軽い気持ちで不倫したら、妻も“仕返し”で不倫のてん末… 41歳男性が語った「覚悟」

軽い気持ちで不倫したら、妻も“仕返し”で不倫のてん末… 41歳男性が語った「覚悟」

自業自得ではあるけれど……気持ちに折り合いをつけるべく、信博さんは口を開いた

 軽い気持ちで不倫をしてしまい、妻にバレたとき、妻が意外なほど傷ついていることに自らも傷ついたという男性がいる。再構築を目指して一念発起、心のどこかで「もう許された」と感じていたのだが、事態は新たな展開へ。今、新たな迷いの中にいる男性に話を聞いた。【亀山早苗/フリーライター】

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「仕返しというわけではなかったと妻は言っています。その言葉は信じたい。この5年間は何だったのかという思いはありますけどね」

 坂巻信博さん(41歳・仮名=以下同)は、消え入りそうな声でそう言った。数ヶ月間、迷い、悩み、苦しんできたがいまだ覚悟は決まらない。

「でももう、妻は妊娠8ヶ月に入ろうというところです。迷っていても悩んでいても、子どもは生まれてきてしまう。覚悟を決めるしかない。そのために話したいと思って来たんです」

 そう、信博さんの妻・凌子さん(38歳)は、第二子を妊娠中。だが、お腹の子の父親は信博さんではない。


■忘れられない初デート


 ふたりは結婚して8年。6歳の娘がいる。知り合ったのは信博さんが会社から派遣された社外研修だった。彼女も同様に勤め先から来ていた。

「3日連続の研修だったんです。僕、初日に遅刻しそうになって会場に飛び込んだところで彼女にぶつかってしまった。そしてぶつかっておきながら自分で彼女を支えたために転がりかけて……。初日からみんなに笑われましたが、あとから『あれで和んだよね』と妙に褒められたりして。研修ではずっと笑われキャラでした」

 そのぶつかった彼女が凌子さんだった。隣同士に座ったふたりは研修の合間に言葉を交わすようになった。3日間の研修が終わった日、みんなで飲み会をしたのだが、その帰りに凌子さんから告白された。

「その積極的な言動にびっくりしました。『信博さんのことが好きになりました。つきあってもらえませんか?』と。まっすぐ目を見て言われてドギマギしてしまいました。彼女はちょっとクールに見えて天然のところもある。おもしろい人だなと思っていたから、断る理由なんてありませんでした」

 ちょうどその少し前につきあっていた彼女に振られたばかりだった。もう恋なんてできないという落ち込みから回復したところへ、タイプの女性から告白されて、信博さんは有頂天になった。

「初デート、今でも覚えています。彼女に食事に行こうと言ったら、『何か刺激的なことを一緒にしてから食事しましょうよ』って。え、何言ってるのと思ったら、彼女が指定してきた待ち合わせ場所はバッティングセンター。なんだ、と思わず言ってしまった。茶目っ気があるというか人をびっくりさせるのが好きな女性でした」

 さらにびっくりしたのはバッティングセンターでの彼女の“成績”だ。100キロ級の速球をがんがん打ち返し、ホームランとなったことも。野球は経験がないが、ストレス発散にバッティングセンターに来ているうちに打てるようになったと笑った。

「僕はなかなか打てなかったけど、彼女にコツを教わり、少し当たるようになりました。楽しかったですね。最初のデートとしては定番ではないかもしれないけど、一気に打ち解けたような気がします。ふたりとも汗みどろになってしまったので、『しゃれたレストランはやめましょう』と彼女が言い出し、煙もうもうの焼き鳥屋に行きました」

 彼女は豪快に飲み、しゃべり、笑った。とにかく楽しくて気持ちのいい時間だったと彼は振り返る。この人ともっと時間を共有したい。もっと彼女のことを知りたい。気持ちが高まっていき、つきあって3ヶ月目には同棲、半年目には婚姻届を出した。


