ヤクザは17年連続減少で2万4100人に 見えてきたカタギ組の収支決算

ヤクザは17年連続減少で2万4100人に 見えてきたカタギ組の収支決算

警察庁

 2021年末の時点で、暴力団の「構成員(組員)」や「準構成員」の数は2万4100人。17年連続での減少となり、過去最少となった。3月24日に警察庁のまとめが発表されると、新聞社やテレビ局が記事を配信した。担当記者が言う。

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「暴力団員のピークは1963年で、約18万人という統計が残っています。年によって増減はありましたが基本的には右肩下がりで、約8万7000人だった2004年から17年連続で減り続け、遂に2万4100人となったわけです。警察庁は『暴力団排除の取り組みが浸透しているため』と分析しています」

 暴力団の動向に詳しいジャーナリストの藤原良氏は、「2021年、福岡地裁が工藤会トップの野村悟被告に死刑判決を下したのが象徴でしょう。社会全体の締めつけが厳しく、現役の組長も組員も、まさに青息吐息という状態です」と言う。

「暴力団に厳しい姿勢で臨むことは世論も支持しています。警察にとっても、“正義”を行使して国民に評価されるという格好の機会です。暴力団に吹く逆風は、組員なら誰でも身に染みています。例えば、店で酒を呑もうとしたら長居は許されません。閉店間際まで腰を落ち着けていると目立ってしまい、店員さんからそれとなく退店をお願いされるからです」

 ゆっくり酒も呑めないばかりか、儲からないし、生活も苦しい──。暴力団を辞める組員は増える一方だが、「その後の人生」は2つのパターンに分かれるという。


■起業で成功


「1つは本当のカタギになるパターンです。会社を興すケースが目立ち、業種は建築、土木、解体、産廃関連が主流です。もう1つは地下に潜って非合法のビジネスに特化するパターンです。覚せい剤などの違法薬物を密輸・密売したり、オレオレ詐欺などの特殊詐欺を行ったりして、いわば“一攫千金”を狙うわけです」(同・藤原氏)

 こうした動きは5年前くらいから顕著で、藤原氏は「カタギ組の収支決算」に触れる機会が増えてきたという。

「勝ち組と負け組と言っていいのかは分かりませんが、二極化している印象です。経営が軌道に乗り、ヤクザ時代より儲けている元組員も珍しくはありません。一方、会社を興したものの経営がうまくいかず、日々の生活に苦しんでいる元組員も同じようにたくさんいます」(同・藤原氏)

 ただ、起業の成功例が出ていることは大きい。ヤクザの世界でも、これを“新しいビジネスチャンス”と捉える動きが出ているという。

「刑務所に服役すると、土木・建築業に必要な資格を習得できます。長期刑の組員に資格を取るよう指示し、出所すると組長が出資して土木や建築の会社を作らせるのです。表向きは組を辞めたことにしておき、組長が人脈を使って仕事を紹介。利益の一部を上納させるというやり口です」(同・藤原氏)


■暴力団の“人件費圧縮”


 まさに「転んでもただでは起きない」というところだろうか。

 これだけ暴力団が社会悪と見なされていても、「組員になりたい」という若者は一定数存在する。こうした会社は、彼らの“受け皿”としても使われるという。

「今は暴対法でがんじがらめに締めつけられていますから、組員であることのメリットが減っています。暴力団に入りたいという若者がいたら、組が迎え入れるのではなく、そうした会社で雇用させるのです。暴対法の対象外となりますし、給与も会社から出させれば、組の“人件費圧縮”にもつながります」(同・藤原氏)

 整理すると、今の暴力団周辺にはこんな男たちが蠢いていることになる。

【1】本当に暴力団を辞めてカタギになった元組員
【2】本当に暴力団を辞めたが、地下に潜って“ハイリスク・ハイリターン”の非合法ビジネスに乗り出す元組員
【3】暴力団を“偽装脱退”して会社を経営し、組に“上納金”を収める組員


■暴力団の“栄光と没落”


 長年にわたって暴力団を取材する藤原氏からすると、現状はまさに“隔世の感”があるという。

「暴力団は社会悪ですが、それでも70年代から80年代にかけては、魅力的な人物が多かったのも事実です。取材をしていても、彼らはやりがいを感じていました。ところが日本がバブル経済に突入すると、ヤクザの世界でも拝金主義が横行するようになりました。あの時が取材対象としての魅力が減少したと感じた最初でしたね」

 だが、バブル経済は崩壊し、「金がなければヤクザじゃない」という時代も過去のものとなった。今は金がなくて途方にくれているヤクザばかりだという。

「昔のヤクザは、そのほとんどが組長を目指し、熾烈な出世争いを繰り広げていました。それこそ後継処理に失敗すると、跡目争いが起きることも珍しくなかった。ところが今は、『親分が辞めたら俺たちも辞める』と組員の誰もが口を揃えます。暴力団という組織の興隆と絶頂、そして没落をつぶさに見る機会に恵まれたのはジャーナリスト冥利に尽きますが、一抹の寂しさも感じてしまいますね」(同・藤原氏)


■10年後の暴力団


 ただし、少なくなったとはいえ、40代から50代の組長も存在する。引退など全く考えていない組長だ。藤原氏は、ジャーナリストとして彼らの“未来”に興味を覚えるという。

「彼らは何とか組を切り盛りしています。このご時世に、根性が据わっているなと感心してしまうのも事実です。10年後、20年後、彼らはどういう形で組を運営しているのか、もしくは組を運営できなくなっているのか、というテーマは、今後も取材・ウォッチを継続するだけの価値があると考えています」(同・藤原氏)

デイリー新潮編集部

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