共同通信で相次ぐ「誤報」 猪苗代湖・8歳児死亡のボート事故では「被告」から前代未聞の「訴訟」

共同通信で相次ぐ「誤報」 猪苗代湖・8歳児死亡のボート事故では「被告」から前代未聞の「訴訟」

トラブル続出に揺れる共同通信

 ロイター通信やAP通信とならび、世界的な知名度を誇る「共同通信社」が窮地に立たされている。先の総選挙では議席予測を大きくハズし、昨年末には水谷亨社長ら幹部に異例の処分が下されたばかり。だが、それ以降も「誤報」に「訴訟沙汰」と、深刻なトラブルが続発しているのだ。

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 共同通信関係者が嘆息する。

「昨年10月の総選挙で、うちが〈自民は大幅議席減〉という速報を打ったものの、結果的に自民党は単独で絶対安定多数を確保しました。当然ながら、速報をそのまま報じてしまった加盟社は怒り心頭。彼らの突き上げを受けて、昨年末には水谷社長らに“役員報酬返上”などの処分が下されたのですが……。実はそれ以外にも、ここ半年足らずで3件もの記事を巡るトラブルが起きているのです」

 昨年12月27日、共同通信は、コロナ対策融資を違法に仲介したとして、元公明党衆院議員の遠山清彦氏らが東京地検特捜部に在宅起訴されたと報じた。しかし、その時点で在宅起訴の事実はなく、「誤報」を認めることに。

 続いて今年3月には、〈日本人初『ナイト』誕生〉という記事を配信。ローマに本部を置く「マルタ騎士団」を名乗る団体が、日本人ふたりに「ナイト」の称号を贈ることになったと報じたものの、この団体はローマ教皇庁が正統性を認める「マルタ騎士団」とは別団体であることが発覚し、こちらも誤りを認めるに至った。

 だが、社内でそれ以上に問題視されているのは、2020年9月に福島県の猪苗代湖で起きたプレジャーボートによる事故についての報道だった。


■「やばい」


 当時8歳の男子小学生を含む3人が死傷した凄惨な事故は、ワイドショーなどでも大きく取り上げられたのでご記憶の方も多いだろう。ボートを操縦していた佐藤剛被告は業務上過失致死傷容疑で福島県警に逮捕され、起訴されている。

 昨年9月14日の逮捕からまもなく、共同通信は次のように報じた。

〈船の同乗者が航行中に撮影した動画に、異変に気付いて「やばい」などと慌てる関係者の声が記録されていたことが15日、捜査関係者への取材で分かった。動画には船がそのまま去って行く様子が写っていたという〉

〈操縦していた佐藤容疑者は同乗していた約10人に「何も無かったよな」などと口止めしていたことも判明〉

〈(県警は)事故を起こした船の特定に至っていなかったが、動画をきっかけに捜査が進展。14日の容疑者逮捕につながったという〉

 これが事実であれば、佐藤被告の行為は、悪質極まりない「ひき逃げ」や「証拠隠滅」と捉えられても仕方ないだろう。

 しかし、当の佐藤被告側は、そのような動画は存在せず、報道によって名誉を棄損されたとして今年3月に共同通信社を提訴したのである。

 佐藤被告の代理人を務める吉野弦太弁護士は、「私の20年に及ぶ法曹経験のなかで、ここまで被疑者の人格を傷つける“虚偽報道”は初めての経験です」と憤慨する。


■問題の動画は「不存在」


 訴状によると、〈福島県警は,被疑者であった原告や報道機関に対し,当初から本件記事が誤報であることを明言〉しており、起訴後、吉野弁護士が検察官に動画の証拠開示を求めたところ、そのような動画は〈不存在であると回答し、本件動画が存在しないことを明らかにした〉という。

 吉野弁護士が続ける。

「事故直後に“やばい”と発言した動画が存在すれば、まさに動かぬ証拠になるでしょう。事故を認識しながら同乗者に口止めし、救護措置を講じないまま立ち去ったのなら、情状面にも極めて大きく影響します。被告に過失があったとされるならば、刑罰の重みを決定づける事情のひとつになりかねません。しかし、共同通信があそこまで断定的な報じ方をしておきながら、問題の動画は客観的に存在しないのです」

 佐藤被告側からの指摘を受けて、加盟社の多くはネット上に掲載していた記事を削除しており、渦中の共同通信の記事もネット上で探し当てることができなかった。

 共同通信社に問い合わせると、以下の回答が寄せられた。

「係争中であり、詳しい回答は差し控えますが、記事は適正な取材に基づいて配信したと考えております。個人情報を含む事件や事故のデジタル向けコンテンツは、原則として一定期間経過後に削除するよう対応しています」

 無論、少年の命が失われ、その母親が両足切断の重傷を負ったという事実は重大極まりない。裁判においてボートの操縦者である被告の責任が問われるのは当然であろう。だが、報道が事実であるかどうかはまた別の問題。日本を代表する通信社の屋台骨が大きく揺らいでいる。

デイリー新潮編集部

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