事件現場清掃人は見た 大学2年で事故物件マンションを3部屋買った「35歳男性」の凄腕

 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、一昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、2度も特殊清掃を依頼した男性について聞いた。

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 高江洲氏のもとには、まれに同じ人から2度、3度と特殊清掃の依頼が来ることがある。

「15年前の依頼人から、再び仕事をお願いしたいと電話がありました」

 と語るのは、高江洲氏。

「現場は、九州にある賃貸物件でした。マンションではなく、古い木造の戸建て住宅だそうです。依頼人は大家さんでした。入居者から、変な臭いがするとクレームが来たそうです」

 部屋の壁にあるコンセントの穴から腐敗臭がしたという。


■壁の隙間に猫の死体


「大家は電気工事二種の資格を持っていたので自分で壁を解体すると、野良猫の死がいが見つかったそうです」

 屋根裏から侵入して壁の隙間に落ち、身動きが取れなくなっていたようだ。

「大家から部屋に腐敗臭がこもっているから特殊清掃をして欲しいと言われていました。ですが、彼は自分で工事もできるくらいですから、アルコール消毒液などの薬剤を購入するよう指示し、自分で清掃したらどうかと提案しました。結局、私は現場へは行きませんでした」

 大家とはいえ、彼はまだ35歳だった。

「15年前に依頼された時は、20歳の大学2年生でした。都内のマンションで60代の男性が孤独死したので、特殊清掃をお願いしたいと連絡が来ました。何と彼は20歳なのにその部屋の所有者だったんです。私は床下のコンクリートの汚れた部分を削って、コーティングしました。これで臭いが完全に消えました」

 彼は、身なりもきちっとし、マンションも所有しているだけあって裕福そうに見えたという。

「でも、よくよく聞いてみると、彼は貧しい家庭に育ったため、中学生の頃から将来は金持ちになるために不動産業をやろうと思っていたそうです。そこで高校、大学時代にバイトをして貯金をしたといいます」

 数百万円の貯金ができると、それで価格の安い事故物件のマンションを購入、賃貸に出していたのだった。

「まだ大学生なのに、自分で稼いでマンションを買うとは。そんな若者はいないなと思いました。今でこそ事故物件は珍しくありませんが、15年前にそれを購入してビジネスにするとは、目の付け所もすごい。当時、私が特殊清掃をしたのは、彼が購入した3件目の事故物件マンションでした」

■夢が叶った


 あれから15年……。

「久しぶりに彼と電話で話しをして、互いに近況を伝えました。彼は大学卒業後、いったん不動産会社に就職、そこで不動産取引について勉強をしたそうです。そして30歳になる前に独立し、結婚したといいます。今は小さな子どもがいるそうです。不動産業も規模を広げ、東京、大阪、九州に賃貸物件を所有していました。それを聞いて、私はすっかり感心してしまいました。夢をしっかり叶えていたわけですからね」

 その後、大家から清掃を無事に終えたとお礼の電話があった。

「彼は、料金を振り込むというので、お断りしました。私はアドバイスしただけですからね。ところがはなかなか応じてくれません。すったもんだの末、彼から私が不動産業のノウハウを教えてもらうことで決着しました」

 高江洲氏はこれまで自ら特殊清掃を行った物件を購入し、転売することもあった。

「彼によれば、都内の物件は、値段がいっきに上がることがあるので、所有していると銀行から信用されやすい。もっとも、最終的には、銀行と付き合わないようにした方がよい。借金をせずに経営することがベストだと教えてくれました」

デイリー新潮編集部

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