■子宝にも恵まれ


 結婚してからも凌子さんは変わらなかった。ふたりとも仕事優先の生活だが、少しでも時間があけば待ち合わせて食事をしてから帰ったり、信博さんが買い物をして帰宅、一緒に夕飯を作ったりした。

「彼女は思わせぶりなことを言ったりしたりしない。いつも率直でストレート。だから信用できた。ふたりとも結婚を決めてから親に報告、先に婚姻届を出してから親同士も初めて会ったという感じです。そのあたりの感覚も似てるんですよね。家庭環境も近いのかもしれない。ふたりとも地方都市の出身で、大学から東京に来ていて、親はまったく干渉してこない。子どもの頃から自由にさせてもらっていたところも似ていました」

 だから同居しても大きな違和感はなかった。些細なすれ違いは、彼女の率直さによってすぐに解消されていたから問題視することにはならなかった。

「結婚して1年ほどたって子どもができました。ふたりで大喜び。ところが彼女はつわりがひどくて大変そうでした。僕は心配するだけで何もできない。男は無力ですよね。僕にできるのは家事をしたり、彼女が食べられそうな食事を用意するだけ。でも彼女はすごく感謝してくれた。さらに妊娠後期には切迫早産で1ヶ月近く入院もしました。凌子にとっては大変だったと思う。それでもなんとか出産にこぎつけた。僕も立ち会いましたが、娘が生まれたときは僕のほうが号泣してしまって……。『泣くな』と妻に叱られましたね」

 妻と娘が退院してきてからは、信博さんの勧めもあって、凌子さんの母親が泊まり込みで手伝ってくれた。姑に気を遣うより実母のほうがいいだろうと彼が思ったからだ。

「凌子はおかあさんにすごく甘えていましたね。彼女、3人きょうだいの末っ子ということもあって、実は甘えん坊だったらしい。ただ、18歳で故郷を離れてひとりで上京、大学でも会社でもがんばってきたんでしょうね。突っ張っていた気持ちが急に解き放たれたように、実母に甘える凌子が、かわいいような少しだけうっとうしいような……。僕は少し複雑な気持ちでした」


■下心も恋愛感情もいっさいなかったが…


 子どもが生まれ、妻も健康状態に問題はなく、さらに妻の母が来て、どこか自分だけ“のけ者”になったような気がしたのかもしれない。ふっと気が抜けたようなその時期、信博さんはときどきひとりで飲みに行くようになった。

「知らないバーにひとりでふらっと入る緊張感と、そこで出会う人との会話が楽しかったのかもしれない。あちこちひとりで行きました。そのころ、うちの部署で働いている派遣の女性が、たまにはバーに行ってみたいというので、じゃあ、今度一緒に行こうかということになったんです」

 特に下心があったわけではない。恋愛感情もいっさいなかった。ただ、幼なじみの近所の子に似ていたのだという。

「派遣の女性は当時、30歳くらい。世間話をしていて楽しい人だったから、飲みに行ってしゃべるとホッとできました」

 ときおり飲みに行くだけの関係だったのに、4、5回目だろうか。帰り際に彼女がぐらりとよろめいた。あわてて支えたが、顔を上げた彼女の頬が涙で濡れていた。

「どうしたのと言ったら、実はかわいがってくれた祖母が亡くなったと、さっき連絡があった、と。『せっかく楽しく飲んでいるのだし、いずれにしても明日にならないと帰れないから黙っていようと思ったんだけど我慢できなくなって……』って。両親が共働きだったので、彼女はほぼ祖母に育てられたようなもの。大好きな祖母だと。その日はひとり暮らしの彼女の部屋に送っていきました。『少しだけでいいから、一緒にいてもらえませんか』と言われて断れなかった」

 そして部屋に入ると、彼女に抱きつかれた。それを振り払うことができなかったのが彼の優しさでもある。その日は一緒にいて、早朝、羽田空港まで彼女を送って行った。出社すると妻にメールをした。

