2画面(液晶モニター)による旅客情報案内装置を設けている。

 先頭車(1・6号車)はユーティリティスペースと称し、USB専用のモバイル用電源つきカウンターを設置している。近年は高速バスや東横インの新店舗などにもUSB専用の充電コネクターが設置されており、時代の流れに乗った恰好といえる。イメージパースを見る限り、乗務員室付近と隣の車両付近に設けられている。

 1〜3・5・6号車のロングシートは1席ごとに色分けすることで、座席定員通りの着席を促進している。背もたれも昨今流行のハイバック式で居住性を向上。車端部は3人掛け、それ以外は5人掛けで、30000系を踏襲している。着座幅も30000系と同じ470ミリだろう。

 4号車は1人掛けのクロスシートが並び、向きは固定されている。通路幅を確保することで、日中はキャリーバッグなどが置きやすいと思う。

 このほか、各車両に車椅子やベビーカーに対応したフリースペースを設置。各車両への設置は大阪市営地下鉄時代の1992年(当時は「車椅子スペース」)から実施されており、早くから交通弱者に対する思いやりが行き届いている。

 吊り手にも注目だ。首都圏の車両と同じ三角形ながら、向きが異なる。首都圏及び、長堀鶴見緑地線や今里筋線の車両は、座席部分の吊り手が枕木方向(進行方向に対して垂直)、通路部分がレール方向(進行方向と並行)であるのに対し、400系は逆なのだ。

 試しに首都圏のある車両で三角形の吊り手を握ったところ、枕木方向が握りやすい。400系デビュー後、乗客の反応に注目したい。

 400系は2023年に登場する予定だ。後述の延伸に伴う輸送力増強もあり、既存車両の20編成(20系15編成、24系5編成)を上回る23編成を導入する。これに伴い、既存の20系は廃車、24系は4編成を谷町線に、1編成を四つ橋線に転用し、輸送力増強を図るものと思われる。


■万博に向けた延伸への課題


 万博の開催を機に、Osaka Metroは中央線コスモスクエア―夢洲(仮称)間3,190メートルの延伸を予定している。すでに海底トンネルができあがっており、線路の敷設、駅の建設を待つ状況である。

 Osaka Metroはすでに夢洲駅のイメージパースを公表しているが、意外な課題もある。コスモスクエア―夢洲―新桜島(仮称)間は、大阪港トランスポートシステム(以下、OTS)が第1種鉄道事業者(自社が鉄道線路を敷設し、運送を行なうとともに、線路容量に余裕がある場合に限り、第2種鉄道事業者に使用させることができる)であることだ。

 現在の中央線である大阪港―コスモスクエア間、現在の南港ポートタウン線である中ふ頭―コスモスクエア間は、OTSが第1種鉄道事業者として1997年12月18日に開業した。しかし、コスモスクエア方面へは大阪市営地下鉄とOTSをまたがっての利用となることから、運賃が割高で客足が伸び悩み、赤字がかさんでしまう。そこで、2005年7月1日から運行業務を大阪市営地下鉄に移管し、運賃の一元化を図ったのだ。

 これに伴い、OTSは第3種鉄道事業者(鉄道線路敷設後、第1種鉄道事業者に譲渡、もしくは第2種鉄道事業者に使用させる事業で、自社は運送を行なわない)、大阪市営地下鉄は第2種鉄道事業者(第1・3種の鉄道事業者が敷設した線路を使用して運送を行なう)にそれぞれ役割が変わった。現行の体制をアパートに例えると、OTSが「大家」、Osaka Metroが「借主」となる。

 延伸が予定されているコスモスクエア―夢洲間はどうなるか。Osaka Metroによると、運行形態については「関係機関と協議中です」とのこと。Osaka Metroが既存区間及びコスモスクエア―夢洲―新桜島間を引き継ぐのか、それともOsaka Metroが第2種鉄道事業者、OTSが第3種鉄道事業者として延伸開業を迎えるのかが協議の焦点になるだろう。


■終電の積み残しを避けたい万博ダイヤ


 万博開催時には列車の大増発が必要なことから、Osaka Metroは2022年より30000A系を10編成導入。中央線で営業運転を開始し、万博終了後は谷町線に移る。

 1970年の万博では、御堂筋線―北大阪急行電鉄の万国博中央口間がメインルートとなった。特に利用客が多く見込まれた休日ダイヤ(当時は日曜日と祝日)の新大阪―万国博中央口間は、最短2.5分間隔で運転されていた(参考までに平日朝ラッシュ時は4.5分間隔)。

 ところが思わぬ誤算もあった。開催終盤の9月5日(土曜日)、約10万人が万国博中央口23時36分発の終電に乗れなかったという。急きょ1時20分発の臨時あびこ行きを設定したが、全員乗り切れるはずもなく、大半が徹夜で早朝の電車を待つしかなかった。

“積み残し”を避ける意味でも、2025年の万博ではOsaka Metro全路線の終電繰り下げが考えられる。ただ、深夜の保守作業を考慮すると、休日ダイヤに限定されると思う。仮に繰り下げるなら、2時台までの延長が考えられる。

 参考までに2020年1月24日(金曜日)深夜、御堂筋線で終電延長の実証実験が行なわれ、2時台まで運転された。Osaka Metroによると、1・2時台の利用客は約4,000人だという。15分間隔の運転や他社線などの接続がなかったとはいえ、利用客は多いと思う。


■これからのOsaka Metro


 Osaka Metroは全線全駅のホームドア設置を目指している。

 現在は御堂筋線の設置が急ピッチで進められており、2021年度中に完了の予定である。また、御堂筋線用の30000系は当初12編成の導入を予定していたが、その後、10編成を追加することになった。これに伴い、2022年で10系(10A系も含む)が引退の見込みである。

 ホームドア未設置駅が多い谷町線、四つ橋線、堺筋線も整備が進められ、2025年度末までに完了の予定である。

 このほか、御堂筋線9駅、中央線6駅でグランドリニューアル工事、他線の一部の駅でエレベーターの設置工事が進められている。

【取材協力:大阪市高速電気軌道】

岸田法眼(きしだ・ほうがん)
レイルウェイ・ライター。1976年栃木県生まれ。『Yahoo! セカンドライフ』(ヤフー)の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降、フリーのレイルウェイ・ライターとして、『鉄道まるわかり』シリーズ(天夢人)、『AERA dot.』(朝日新聞出版)などに執筆。著書に『波瀾万丈の車両』『東武鉄道大追跡』(ともにアルファベータブックス)がある。また、好角家の一面を持つ。引き続き旅や鉄道、小説などを中心に著作を続ける。

デイリー新潮編集部

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