「マルちゃん」「うまい棒」…今年値上がりする商品一覧 今後高騰する商品は?

「マルちゃん」「うまい棒」…今年値上がりする商品一覧 今後高騰する商品は?

おなじみの商品ばかりが……

 デフレが続き、賃金の上がらないこの国に、値上げラッシュの波が押し寄せている。その多くが日用品とあって生活への打撃は必至だが、物価上昇はいつまで? 我が家の家計は一体、どうなる?

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 30年近く、賃金が上がらない国・ニッポン。それでも人々の生活が何とか維持されてきたのは、「デフレ」だから、に他ならない。給料は増えずとも、モノの値段が安いままなら家計への影響は少ない――。

 そうした“均衡”が今、崩れつつある。

 2月15日、「マルちゃん」ブランドで知られる東洋水産は、「赤いきつね」「緑のたぬき」の21円値上げを発表した。両者のレギュラーサイズの希望小売価格は193円。それが6月1日からは214円になるのだから10%近いアップである。


■衝撃的だった「うまい棒」の値上げ


 昨年来、こうした身近な食品の値上げが続いているのは、既に報じられている通り。代表的なものを掲載の表に挙げたが、これを見れば一目瞭然。パンや小麦粉といった主食に関わるものから、ソーセージ、ちくわ、冷凍食品などの副食品、醤油やケチャップ、マヨネーズなどの調味料等々、日々の食卓のメインプレーヤーばかりだ。

 また、カップラーメンやカップ焼きそばなどのインスタント食品、ポテトチップスなどのお菓子も同様。

「中でも、『うまい棒』の値上げには衝撃が走りましたね」

 と言うのは、さる経済ジャーナリストである。

「43年前の発売開始以来、ずっと1本10円を保ってきましたが、ここにきてついに力尽き、12円に値上げすることになりました」

 この他にも、「味の素」のコーヒーや「日本ハム」のピザは、価格を据え置いたままで、大きさや容量減を発表。実質的には価格アップという、いわゆる「ステルス値上げ」となった商品も多数ある。


■「家計の負担は年5〜6万円増加する」


 食品以外に目を転じても、例えば、ティッシュペーパーやファイルといった日用品も価格が上がった。

 更には、電気やガスなどの料金も6カ月連続で上がっており、みな日々の生活に関わるものばかりだ。

「こうした値上がりにより、この春には、消費者物価指数が前年比で2%増になる可能性が生まれています。となると、家計の負担は少なくとも年で5万〜6万円は増えることになる」(同)

 少なからぬ層で生活に影響が生じるのは必至なのである。

 かくも企業が値上げに走るのは、原材料費の高騰や原油高、円安の影響で、仕入れや物流のコストが大幅に膨らんでいるため、だ。

 従来、こうした事態に見舞われても、日本の企業は消費離れを恐れ、値上げに踏み切ってこなかったのは周知の話。6年前、アイスキャンディー「ガリガリ君」を10円値上げした際、製造元の赤城乳業が社員全員頭を下げるCMを流して話題になったが、それほど値上げは「絶対悪」。値上がり分を、人件費の圧縮などで“回収”し、低価格を維持してきた。

 しかし、昨今の原材料費などの上昇はすさまじく、もはやそうした“自助努力”だけでは耐えきれなくなってきた、というのが実情だ。企業間の商品取引価格を表す企業物価指数は、昨年11月、前年比で9%の上昇を記録した。これは第2次オイルショック以来、約40年ぶりの高率である。


■“限界を超えた”


 実際、現場の嘆きの声を聞いてみると、

「コスト吸収の限界を超えてしまいましたね」

 と述べるのは、「ロイヤルブレッド」など主力商品を平均9%引き上げた、山崎製パンの担当者である。

「年に2回、輸入小麦の政府売渡価格が改定されるのですが、昨年10月は、前期比19%の引き上げ。2桁上がったのは10年ぶりでした。昨年4月の改定でも5%以上のアップでしたから、2期連続となり、企業努力では対応しきれなくなってしまったんです」

「お茶づけ海苔」などの商品価格を6月から5〜9%引き上げる永谷園の担当者も、

「海苔はもちろんですが、原因がこれ、と言い切れないほどあらゆる原材料の価格が上がってしまっています。おまけに製造に関わる電気代も、輸送に関わるコストも高騰して、もう製品に関わるもので上がっていないものはないくらいの状態です」


■「もう異常事態」と悲鳴


 これを川下で受け止める小売店も苦しいはずで、

「長くこの業界にいますが、今回の値上がりは、尋常じゃないですね」

 と熱く語るのは、テレビでおなじみ、スーパー「アキダイ」の秋葉弘道代表取締役である。

「品目の多さもそうですが、値上がりの幅がこれまでの10倍レベル。食用油の中には、1年で5回も値上げしたものもありますよ。2円、3円なら利益圧縮で頑張ろうと思いますが、10円、20円となったら価格に乗せるしかない。もともと我々の業界は利益率を低くし、薄利多売で勝負してきた。削れるだけ削り、これ以上安くできないところに来て、この値上げの連鎖ですから、もう異常事態です」