「部署の若手と飲みに行ったら、ひとりが酔っ払い、部屋まで送った。あまりに具合が悪そうだったので帰るに帰れなかった。ちなみに部下は男だよ、と。今までそんなことはなかったから信じてもらえるかどうかわかりませんでしたが、妻は『心配したよー。信ちゃんが無事ならよし』と返信がありました」

 当の派遣の女性は数日後、戻ってきたが、信博さんはふたりきりで会うのを避けた。最近誘ってくれないんですねというメールが来たし、面と向かって言われもしたが、「ちょっと忙しくてね」と言うにとどめた。冷たくしたわけではない。なのに彼女は察してくれようとしなかった。


■信博さんの対応がまずかった


 数ヶ月後の夕方、彼女は会社を出たところで待ち伏せていた。あえてごく普通に「お疲れさま」と言って歩きだすと、彼女は黙ってついてきた。駅まで行くと、後ろから「どうして私と会ってくれないんですか」と聞かれた。

「あのときはふたりとも雰囲気に流されたんだ、と言うしかなかった。言外に、恋愛ではないという意味も込めました。でも彼女は『あの夜、愛はなかったということですか』と迫ってきた。愛とか恋とかいうつきあいではなかったはずだけど、それを言ったら逆上されそうで……。『僕は結婚しているし、不倫はしたくないから』と言ったら、もうしちゃってるじゃないですかと言われた。どうしたらいいんだろうと困り果てました」

 うかつに関係を持ってしまったものの、その後の展開をしかけられたときに失敗する男性は少なくない。こういう優柔不断な対応が女性の神経を逆なでするのだ。最初から遊びだと相手が割り切っていないのなら、謝り倒して解放してもらうしかないはずなのだが。

「僕は彼女を傷つけたくなかったから、『このままつきあってもきみを傷つけるだけだ』と言ってしまった。そうしたら今、捨てられるほうが傷つくと言われて。祖母の話を持ち出していましたね、今、とにかくひとりでいるのがつらい、あなたがそばにいてくれたら立ち直れると思う、とか。でもさすがに僕もここから一歩踏み込んだら、別の世界が待っていそうで怖くなったんです。だから『妻に疑われているから』と言ってしまった」

 相手の気持ちが高まっているときに、そんなあやふやな言い訳はよろしくない。たとえ傷つけても、土下座してでも謝り倒す覚悟を決めなければいけないときだったのだ。

「彼女、すぐに妻に連絡したようです。『奥さんが、私と信博さんの関係を疑っているみたいですけど、疑惑じゃないです。彼はこの前、泊まっていきました』と。帰宅したら、妻が『さっき、電話があったよ』と彼女の名前を出しました。『浮気してるんだね、それとも本気?』と淡々と言われました」

 凌子さんの性格だから、ネチネチとは言われない。ただ、浮気なのか本気なのか、どうするつもりなのかを「述べよ」と言われたそう。ふだんなら笑ってしまうような妻の言い方に、そのときばかりは背筋が凍りついた。

「ごめんなさいと言うしかなかった。ただ、恋愛感情はまったくなかったし、たった1回のことだとも付け加えた。もちろん、彼女にはきちんとわかってもらうようにするから、と。妻は『わかった』とすぐに言ってくれたけど、『このことを私がどう思うか、これからどうするか、あとは私の判断でいいわね』って。怖かったですね。離婚とか、ないよねと言ったら、『それは私がこれから考える』としか言わない。いつ妻からの審判が下るのか、どんな気持ちで待てばいいのかわからない。ただ、今まで以上に家事と育児をするようにはしました。ちょうど妻が職場復帰するところだったので、週末はひたすら子どもの面倒を見ていました」

 そんな努力のかいがあったのか、1ヶ月後、妻は言った。

「本当にショックだった。あなたが簡単に私を裏切ると思っていなかったから。でもこの1ヶ月、あなたの言動を見ていて、やはり生活していくにはあなたが必要だと思った。ただ、私の心のためにあなたが必要かどうかはわからない。それは今後、ともに生活していくことで判断したいと思う」

