「日本医師会」中川会長が前言撤回で会長選不出馬へ… 「中川おろし」が吹き荒れた3つの理由

「日本医師会」中川会長が前言撤回で会長選不出馬へ… 「中川おろし」が吹き荒れた3つの理由

この姿も見納めか…(公益社団法人 日本医師会公式チャンネルより)

 目前に迫った日本医師会の会長選が異例の展開を見せている。2期目を目指し、再選出馬を表明していた中川俊男会長が一転、出馬を見送る方向に舵を切ったという。その裏には医師会内で蓄積する、中川氏への不満や不信が「事実上のクーデター」を誘発したとの見方が浮上している。

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 中川会長が最初に会長選出馬の意向を示したのは3月27日。日医代議員会の場で「新たな決意をもって、全国の医師会の先生方と議論を深めつつ、ともに進んでいきたい」と事実上の立候補表明を行った。

 5月9日には、「われわれの手でポストコロナ時代のあるべき医療の姿の道筋をしっかりとつけたい。私は次期会長選挙に立候補する決意を固め、ここに表明いたします」と再選に向けた出馬を堂々宣言。

 中川氏が会長に就任したのは2年前。2020年6月の会長選で5期目を目指した横倉義武会長(当時)を破り、初当選を果たした。

 今回、6月4日に立候補が締め切られる会長選に早々と名乗りを上げたのも、2期目を見据え出馬環境を整えるためだったが、その最中での撤退劇――。現在、医師会内では中川氏に代わる常任理事候補の擁立と一本化に向けた調整が進められているという。


■スキャンダル続きで信頼失墜


 日本医師会幹部が話す。

「中川さんは理事や会員の多くが自分を支援してくれると思っていたようですが、5月の出馬表明後、想像以上の反発に直面した。もともと独善的な運営が目立ち、医師会内で“裸の王様”に近い状態でしたが、再選は“医師会の失われた社会的信頼を回復不能に陥らせかねない”との声が日に日に大きくなった」

 中川氏続投に医師会内で急速に危機感が高まった理由は3つあるという。

 ひとつは、会長就任以降、中川氏を襲った数々のスキャンダルだ。

「昨年5月、『週刊新潮』が親しい日医総研の女性研究員と中川さんが高級鮨店で“3密無視”のデートをしていたことを報じてから、世間の医師会に対する視線が如実に変わった。本来であれば、中川さんがコロナ対応の陣頭指揮を執り、国民の信頼を勝ち得る機会となったはずなのに、医師会に対する悪いイメージが定着してしまった」(同)

 以降も“反社”を疑われる男性への送金問題など、中川氏のスキャンダルは止むことなく、医師会のイメージも悪化の一途を辿ったという。


■中川氏は明言を避け……


 2つ目が、昨年12月に妥結した2022年度の診療報酬改定だ。中川氏は医師らの人件費に当たる本体部分が「プラス0・43%の引き上げとなり、直近4回の改定の平均値であるプラス0・42%と同等以上の水準」と胸を張ったが、実際は違うという。

「プラス0・43%の内訳は、看護師の給与引き上げ分と不妊治療の保険適用分で計0・4%を占め、これらは医療機関の収入増には繋がりません。また、処方箋を一定期間繰り返し使える『リフィル処方箋』制度の導入と小児コロナ加算の廃止で計0・2%のマイナスとなり、実質0・17%のマイナス改定となります」(医師会関係者)

 このカラクリに気付いた会員医師らによる不満が4月以降、大きくなっていたという。

「診療報酬改定で惨敗したのも、一言でいえば、中川さんに政治力がなかったから。政治組織としての側面も持つ日医の会長が、自民党有力者とのパイプがないのは致命的です。前会長の横倉氏は安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁、二階俊博元幹事長らと強いコネクションを築いていましたが、中川さんに自民党有力者とのホットラインはない。実際、中川さんが再選出馬を表明した後、永田町から“中川じゃダメだ”との声が続々と聞こえてきた」(前出・幹部)

 裏を返せば、政治家からの信頼もなかったということだが、これが3つ目の理由という。

「結局、中川さんに大義がなかったことに多くの会員医師らが気付いた。コロナ患者への治療も公的な医療機関が担い、医師会を構成する個人の開業医は感染を恐れ、消極的な対応に終始してきたとの批判も根強い。この2年間、中川さんがやってきたのは国民のためでも、会員医師のためでもなく、“権力維持が目的だったのでは?”との疑念が広がるのをもはや抑えようがなかった」(同)

 複数の医師会関係者に話を聞いたが、皆、「いま出ても完敗は目に見えているので、中川さんが出馬することは9割以上の確率でない」との認識を示した。

 医師会を通じて、中川氏に宣言通り出馬するのかなどを訊ねたが、

「多忙のため(回答は)難しい」

 と答えるのみだった。

 中川氏の続投断念が、果たして医師会の再生へと繋がるか。

デイリー新潮編集部

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