事件現場清掃人は見た 拒食症で孤独死した「30代女性」と「元夫」の切なすぎる関係

 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、一昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、病気で孤独死した30代女性について聞いた。

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 長年、特殊清掃を手掛けてきた中で、高江洲氏は亡くなった女性と元夫の関係に心をうたれたことがある。

「都内の分譲マンションで、30代の女性が孤独死しました」

 と語るのは、高江洲氏。

「死因は、餓死でした。女性は長年拒食症で苦しんでいたといいます。最後は何も食べられなくなっていたのでしょう」

 マンションの間取りは3LDK。寝室のベッドの中で亡くなっていたという。

「死後1週間以上経って発見されたそうです。女性はかなり痩せ細っていたことで体液なども出ず、蒲団やベッドに汚れはほとんどありませんでした」


■依頼人は元夫


 依頼人は、亡くなった女性の元夫だった。

「2人は、その3年ほど前に離婚したそうです。このマンションは元夫の名義でした。彼は、まだ残っているローンを返済しながら、離婚後も女性をマンションに住まわせていたのです。しかも電気やガス、水道料金も、彼の銀行口座から引き落とされていました」

 高江洲氏は、離婚したのになぜそこまで面倒をみるのだろうと思い、元夫に理由を尋ねてみた。

「離婚は、女性の方から言い出したそうです。彼女が拒食症になって精神的におかしくなり、一緒に暮らせなくなったといいます。男性が追い出された形で、離婚することになったそうです。女性の一方的な要求に全て応じたわけです。やさしい人なのでしょう」

 離婚した後、男性はマンションの近くにアパートを借りて、ずっと元妻を支えていたという。

「彼は元妻に愛情があり、いずれ病気から立ち直ったら、また一緒に暮らそうと思っていたといいます。だから支え続けたと」

 元夫は週末に電話をかけ、体調などを聞いていたという。

「そうはいっても、女性は電話に出ないこともあり、折り返しの電話もすぐに来ない時もあったようです。数日たてば、何とか連絡だけはついたそうですが……」

■部屋に残された大量の食糧


 ところが、1週間以上経っても連絡がつかないことがあった。マンションに行ってみたところ、彼女が亡くなっていたという。

 高江洲氏は特殊清掃を行った際、女性はどのような生活をしていたかをチェックするため、部屋を見てまわった。

「物は少なく、必要最低限の生活備品しかありませんでした。部屋はきちんと整理されていました。以前は外出するのが好きだったようで、クローゼットにはおしゃれな衣類が並んでいました。小物を入れるガラスケースの上には、ホコリがかかっていました。長い間、開けてなかったようです」

 高江洲氏は、ドアが閉まっていた部屋を見て愕然とした。

「そこには、大量の食料がありました。20キロ入りの米袋が積まれ、缶詰やパスタ、レトルト食品などが山のようにありました。元夫が買い与えていたのです。ところが、ほとんど手を付けていませんでした」

 食料のわきに、鞄があった。

「鞄には、封筒がぎっしり詰まっていて、それぞれ現金3万円が入っていました。元夫が渡していた、毎月の生活費です。彼女の様子を見に行く度に、手渡していたといいます。現金は、全部で100万円以上ありました」

 高江洲氏は、遺体のあったベッドを処分し、部屋を消毒した。

「男性によると、マンションは彼女の思い出が詰まっているので、自分が今後住むのは辛すぎるということでした。そこで売却しました。事故物件ですから、相場の半分の値しか付きませんでした。離婚した後も元妻のことを想い、世話を続けた男性のことを考えると、なんとも切ない気持ちになりました」

デイリー新潮編集部

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