 一方で、化粧品を値上げしたことに反発したのか、「花王」の商品を店頭から撤去する“奥の手”に出た「オーケー」のようなチェーンも現れてきた。


■燃料輸出国にお金が回らず…


「大きく言うと、今回の物価上昇の原因は供給不足です」

 と解説するのは、第一生命経済研究所・首席エコノミストの永濱利廣氏である。

「化石燃料で言うなら、世界の潮流となった“脱炭素”が影響している。海外の投資マネーは、基本的に50年先を見て投資していますから、アンゴラやナイジェリアなどの燃料輸出国にお金が回らなくなってしまい、供給不足に陥っている。そのため、原油価格が上がっているのです」

 加えて、将来的な需要減を見越し、産油国は価格を高止まりさせる方向にもある。

 原材料の値上がりについても、

「小麦などの穀物に関して言えば、気候変動に伴う、ここ数年の天候不順や異常気象によって、農作物の収穫量が減少している。これが原因で供給不足が起きています」(同)

 当世流行りのSDGsの流れで、バイオ燃料の需要が増し、麦やトウモロコシ、植物性油の値段も高くなる。

「脱炭素」も「気候変動」も決して一過性のものではない。となれば、この値上げトレンドがしばらく続くことは間違いなさそうなのだ。


■アメリカの物価上昇が世界に波及


「インフレの原因には、もちろん新型コロナの流行に由来するコンテナ不足など、物流の混乱もありますが……」

 と述べるのは、経済評論家の加谷珪一氏である。

「大きい目で見れば、中国や東南アジアの国々などの経済発展に伴い、食料やエネルギーの需要が拡大し、価格が上昇しています。それに加えて、米中対立の影響もある。アメリカは中国から安い品物を大量に購入していましたが、対立が激化し、高い関税をかけたため、他の国の品物、あるいは国内産を購入する動きが広がっていった。そのためアメリカ国内の物価が上昇し、それが日本をはじめ世界に波及しているのです」

 こちらの要因も、一過性のものとは思えない。上昇ペースに変動はありそうだが、物価が上がり続けていく流れはどうやら止まりそうにないのだ。


■スタグフレーションの影


 物価の上昇自体はもちろん否定すべきものではない。この10年ほど、デフレ克服を目指し、日銀が消費者物価指数の2%上昇をターゲットに、さまざまな手を打ってきたのは周知の通り。しかし、今回の物価上昇には、なぜ歓迎する声が起きないのか。

「それは、この物価上昇が、いわゆる“悪いインフレ”以外の何物でもないからです」

 と、永濱氏が言う。

「国内需要の増加によって、物価が上がり、賃金上昇に連動し、更に需要が高まるというのが、良い物価上昇。それに対して今回のそれは、原材料費などの高騰によって値上げが進んでいるだけで、国内需要の拡大を伴っていません。これでは家計は節約を強いられ、需要はさらに萎縮し、景気の悪化を招いてしまいます」

 これをコストプッシュ型のインフレという。

 加谷氏も、

「完全に“悪い物価上昇”の典型例となっていますよね。物価が上がり、家計が圧迫され、買い物を控えて、企業は儲からない……」

 景気は低迷しているのに、物価が上がる――今の日本は、いわゆる「スタグフレーション」に限りなく近づいている、とさえ述べるのである。


■今後価格が上がる商品は


 言うまでもなく、賃金が上がらないままモノの価格が上がれば、実質的には所得減と同じだ。貧困化が進む「安いニッポン」も、底が抜けたという感があるわけだが、ミクロの世界に話を戻すと、今後価格が上がっていくのは、どのような商品においてなのだろうか。

「一般に、原材料費などの上昇が本格的に食品価格にまで及ぶのは、1年ほどのタイムラグがあると言われます」

 と、永濱氏が続ける。

「そのため、物価上昇はまだとば口に入ったばかりと考えるべきです。パンや大豆製品、調味料と、穀物に関する品物の価格がまだ上がる可能性があります。原油についても同様です。ガソリン、軽油、灯油……そして、それにまつわる商品に要注意です」

 一方の加谷氏は、こんな見方だ。

「食品の価格が上がり始めたのは、昨年後半から。しかも、パンに代表されるように、価格のうち原材料費の占める割合が高い商品が上がりました。今年前半は加工食品、それに続いて外食産業など、原材料費の影響が比較的小さい分野の商品にも、値上げの動きが広がっていくことと思います」


■家電や車にも影響


 既に昨年、松屋、吉野家、すき家の3チェーンは牛丼の値上げを行っているが、これも序章だったということか。

 そして、今年の後半には、

「家電や、車、システムキッチンなど、より原材料費の占める割合が低い、高額な商品にまでその影響は及んでいくことでしょう」(同)

 食品から日用品、更に一歩進んだフェーズにも影響が及んできそうな、切迫した様相なのだ。

「私の店では、17台のトラックで輸送をしていますが……」

 とは、前出の「アキダイ」秋葉代表である。

「ガソリン高騰の影響で、輸送費だけで、1年前と比べ、月に20万〜30万円はコスト増となっているでしょうか。他にコロナ対策の消毒など、経費がいつもよりかかっているのが現状です。例えば、卸値が100円上がれば、小売では125円上げなければ利益率は維持できないのですが、そこを100円アップに抑えても、生活必需品だけに、お客さんにとってはやはり高いと映ってしまうでしょう。ついに“値上げの時代”が本格的に始まったなと実感しますよ……」

「週刊新潮」2022年3月3日号 掲載

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