藤井聡太竜王の活躍で名古屋に将棋会館が? 師匠・杉本八段は「プレッシャーになってしまう」
2022年04月17日 10時56分 デイリー新潮

重圧に負けるな!
地元政財界の希望を19歳の棋士が一身に背負っている。先頃、2年連続の最優秀棋士賞に輝き、さらに名古屋市に対局場ができることもあって、地元のある“悲願”の実現へ期待は高まる一方。それゆえ、藤井聡太竜王の“巣立ち”に妙なプレッシャーがかかっている。
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日本将棋連盟が愛知県名古屋市内に対局場を設置すると発表したのは、先月16日のこと。JR名古屋駅に近いトヨタ自動車のオフィスに畳を敷く形で一度に7局の対局が行えるという。
将棋の公式戦は東京と大阪の将棋会館で行われることが多い。新たに名古屋に対局場が設けられることで追い風になるのは、愛知県瀬戸市の実家で暮らす藤井竜王である。
観戦記者が解説する。
「すでに藤井さんは棋界の第一人者です。にもかかわらず、対局の度に東京や大阪へ出張するなんて普通ではありません。そうした移動が続くと当然、疲れが蓄積する。かといって実家を出て上京されると……。名古屋に対局場があれば移動が減るので、藤井さんにはプラスに働くでしょう」
■会館建設への大きな一歩
実は東海地域の棋界には長年の悲願がある。東京、大阪に続き名古屋に将棋会館を誘致することだ。
「すでに2年前に名古屋市と日本将棋連盟は将棋文化を活性化するための協定を結んでいます。地元の政財界からしても会館ができればイベントなども開かれ、地域経済は盛り上がります。今回の対局場の開設は会館建設への大きな一歩です。その“広告塔”となるのは無論、藤井さんでしょう」(同)
だが、地元政財界からの期待が高まる一方で、それが彼の”独り立ち”に影響してしまうのでは、と案じる声もあるのだ。
■「将棋熱は高まる」
「地元の人々は藤井竜王に留まってほしいと考えているでしょう。それが彼にとってプレッシャーになってしまうことは危惧するところではあります」
と語るのは、藤井竜王の師匠・杉本昌隆八段だ。
「藤井竜王が15、16歳の頃に、ひとり暮らしを勧めたことはあります。将棋会館の近いところに住めば、長時間移動の負担がなくなりますから。その彼ももうすぐ20歳です。ひとりで暮らしたいと本人が思うかもしれないし、なおのこと“地元に留まりなさい”と言うつもりはありません」
将棋会館誘致についてはこう言葉を継ぐ。
「いま東海在住のプロ棋士は6人にすぎません。2桁は棋士がいないと会館ができても運用面で持て余すと思うので、すぐの建設は現実的ではないでしょう。ただ、確かに藤井竜王がいなければ、対局場の新設はありませんでした。彼が地元で活躍すれば、将棋熱はさらに高まる。会館建設の弾みにはなるでしょう」
棋士としてのタイトルが増えるほど、周囲のオトナたちの思惑も大きくなっていくのだ。
「週刊新潮」2022年4月14日号 掲載
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