「成人年齢」引き下げで親が気を付けるべきことは? 怪しい「占いサイト」に要注意

「成人年齢」引き下げで親が気を付けるべきことは? 怪しい「占いサイト」に要注意

我が子・孫はどうなる?

 4月以降に誕生する「10代の新成人」。民法改正によって成人年齢が18歳に引き下げられることで、彼らは大いなる自由を手にする。一方でそれは、全ての責任を自ら引き受けることでもある。わが国の「大人」の定義が変わるとき、どんな混乱が待ち受けているのか。

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 たとえ、どれほど惨(むご)たらしい凶悪事件を引き起こしても、犯人が未成年という理由だけで少年法により手厚い保護を受ける――。

 本誌(「週刊新潮」)はかねてより、そのような状況に疑義を呈し、事件の重大性に鑑み、事案によっては実名・顔写真を報じてきた。そして、4月1日から成人年齢が引き下げられるのに伴って、ついに改正少年法が施行される。“玉虫色の改正”との声は根強いものの、今後は罪を犯した18、19歳の「特定少年」が起訴に至れば、実名報道が解禁されることになる。

 とはいえ、明治以来、およそ140年ぶりにわが国の「大人」の定義が変わることの影響は、それだけに留まらない。


■自由の反面、大きな責任が


 実際、今回の民法改正によって、18歳になると親の承諾がなくても〈携帯電話を契約する、一人暮らしの部屋を借りる、クレジットカードを作る、高額な商品を購入したときにローンを組む〉(政府広報)ことが可能になる。他方、〈女性が結婚できる最低年齢は16歳から18歳に引き上げられ、結婚できるのは男女ともに18歳以上〉(同)となり、こちらも親の同意を必要としない。

 親からすれば“まだ18歳の子ども”でも、法的には“もう18歳の大人”。成人としての自覚を持たないと、さまざまな問題に直面することは避けられない。

「成人年齢の引き下げによって、18歳でも自動車をローンで購入できるようになります。同時に、事故を起こした際の損害賠償責任も自身が負うことになる。自由を手に入れる反面、多くの責任が生じるわけです」


■結婚を親や学校は止められない


 そう語るのは、各地の学校でスクールロイヤーを務める弁護士の神内聡氏。4月以降は教育現場の混乱も予想されるという。

「分かりやすい例を挙げると、生徒が18歳になったら本人の意思だけで“退学”ができてしまう。在学契約の当事者をどう解するかにもよりますが、親が同意していないというだけでは、学校側は生徒の申し出を拒否するのは難しい。同じく、結婚についても親や学校は止められない。生徒同士の結婚ならまだしも、相手が反社会的勢力だったら、配偶者という立場を利用して、学校側に無茶な要求をしてくるリスクもないとは言い切れません」

 加えて、親が不安を禁じ得ないのは“契約”に関するトラブルだろう。

 民法では、未成年者が保護者の同意を得ずに結んだ契約は、原則として取り消すことができる。今回の改正によって、この「未成年者取消権」を18、19歳は行使できなくなるのだ。そこで問題視されているのは、未成年者への出演強要がたびたび取り沙汰されてきたAV(アダルトビデオ)の存在に他ならない。


■若いほどカネになる


 社会部記者が言う。

「とりわけ、2017年にモデル募集サイト運営者の男が逮捕された一件は大きな波紋を呼びました。男はコスプレモデルを募集すると偽って女性を呼び出し、200人以上とAV出演の契約書を交わしていた。最初に身分証を撮影して個人情報を握り、女性が途中で出演をためらうと“こっちには弁護士がいる。断ると大変なことになるぞ”と迫った。被害者の大半は今回の民法改正で成人扱いになる18、19歳の女性でした」

 AV業界も健全化に取り組み、ここ数年、大手メーカーでは10代の女優は“ゼロ”だという。

 だが、神内氏によれば、

「事前の説明がないままAV出演を強制されたのなら、消費者契約法や詐欺・強迫などを理由に契約を取り消すことができます。しかし、18、19歳の女性が内容を理解して結んだ契約については、保護者の同意がないという理由だけでは取り消せなくなる。実際の教育現場では、同じ18歳でも大人として扱っても問題ない生徒もいれば、そうでない生徒も混在しています。それこそ、好奇心やお小遣い目当てに、親の目を盗んでAVに出演する女子高生も現れかねません。学校側は生徒が被害に巻き込まれないよう注意する一方、生徒自らが飛びつくことを不安視しているのです」

『スマホ危機 親子の克服術』の著者でジャーナリストの石川結貴氏も、次のように警鐘を鳴らす。

「子どもたちのスマホやネットにまつわるトラブルを取材してきた私としては、SNSや動画サイトを通じた被害の拡大を心配しています。ネット上で暗躍する悪徳業者は、相手が若ければ若いほどカネになると考えている。当然ながら、今後は18、19歳が狙われやすいと認識してほしい」


