猫のコロナ大流行 乱立する「高額治療費クラファン」に杉本彩さんが感じる“懸念”

猫のコロナ大流行 乱立する「高額治療費クラファン」に杉本彩さんが感じる“懸念”

猫の治療費クラファンに懸念

猫のコロナ大流行 乱立する「高額治療費クラファン」に杉本彩さんが感じる“懸念”

動物虐待犯に懲役刑を適用する法改正への署名を訴える杉本彩さん(今年1月松本市)

 の間でも「猫のコロナ」と呼ばれる猫伝染性病腹膜炎(FIP=Feline Infectious Peritonitis)が流行し、愛猫家を悩ませている。FIPの治療は100万円近くかかる高額医療となるため、クラウドファンディングも増加。この現象を見て、動物愛護活動家で知られる「公益財団法人動物環境・福祉協会Eva」代表の杉本彩さんは「違和感」を覚えるという。

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■パクリ製品


 なぜFIPの治療は高額なのか。現在入手可能な治療薬が中国製の「ムティアン」しか存在せず、しかも法外な値段で流通しているからだ。実はムティアンは、新型コロナ治療薬レムデシビルの製造元でもある米国ギリアド社の「GS-441524」の“パクリ商品”。ギリアド社が「GS」の特許を持ちつつも製品化していないのをいいことに、無許可で非正規品を商品化しているのである。

 ムティアンの投与期間は84日間。薬代以外にも、検査費用、点滴代など諸々含めると100万円近い出費となる。FIPは子猫に発症するケースが多く、致死率はほぼ100パーセント。高額だとわかっていても、どうしても愛猫を救いたいと考える飼い主はムティアンに頼らざるを得ないのだ。

 そのため、経済力がない飼い主たちが治療費の捻出に困り、クラウドファンディングを募るケースが続出しているのである。大手クラファンのホームページを見ると、子猫の写真とともに「この子の命を助けてください」と呼びかける募集が数え切れないほど掲載されている。個人だけではなく、猫カフェや愛護団体がFIP治療費を募っているケースも多い。

「実は私も、FIPに効果的な薬にお金がかかって、飼い主さんたちが困惑しているという話を、最近テレビで知ったばかりでした。そして、こんなにも多くのクラファンが立ち上がっているのを見て驚きました」(杉本さん。以下同)


■飼い主の責任


 だが、杉本さんはクラファンの内容を調べていくうちに、「100万円」という金額に対して疑問を抱いたという。

「もちろん決して安い金額ではありません。人それぞれの経済事情があるとは思うのですが、100万円という金額は、ペットを飼う上で万一の場合に備えて考えておくべき出費ではないかと思ったのです」

 杉本さんが昨年見送ったフレンチブルドッグの「きなこ」にかかった治療費は、そんな額ではすまなかったという。

「自然分娩でも生まれてこない人間の改良で生まれた犬種だったので、もともと虚弱な体質でした。高齢になってからは本当に大変で、呼吸を楽にする手術、がん治療、投薬、あらゆる検査費用などを合わせると、すさまじい出費でした」

 ただ、杉本さんはかれこれ20年近く、「ペット貯金」を積み立ててきたので、想定外の出費にも対応できたという。だからこそ「100万円」の捻出に行き詰まり、助けを求めなければならなくなる飼い主の姿勢に違和感を覚えると語る。


■「かわいそう」で安易に反応しないで


「ペットを飼われていない方でも、人間に置き換えてみればわかりやすいと思います。お子さんが保険適用外の病気にかかって、入院生活を送らねばならなくなる。その費用が100万円だったとしたらどうしますか? 誰もが生活を切り詰めたり、アルバイトをしたり、親戚にお金を借りたり、死に物狂いでお金をかき集めるのではないでしょうか。そんな時、クラファンのような知らない他人に助けを求める手法を考えないでしょう。もし、目標金額に達しなったらどうするつもりなのか? あきらめるのか? やはり、このような飼い主さんには、ペットを飼う覚悟と万が一の時の想定が足りていないのではないかと考えてしまうのです」

 もちろん、猫がかわいそうだと思って寄付に応じてしまう善意の人を否定するつもりはない。ただし、動物愛護の世界における「かわいそう」に、安易に反応しないよう気をつけて欲しいとも訴える。

「動物愛護の世界では、残念ですが怪しい業者が入り混じり、動物愛護ビジネスを展開しています。自分たちの不要になった繁殖引退犬猫を保護犬猫と偽り、譲渡金を得ているような業者がいます。そのような業者の下請けとなり、寄付を募っている動物愛護団体も存在するのです」


■寄付する側にも伴う責任


 いまネット上でFIP治療費を募っている人たちが、すべて悪徳業者であるという話ではない。だが、「お金を寄付する時はよく相手を調べて欲しい」と杉本さんは訴える。

「仮に悪意のない個人への寄付であったとしても、このようなクラファンが横行するようになってしまったら、飼養能力のない飼い主の安易な衝動買いや飼育にもつながりかねません。また、せっかくの動物愛護に寄与しようという気持ちが、マイナスの方向に足を引っ張ってしまいかねないのです。動物愛護の世界には寄付が欠かせません。けれど、真面目に誠実に保護活動をしている人たちに善意の寄付が届いてこその動物愛護です。だからこそ、寄付する側も責任を持って寄付先をしっかり見極めて欲しいと願います」

 コロナ禍になってから、ペットを飼う人が急増している。寂しいから、かわいいからではなく、小さな命に対して責任をまっとうする覚悟を持つことが飼い主に求められている。

デイリー新潮取材班

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