 つまり、とりあえずの離婚はないということだ。が、信博さんは少し物足りなかった。

「オレは凌子のことが好きなんだよ。凌子は? と聞いたら、嫌いじゃないけど前みたいに好きになれるかどうかわからないと。相変わらず率直でした。大好きな凌子の笑い声を聞けなかった1ヶ月、僕は本当に寂しかった。自分が悪いのはわかっている。時間がかかっても、あの笑い声を取り戻してほしいと伝えました。『私の心は今、半分死んでるようなものなのよ、わかる?』と彼女はつぶやいて、ポロリと涙をこぼしました。あの気の強い凌子の大きな涙の粒を見て、ああ、ここまで傷つけてしまったのかと愕然としました」

 そこに至って、彼はようやく本気で反省したのだという。


■突然の「離婚してください」


 わざとらしく反省する姿を見せても、凌子さんには見抜かれる。だから地道に誠実さを示していくしかないと思った。

 娘を中心に、家庭でのイベントを増やした。時間をやりくりしてケーキ作りを習い、娘と妻の誕生日には、せっせと作った。3歳くらいになると娘は、『パパのケーキ』を心待ちにするようになった。

「やっと妻に許されつつあるなと思ったのは、娘が5歳になったころですね。娘の誕生日を祝いながら、目と目が合ったとき、凌子の目が心から笑っていた」

 だが――今から3ヶ月ほど前、信博さんは妻から「妊娠した」と言われ、腰が抜けそうになったのだという。

「だって、夫婦の日常は戻ったけど、夜の生活は戻ってないんですから」

 妻は「ごめんね」と言った。

「魔が差して大学時代の元カレと浮気をした。お互いに家庭に戻ろうと決めたけど、別れてから妊娠に気づいた。どうしたらいいか悩んだけど堕胎はしたくないから、産もうと決めたの。離婚してください」

 妻は一気にそう言ったんですよ、と信博さんは肩を落とす。凌子さんに復讐の意図はなかったという。ただ、夫と性行為をする気になれず、やり場のない気持ちだったとき、たまたま元カレに会ってしまった。自然消滅で別れた相手だっただけに、あのころの感情がよみがえってきて、数回、関係をもったのだそう。

 今度は信博さんが悩んだ。妻の行動もさることながら、自分の子ではないとわかっていながら、これから育てることができるかどうかを突きつけられているのだ。

「あなたに育てる義理はない、だから離婚してという妻の言い分は正論ですよね。だけど妻の子であることには変わりない。相手も妊娠を知らないまま別れているわけだし」

 今回、凌子さんはほとんどつわりもなかったから、信博さんは気づかなかった。そもそも、性行為をしていないのに妊娠するはずはないのだから気づかなくて当然だ。

「この前、凌子が合図したので彼女のお腹に手を当ててみたら、胎動がものすごいんです。娘も触ってびっくりしていました。お腹の子は女の子。娘は『そこで暴れてないで、早く来てね』とうれしそう。妻と子どもふたりが団らんしているところを想像してみました。やっぱり僕はその輪に入りたい。たぶん、僕は自分の子として出生届を出すと思います」

 妊娠のニュースが大きすぎて、妻が不倫していたことになかなか心が向かなかったのだが、もう今となっては責める気にさえなれない。命がかかっているのだ。

「子どもに罪はない。それに尽きますね。しかも娘が妹を楽しみにしている。僕だけ逸脱するわけにはいかない」

 妻へのわだかまりがないとはいえない。それでも、産まれてくる子を憎まない自信だけはあると信博さんは言った。思いがけない展開に、なかなか気持ちを整理することはできないが、今は妻の身を案じつつ、産まれてくる次女をひたすら待つだけだと最後はきっぱりと言い切って、彼は照れたように笑った。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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