勤務する「援デリ」が摘発されても… 業界歴26年、アラフィフ風俗嬢が語る“サバイバル・ライフ”

勤務する「援デリ」が摘発されても… 業界歴26年、アラフィフ風俗嬢が語る“サバイバル・ライフ”

インタビューに答える詩織(仮名)さん

 今年1月18日、「ネット上で女性を装い売春をさせた」として、無店舗型風俗店を経営する男と従業員の男が売春防止法違反(周旋)で神奈川県警に逮捕された。この事件が報じられた直後、私の携帯が鳴った。「いまニュースになっているところ、詩織さんが居るところだよ!」【酒井あゆみ/ノンフィクション作家】

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 電話は、その詩織と共通の知人からだった。風俗歴トータル26年の詩織(48、仮名)は、これまでさまざまな業態で働いてきた超ベテランである。全国を転々として「ジプシー風俗嬢」として週刊誌に取材されたこともある。いま神奈川で働いていたことを私は知らなかった。安否の確認がてら、久々に話を聞いてみることにした。

 詩織は腰まであるストレートの黒髪を束ねた、米倉涼子似の美人だ。月に2回はエステに通っているといい、ネイルなどのケアを怠らない。とてもアラフィフには見えず、風俗業界のミスコンで特別賞をもらったこともある。風俗のフルコースを経験している彼女が、なぜ、従業員が逮捕されるような危ない店で働いているのか。幸運にも、捜査の手はまぬがれたようだった。

「その日は、たまたま出勤じゃなかったんだ。いっしょに働いていた友達は朝、家に警察がきてスマホ持ってかれた、って。私はその次の日くらいに電話かかってきた。『警察です。電話した意味は分かってますよね』って。そう言われたんだけど、私、その時、脚のネイルしてた時で『明日の昼ごろにもう一度お電話いただけますか』って電話を切って、そのまま放置。店は『援デリ』だから、いつかはこうなると思ってシミュレーションしていた」

 援助交際デリバリー、略して「援デリ」は、近年、事件の舞台となることが多い。今年1月には、東京・池袋のホテルで82歳の男性が刺殺される事件があったが、これも援デリでのトラブルだった。援デリ業者が使うのは出会い系サイト。素人の女性を装って登録し、マッチングした客に所属する女性をあてがうのだ。待ち合わせ場所にやってくる女性は往々にして詩織のようなプロなわけだが、客の男は「素人」だと信じて遊ぶ。その勘違いで成り立っているビジネスといえる。実際に働いている女性たちには申し訳ないが、素人という付加価値がつくぶん、高いレベルが求められることもない。


■本人が語る「援デリのメリット」とは…


 援デリ自体は古くからある業態だが、最近になって需要が高まっているのは「パパ活」の増加と関連があるためだろう。コロナ禍での「濃厚接触」を恐れた客たちは、せめて素人ならと考えるのか、あるいは表立って遊ぶのを嫌ってか、パパ活などの個人売春に流れている。だが、個人売春を行う女性たちには“バック”がいない。「お金が貰えない」「タダ乗りされた」といったトラブルはつきもので、金品、着ていた服、スマホまで盗まれ、ホテルの部屋から逃げられた、なんて悲惨なケースもある。「個人売春をしたら騙されました」と警察に届けるわけにもいかないから、女性側が泣くしかない。

 その点、「援デリ」であれば、いざとなれば従業員が駆け付けてくれる安心感があるわけだ。詩織はさらにこんな援デリのメリットを話す。
 
「決まったプレイしなくて済むから楽なの。ぶっちゃけ『はい、入れて』で終わり。他の風俗だとサービスしないとお客からクレームが入るし、お店も困る。でも、援デリならキスすらしなくていい。私は濃厚接触したくないから。お客さんから聞いたんだけど、いざ会って遊べる女の子って、いまは中国とか韓国の子が多いらしい。だから日本人ってだけで喜んでくれる」

 性行為を行うのは良いが、“濃厚接触”はしたくない……。詩織はそういうところは徹底している。風俗嬢につきものの「性病」は毎月自腹で検査を受けているというし、コロナ禍の当初にはいち早く「PCR検査キット」を海外から取り寄せてもいた。

