ロシア軍が使うドローン「オルラン10」のエンジンは日本製 意外にもゼロ戦の技術で開発

ロシア軍が使うドローン「オルラン10」のエンジンは日本製 意外にもゼロ戦の技術で開発

オルラン10(Mike1979 Russia/Wikimedia Commons)

 ウクライナ軍はドローンを効果的に使い、ロシア軍を苦しめている──ウクライナ侵攻において、こうした報道が非常に多いのは周知の通りだ。だが、ロシア軍もドローンを活用しており、なおかつ“中枢”とも言うべきエンジンは日本製なのだという。

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 ある軍事ジャーナリストは「軍事用ドローンの活用戦略において、アメリカ軍とロシア軍は対照的なアプローチをしています」と言う。

「アメリカ軍は、攻撃用と偵察用の両方に、多額の予算を投下しています。経営学用語で言う『フルライン戦略』というところでしょうか。武器供与でウクライナ軍が恩恵に与っているのは報道の通りです。一方のロシア軍は、攻撃用ドローンの開発には苦戦しています。そのため現状は、偵察用ドローンにリソースを集中しています。その結果、誕生したのが『オルラン10』です」

 偵察用のドローンと聞くと、小さなプロペラが4つ付いた、民生用のドローンを思い浮かべる人が多いだろう。

 実際、ウクライナの市街戦では、民生用ドローンがロシア軍の動向を探るために活躍している。

 だが、ロシア軍の「オルラン10」には、主翼や水平尾翼、垂直尾翼が取り付けられている。プロペラは機首に1つだけで、ラジコンのプロペラ機にそっくりなのだ。


■エンジンは日本製


「翼の長さは左右を合わせて約3メートル、重さは14キロ前後と言われています。高度5000メートルまでの上昇が可能で、航続距離は120キロとか150キロとする報道も散見されます。ちなみに、東京の日本橋から静岡のJR沼津駅までが約130キロです」(同・軍事ジャーナリスト)

 日本の新聞社などは、一般的なドローンと誤解されないよう配慮しているのか、オルラン10を「無人偵察機」と呼んでいるようだ。

「ロシア軍がオルラン10を開発した理由の一つが、『着弾観測』のためでした。大砲から発射された弾が、初弾から命中することはまずありません。砲兵隊では担当者が着弾地点を観測し、目標に命中させるためにどれだけ修正すべきかを無線などで報告するわけです。この任務は戦闘中ともなれば、命がけになる場合もあります」(同・軍事ジャーナリスト)

 そこでロシア軍は、リスクの高い「着弾観測」をドローンにやらせようと考えたという。

 砲撃が10分や20分で終わることはない。場合によっては一日中撃ち続けることも珍しくない。ロシア軍がオルラン10のエンジンに高性能の日本製を選んだのは、それが理由だ。


■マニア絶賛の技術力


「千葉県市川市に斎藤製作所という、ラジコン飛行機用のエンジンとしては世界トップクラスの技術力を誇るメーカーがあります。海外でもマニアなら『SAITO』を知らない人はいません。2014年に起きたクリミア危機でウクライナ軍はオルラン10を鹵獲(ろかく)し、そこで斎藤製作所のエンジンが使われていることが分かったのです。全世界のラジコンマニアの間でも話題になりました」(同・軍事ジャーナリスト)

 斎藤製作所のエンジンの性能を考えると、ロシア軍がドローンの動力として採用したのは当然だという。

「民生用ドローンの動力は電気ですが、これだと数十分しか飛べません。一方、斎藤製作所のエンジンを使えば、長時間の飛行が可能です」(同・軍事ジャーナリスト)

 東京の日本橋から静岡の沼津まで飛べる性能は、前に触れた通りだ。

「普通のラジコン用エンジンは『2サイクルエンジン』が多く、燃料は工業用アルコールです。ところが斎藤製作所のエンジンは『4サイクルエンジン』で、燃料はガソリンを使います。サイズこそ小さいですが、構造は基本的にゼロ戦のエンジンと同じです。『2サイクルエンジン』の音は甲高くてうるさいのですが、『4サイクルエンジン』は静かで、実際の飛行機のような排気音がします。そのためにマニアの間では人気があったのです」(同・軍事ジャーナリスト)


■斎藤製作所の“DNA”


 斎藤製作所のエンジンは、高い静音性と低燃費を実現している。オルラン10が偵察用ドローンだということを考えると、この2点が高く評価された可能性はあるという。

 ちなみに、オルラン10の偵察用のカメラも、日本のキヤノン製品が使われているという。

「戦時中、ゼロ戦や隼(はやぶさ)、紫電改といった戦闘機を製造していたのは、飛行機メーカーの中島飛行機です。戦後、同社の技術者が自動車メーカーの富士重工業(現・SUBARU)に参画したのは有名な話ですが、斎藤製作所の創業者も同社のエンジン開発者です。斎藤製作所のエンジンにはゼロ戦の技術が継承されており、そのエンジンを使ったロシア製ドローンがウクライナの空を飛んでいるわけです。日本人としてはなかなか複雑な心境です」(同・軍事ジャーナリスト)

 斎藤製作所が4サイクルエンジンにこだわったのも、中島製作所から受け継いだ“DNA”を考えれば当然だろう。


■身近な経済制裁


「斎藤製作所のエンジンをロシアに輸出することは、経済制裁で禁止になる可能性が高いと考えられます。ウクライナ軍の激しい抵抗で、オルラン10のかなりの機数が損耗し、ロシア軍も運用に苦労しているとの情報もあります」(同・軍事ジャーナリスト)

 日本の意外なところに、経済制裁の対象製品があったわけだ。

デイリー新潮編集部

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