なぜ“あの人”のことが嫌いなのか 「苦手な人」認定の前にラストチャンスを

 人間、誰しも好き嫌いや相性があります。職場に苦手な人がいると、毎日が憂鬱(ゆううつ)になります。どうすれば、職場で気持ちの良い人間関係を築けるのでしょうか。アナウンサーとして、さまざまな人と接する機会が多い日本テレビの藤井貴彦さんは「相手との向き合い方からまず整えてみましょう」と言います。著書『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』からご紹介します。

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■なぜあなたは、あの人のことが嫌いなのか


 人間の好き嫌いは「自分のことを大切にしてくれたかどうか」で決定されると、私は思っています。まずは皆さんが嫌いだと思っている人について、なぜ嫌いなのか、その理由を思い浮かべてみてください。

「偉そうにしていて嫌い」という理由があったとします。

 これは、自分を対等に扱ってくれない不満から生まれた感情です。

「声が大きくて嫌い」という理由があったとします。

 これも、静かに生活したい自分の思いが大切にされていないことへの不満です。

 つまり、自分が大切にされたかどうか、自分のプライドを大切にされたかどうかで好き嫌いは決定します。私たちはそれを相手から瞬時に読み取っています。私たちは嫌いな人の話をほとんど聞いていないか、疑って聞いていますので、こうなってしまったらもうコミュニケーションは成立しません。その一方で、好感を持っている相手の話は積極的に聞こうとします。嫌いな人の話を聞く態度とは大きく違いますね。

■向き合い方が好感につながる


 またその「好感」も自分を大切にしてくれたかどうかという判断から生まれます。たとえば、相手の方が年上なのに後輩の私に気遣いをしてくれたとか、困っている時にすっと手を貸してくれたとか、そんなことで好感は生まれます。

 もしあなたが、日々のコミュニケーションを素敵なものにしたいのなら、相手との向き合い方からまず整えてみましょう。それが相手に思いが伝わる最も簡単な仕組みだからです。コミュニケーションにおいてはあなたがどういう人であるかが重要です。あなたが素敵な人ならば、たった一言の「ありがとう」も言葉以上に深く伝わります。

 相手を大切にし、自分を整えることも、伝わる仕組みの一つです。

■「苦手な人」認定の前にラストチャンスを


「自分のことを大切にしてくれた相手かどうか」で好き嫌いが決まるとお伝えしましたが、その人のことを苦手だと思っている時点で、以前に大切にされなかった瞬間があったはずです。話しかけても目を合わせてくれなかったり、軽くあしらわれたりといった小さなことが苦手意識のきっかけになります。そうなると、もうできるだけ関わりたくないと思うはずですが、心を閉ざしてしまう前にもう一度だけ、こんなふうに考えてみてください。

・話しかけたタイミングが、悪かったのかもしれない

・相手はお腹がすいて、イライラしていたのかもしれない

・仕事がうまくいっていなかったのかもしれない

 こんなふうに別の角度から考えてみて、もう一度話しかけてみるのです。

 実際にもう一度話しかけてみると、前回とは違った明るい受け答えをみせたり、やはり同じく無愛想だったりと相手の反応の「比較」をすることができるのです。

 この変化を元に自分の気持ちを再び検証すると相手との距離感を決められます。明るく返答してくれたのであればその後は順調でしょうし、今回も無愛想なら、そういう人なのだと気持ちの整理がつくでしょう。距離感を決めるラストチャンスを大切にしてもらいたいと思います。

■自分の表情は、相手の表情に影響する


 ここで大切なのは、「1回目のいやな気持ちは心にしまっておく」という点です。相手が見せる表情は自分の表情の映し鏡でもあります。こちらが敵対心を秘めた表情をすれば相手も同じ表情になり、こちらが笑顔なら相手も近い表情になるはずです。だからこそ1回目のいやな気持ちが表情に表れないようにしてほしいのです。

 また、いい関係を築くためにどちらかが先にエネルギーを使う必要があります。ここで言えば「1回目のいやな気持ちは心にしまう」ことです。こちらがエネルギーを提供したにもかかわらず相手が応えてくれなかった場合、それ以上のアプローチは不要という結論でいいのだと思います。


■「マウント」から自分を守る


 一方で気を付けたいのは、「マウント」を取ろうとする相手です。話しかけづらい雰囲気をつくり上げ、周囲に気を使わせることで優位に立とうとします。当然こちら側にも気遣いのストレスが溜まっていきますから、苦手意識は強くなります。こんな人に対しては、まず相手の実力を冷静に見極めることが大切です。本当にすごい人ならその人から学べばいいですし、実力がないから大きく見せようとしているとわかれば対処法を決められます。

 なお、向こうからマウントを取りにくる人がいれば、それは「ハラスメント」になります。ご自身のメンタルに十分注意しながらハラスメントの証拠をしっかりと集めておいてください。これは自分を守る正当な行為ですので、引け目を感じる必要はありません。

 最近は、人間関係が面倒だから初めから関係を築かないという人も多くいます。もちろんその考え方も尊重されるべきです。ただ私は、人と接することで自分以外の人の気持ちを知り、多くを学びました。面倒なこともたくさんありますが、人との交流は人生を豊かにする上で欠かせないと考えています。

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※『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』より一部を抜粋して構成。

藤井貴彦(ふじいたかひこ)
1971年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学環境情報学部卒。1994年日本テレビ入社。スポーツ実況アナウンサーとして、サッカー日本代表戦、高校サッカー選手権決勝、クラブワールドカップ決勝など、数々の試合を実況。2010年4月からは夕方の報道番組「news every.」のメインキャスターを務め、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などの際には、自ら現地に入って被災地の現状を伝えてきた。新型コロナウイルス報道では、視聴者に寄り添った呼びかけを続けて注目された。

デイリー新潮編集部

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