「風俗に来るくせに、男性は性病には全く無頓着。自分で検査する、というのも全く考えない。自分は平気、って根拠ない自信はどこからなのかね。だから風俗嬢は自分で自分を守っていくしかない。お店も病気から守ってくれない。守れるのは自分だけだから」

 援デリで働く際も、自分を守るための方法を考え抜いている。先述のとおり、出会い系サイトを通じた男性とのやりとりは従業員が行うわけだが、

「受付(※従業員)には、待ち合わせ場所の候補をあらかじめ伝えて、そこで会えるようにしてくれとお願いしている。地図を印刷して、そこにマークをつけて。どこも駅から離れた、車でしか行けない場所。駅の近くで待ち合わせると、その後にどう移動してどこのホテルに行くか読めないけれど、すこし離れた場所ならホテルが少ないから、勝手の知っているところに誘導できる。その方がなにかあったときに逃げれるじゃん」

 そうなると客は車を持っている相手に限られるが、それも計算のうち。「車を持っている客は金払いがいい。駅待ち合わせは金をもっていない」というのが持論だ。普通に考えれば、車に乗せられたほうがどこへ連れていかれるか分からずリスクがある気もするのだが……。彼女なりの成功術なのだろうから、黙っておいた。実際、援デリを通じて知り合った安全な良いお客さんとは、その後、個人的に連絡先を交換して会っている。いよいよ本格的な個人売春だ(ちなみに彼女は常に5台ほどのスマートフォンを持ち歩いている。客によって使い分けているようだ)。


■アラフィフ風俗嬢の苦労


 パパ活の半分素人みたいな女性たちが増えた今、詩織ほどのプロの“売る女”は珍しい。四国出身の彼女は、大学入学を機に上京し、卒業後は大手IT会社のシステムエンジニアとして働いていた。学生時代からキャバクラでアルバイトをしていたそうだ。

「うちは実家が自営業で余裕がなかったから。学費もそうだけど、東京って凄いお金かかる。家賃はもちろん、洋服も同じものをいつも着れるわけじゃない。他の子は仕送りとかもらってたけど、私にはそれがなかった」

 結局は金銭感覚が狂っている、ということになるのだろう。以前はごひいきのネイリストに頼むため、わざわざ東京から京都まで通っていると言っていた。学生にして借金を背負い、そして社会人になっても金銭感覚は変わらなかった。大学卒業と同時に風俗嬢デビューをしたそうだ。

 しばらくは昼は社会人、夜は風俗嬢の生活を続けていたが、

「でもねぇ、私は一般の会社員っていうのが続かない。好き嫌いはっきりしてるから、やりたくない仕事はやりたくない。そんなの通用しないでしょ。フツーの昼の会社は」

 せっかく入った会社も2年で退職。以降は風俗一本で暮らしてきた。ソープランドで働いていた頃は講師も頼まれるほどのテクニックを持つ彼女だが、コロナ禍になり援デリに移行する前の数年間は、都内ではなく地方への出稼ぎで暮らしていた。

「年齢的に、都内のお店の待遇が悪くなってて。地方のほうが、まだ対応が良い店があるから」

 彼女が地方で働きだした頃は、AV女優の出稼ぎ先としても、地方の風俗店が盛り上がり始めていた時期。援デリで働きだしていたこともしかり、本人が知ってか知らずか、詩織は風俗の“トレンド”を生きている。

 とはいえ、援デリは違法風俗店である。女性本人に捜査の手が及ばすとも、今回のように、店が摘発されて食い扶持を失うリスクはある。

「大丈夫だよ。摘発されて一週間後にはお店、再開してるから。でも、スペ(※身長マイナス体重の意味)110以上の30代女性しか採用しないことになっちゃって、もう働けなくなっちゃった。新しいところを探しているけれど、どこも難しい。やっぱりコロナはお客少ないから仕方ないね」

酒井あゆみ(さかい・あゆみ)
福島県生まれ。上京後、18歳で夜の世界に入り、様々な業種を経験。23歳で引退し作家に。近著に『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち』ほか、主な著作に『売る男、買う女』『ラブレスセックス』『東電OL禁断の25時』など。Twitter: @muchiuna

デイリー新潮編集部

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