「女性の味方」として有名な弁護士が“凄絶セクハラ”で提訴され… 本人の言い分は?

「女性の味方」として有名な弁護士が“凄絶セクハラ”で提訴され… 本人の言い分は?

横浜地裁

 横浜市内の弁護士が「セクハラ」などの咎(とが)で女性元事務員に提訴された。この件、いくつかのメディアで報じられたが、そこで触れられなかった事実がある。この弁護士先生、元は裁判官で、画期的判決のきっかけを作ったご本人でもあったのだ。

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〈「パワハラでうつ病発症 解雇」 弁護士を元事務員提訴〉

 そんな見出しが東京新聞に躍ったのは、今月8日のことである。

 同紙によれば、原告は40代の女性だ。2010年から横浜市内の弁護士事務所で働き始めたものの、げんこつで殴られるなどの「パワハラ」や、「40歳前後の女性は一番性欲が強くなる」と言われるなどの「セクハラ」を受けたという。19年にはうつ病と診断されて休職し、翌年には解雇されている。

 労基署からは昨年、労災認定され、このほど、解雇の無効や休職中の賃金など約900万円の賠償を求める訴えを横浜地裁に起こしたという。


■訴状には凄絶な「パワハラ」「セクハラ」が


「本来であれば企業の見本となって法令を遵守されるべき法律事務所なのに、ハラスメントが日常化していました」

 とコメントするのは、原告の女性ご本人だ。

「毎日とても辛く、労災が認定されたにもかかわらず一方的に解雇されたことも言葉では言い表せないほど悔しくも思っております」

 確かに、訴状がそのまま真実であれば、この弁護士の「パワハラ」「セクハラ」は度を越している。

 被告は83歳になる老弁護士だが、仕事上のミスを理由に原告を月平均3〜4回げんこつで殴り、「頭おかしいんじゃないか」「こんなこともできないのか」といった暴言を吐くのもしばしばだったとか。

 一方で、「奥さんがいなかったらあなたと結婚する」と言い寄ってみたり、裸の女性が出てくる小説の一節を読ませたりといった「セクハラ」も多数。更には、原告の休職中にも、待ち伏せやプレゼントを送るなどの付きまとい行動を繰り返した。

 そのため、原告は今でも被告と同じ、白髪で背の高い男性を見ると発作を起こすなどのPTSDに見舞われているというのである。


■かつての人情裁判官


 訴訟は原告が厚労省の記者会で会見を行ったことにより明るみに出た。その際、彼女は名を公表しなかったが、相手方は実は知る人ぞ知る法曹界の大物で、武内大佳(ひろよし)氏という。

 もともと判事を務めていた氏を有名にしたのは、1968年、栃木で起きた殺人事件である。実父から繰り返し強姦され、5人の子を産まされてきた女性がその父を殺害した。この事件を宇都宮地裁で裁いたのが、若き日の武内氏である。

 司法関係者によれば、

「当時、刑法には『尊属殺人罪』があり、親を殺した場合にこれが適用されると、通常の殺人より重い『死刑』か『無期懲役』、減軽しても下限は3年6カ月の懲役でした」

 しかし、武内氏らは、この女性に刑を科すことはできないと考え、「尊属殺人の重罰規定」は法の下の平等に反して違憲だとする判決を下す。これがのちに最高裁でも認められ、現憲法下で初の法律の違憲判決が確定。この判決は、社会科の授業でも取り上げられるため、ご存じの方も少なくないはずだが、かくも女性に寄り添った「人情裁判官」が、本当に前述のような“セクハラ”に手を染めたのだろうか。


■全くありえない話


 当の武内弁護士に聞くと、

「全くありえない話です」

 と反論する。

「思い返してみれば、彼女が書類の作成ミスをした際、一度コツンと頭を叩いたことはありますが、常習的になんてやっていない。怒鳴った記憶も1回しかありませんよ」

 セクハラについても、

「一切ありません。小説を読ませた? 一体何の小説ですか、それは。付きまといですか? 記憶にあるのは、ランチをしようと思って電話をしたら出ないので、彼女の実家に電話をしたことくらいで、誤解です」

 として、こう言うのだ。

「なぜ彼女が急に訴訟を起こしてきたのかさっぱりわからないんです。私の傘寿のお祝いにメッセージをくれたり、折に触れて詩や手紙をくれたこともあったのですが。彼女はシングルマザーで、子どもや自分の体調のことで悩んでいたのは知っています。本当にうちの事務所で働く中で発症したのか……」

 言い分はすれ違うばかりだが、老弁護士が晩節を汚したのは事実。

「私は尊属殺事件の頃から一貫して弱い人の立場に寄り添って仕事をしてきたつもりです。泥沼の争いは避けたいですが、コツコツ積み上げてきた信用がこれで崩れちゃったよな……」

 と肩を落とす氏は、果たして女性の敵か味方か。

 元名判事が裁かれる訴訟の行方はいかに……。

「週刊新潮」2022年2月24日号 掲載

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