■占いサイトに偽装


 石川氏が業者の手口として紹介するのは、多くの少女たちが好む占いサイトを偽装したケースだ。

 サイトに生年月日を入力すると無料で占ってくれるのだが、さらに詳しい鑑定結果が知りたければ会員登録が必要になる。

「そこでメールアドレスやニックネームを書き込むと、〈あなたはモデルやアイドルの道で成功する〉と言われ、今度はオーディションを受けるよう勧誘してきます。軽い気持ちで写真を送ったら2次審査の案内が届き、会場に足を運んでしまったが最後、言葉巧みに契約を結ばされる。しかも、その内容はモデル契約ではなく、ライブチャットで男性客と性的な会話をしたり、アダルト動画に出演する仕事。最初に生年月日を入力させるので、業者側は相手の年齢を容易に割り出せてしまうのです」(同)

 であれば、未成年者取消権の保護から外れる4月以降、悪徳業者が“10代の成人女性”に狙いを定めても何ら不思議はない。

 石川氏が、別の事例を挙げて話を続ける。

「ある少年がオンラインゲームで知り合った男から自宅に誘われたときのことです。相手が同性ということで何の疑いもなく足を運んだところ、ゲームで遊んでいる最中に身体をまさぐられ、その様子を動画で撮影されてしまった。その後、“お前も喜んでいたじゃないか。言うことを聞かないとSNSに動画を流すぞ”と脅され、貯金を取り崩したり、親のお金を盗んだりして男に渡す羽目になった。今後、似たようなケースが起きた場合、少年が18歳以上だったら、サラ金で借金を強要されることも考えられます」


■善意を利用するマルチ商法


 三菱UFJ銀行やみずほ銀行といった大手銀行では、カードローンについて、20歳以上のみ利用可能とする現在の条件を継続すると報じられている。

 ただし、と先の神内氏が指摘するには、

「学生ローンのように審査が緩いものには要注意です。投資詐欺やマルチ商法に引っ掛かって、当座のお金を工面するために借金をすることも想定される。しかも、親が事後的に解約するのは困難です。“高校生がマルチ商法なんて……”と思うかもしれませんが、大学のサークルと同様、クラス内でマルチ商法がはやることは容易に想像がつきます」

 この点については石川氏も、高校生が日常的に利用するSNSや動画サイトは“マルチ商法やネットワーク商法の温床”と断じる。

「最近は社会貢献を絡めて善意を利用するパターンが増えています。たとえば、“保護犬を救おう”という名目で、通常より高額なペットフードを売りつける。“売り上げの10%が保護のための寄付に回されます”と言われると、家でペットを飼っている人は1カ月分だけ買ってみようかな、と思いますよね。ただ、実際には定期購入で6カ月分は解約できないシステムになっていたりします。しかも、悩んでいたら“お友だちに声をかけて購入者を増やしてくれたら、あなたにも取り分が入ります”というメッセージが届く。その言葉に背中を押されてマルチ商法の契約をしてしまうのです」

 被害を拡大させないためにも、万一の際、親に相談しやすい関係を作り、「消費者ホットライン(188番)」の存在を教えておくことが重要だという。


■口座を売ってしまうケース


 元神奈川県警刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏も警鐘を鳴らす。

「未成年が銀行口座を開設する場合、親権者の同意を必要とする金融機関は少なくありません。実際、18歳の子どもが複数の口座を持ちたいとせがんでも、親は訝(いぶか)しんで承諾しないでしょう。しかし、4月以降は自分の意思でいくつも口座を開設できる。そのため、カネで口座を買うような振り込め詐欺業者に、小遣い稼ぎで売ってしまうことも懸念されます。また、クレジットカードも親の同意なく作れるため、高価な家電などを購入するよう唆(そそのか)される恐れもある。買取業者に売却すれば容易に現金化できますからね」

 このように“成人”という立場を悪用される危険性は常につきまとう。


■有意義な側面も


 それでも、先の神内氏は「成人年齢を引き下げること自体には賛成」と話す。

「家庭で虐待を受けている子どもにとって、自分で家を借り、親元を離れて生活できることは望ましい。また、18歳から精神的、経済的自立を促し、社会的責任感を養うことも有意義でしょう。学校では契約のリスクばかりを教えるため、成人になることに不安を覚える生徒が多いのも事実。そうではなく、正確な情報を認識して、慎重に行動する、賢い消費者を育てる指導をすべきだと思います」

 新年度に18歳を迎える世代は、大人の階段を2段飛ばしで駆け上がることになる。彼らが早く一人前になれるよう見守り、導くことこそが古い世代の大人の役割といえるだろう。

「週刊新潮」2022年4月7日号 掲載

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