「一度は5千万円取り戻した」 山上容疑者の伯父が明かす統一教会との金銭トラブルと“凄絶ネグレクト”

「一度は5千万円取り戻した」 山上容疑者の伯父が明かす統一教会との金銭トラブルと“凄絶ネグレクト”

銃撃犯の伯父ネグレクト証言

「一度は5千万円取り戻した」 山上容疑者の伯父が明かす統一教会との金銭トラブルと“凄絶ネグレクト”

高校時代の山上徹也容疑者

■母の統一教会への“多額寄付”とネグレクト、父と兄の自殺 山上容疑者を狂わせた背景(後編)


 安倍晋三元総理を射殺した山上徹也容疑者(41)。前編(山上容疑者、父の自殺の真相 母がハマった“怪しい団体”と壮絶ネグレクト)では、母がハマっていた“もう一つの団体”と父の自殺について報じたが、後編では山上容疑者の伯父の証言をもとに、山上家が統一教会と抱えていた金銭トラブルに迫る。

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「徹也の兄は小児がんを患っていて、手術もしています。片目も失明しており、普段の生活にも苦労していました」

 と明かすのは一家の面倒を見てきた弁護士資格を持つ父の兄、すなわち徹也の伯父にあたる人物である。

「(徹也の)父が亡くなり、兄も病気でした。そうしたことがきっかけになり、父が亡くなってずいぶん経ってから、母は統一教会に入信したんですわ」

 彼女は熱心な信者となり、度々、子供を置いて、長期にわたり渡韓するほどだったと続ける。

「子供たちはその間、食べるもんがなかったんですよ。だって、母親が日本におらんかったからね。自分は韓国に行き、ずっと放っておいた。ネグレクトどころではない、もっとひどい状態です。兄は病気で自分で食事を作ることもできない。その兄が電話をかけてきて、“食べるものがない”と。お金を持って行ってあげたりしていました。すると、冷蔵庫の中には食料がまるでないんですわ……」


■生命保険5千万円を全て寄附


 徹也は地元の公立中学校へと進学。あだ名は「こてつ」。持ち前の運動神経を生かして、所属するバスケ部でも活躍していたとは、同じ部にいた同級生。

「うちの部は3年の時に自分たちの学年だけで25人以上いました。1、2年生を含めれば、もっと部員がいたわけなんですけど、山上はユニフォームをもらえる15人の中に入っていました。ポジションは確かフォワードだったと思います。走るのも速く、シュートもディフェンスもうまい。三拍子そろった選手といった感じでした」

 さらに徹也が得意だったのが「絵」だ。

「ドラゴンボールとかドラゴンクエストのキャラクターをわら半紙によく鉛筆で描いていました。その絵がうますぎて別のクラスからわざわざ見に来る人がいたほどです」(同)

 学業も優秀で高校は県内でも有数の進学校へ。応援団と文芸部に所属し、生活での苦労を周囲に吐露することもなかったようだ。

 しかし、98年、徹也が高校3年生の秋に突然、祖父が亡くなると生活は暗転する。奈良市内に祖父が所有していた二つの土地(計約360平方メートル)が徹也の母に相続されるのだが、時を置かずして母により売却されてしまうのである。一つは翌年の3月に、さらに同年6月にもう一つの土地が。そして、一家は同じ市内の賃貸マンションへと引っ越すことになる。

 先の伯父が言う。

「徹也の父親が亡くなった時に生命保険が5千万円も下りました。加えて、自宅なんかも売却し、それらすべてを統一教会に寄付したんですわ。額は億は超えますわな。しかも、そうした金は1回のお布施だけで数千万円単位で吸い取られていたんです」


■自分たちの教義に反するものはサタン


 統一教会といえば、1980年代以降に高額な壺などを買わせる霊感商法がクローズアップされた。宗教ジャーナリストの藤倉善郎氏が解説する。

「統一教会は朝鮮半島の、キリスト教を模した新宗教です。教祖である故・文鮮明の祝福を受けて、生まれた子供は原罪を背負っていないとして、神聖視されます。そのために合同結婚式が行われているのです」

 霊感商法については、

「“先祖の因縁が深い”“供養しないと家族が不幸になる”などと脅し、数百万円もする壺などを関連会社を通じ信者に買わせていた。それが露見し、社会的に大きな問題となりました。近年は勧誘の仕方がだいぶマイルドになったといわれています。しかし、本質は変わっていない。自分たちの教義に反する者はサタン、すなわち悪魔だという考えですから」

 徹也の母はそうした教義に忠実だったのだろうが、自宅を売った後はあっという間に転落していく。祖父の死後、建設会社の社長を務めていたにもかかわらず、2002年に破産するのだ。

 地元の建設業界関係者は当時を振り返り、驚きを隠さない。

「実は90年代半ばの時点で建設会社の業績は非常に好調でした。ある年には、年商6億円、3千万円近くの利益を出したそうです。中堅建設会社の下請けで、関西圏のトンネル工事などを請け負っていた。それなのに……。結果的に建設会社は休眠状態となり、09年に解散しています」


■自衛隊任期中の2005年に自殺未遂


 母が破産した年、伯父から経済的支援を受け、専門学校を出た徹也は任期自衛官として海上自衛隊に入隊する。しかし、ここでも“事件”は起きた。

「任期中の05年に自殺未遂を起こしているのです。一命は取り留めたものの、防衛庁が運営する自衛隊病院に入院しました。自殺を図ったきっかけは統一教会だった。母親のことで相当悩んでおり、結局、このことがきっかけで退官してしまうのです」(防衛省関係者)

 退官後は、測量会社や派遣社員としてリフト作業に従事するなど職を転々。その間、徹也と親族間の交流は少なからずあったようだが、さらなる家族の断絶を招いたのが兄の死だった。今から7年ほど前、病を苦に自殺してしまうのだ。まさに不幸の連鎖である。

 山上家の親族が重い口を開く。

「葬儀の時、てっちゃんは“何で兄ちゃん死んだんや”“アホやなあ、生きてたらええことあるのに”と言っていたので、この子は大丈夫やと思ったんです。だけど、寡黙だったのがその後ますます話さなくなり、飲みにでも誘おうと思い電話しても出てくれない。ここ数年、彼は妹とも必要最小限のことしか連絡していなかったようです」

 この間、徹也が胸の内でたぎらせていたのは、統一教会、そして安倍元総理への憎しみだった。


■お金を取り返しても再度寄付してしまう母


 伯父が再び語る。

「そりゃあ、統一教会憎しになりますよ。(寄付として家から)持って行かれてしまったのが、1億数千万円はある。私はね、(徹也を含む)3人の甥と姪の依頼でそのうちの5千万円を統一教会と交渉して09年に取り返したんですよ。訴訟みたいなとろい手段ではなくて、直接ね。しかも、教会との間で交わした和解書もあります。でも、取り返した金を母親に戻すと、また、そのまま寄付してしまうんです」

 今回、凶行に及んだ徹也の思いをこう代弁する。

「(徹也は)生活だけではなくて、命まで奪われかけた。普通に見たら、母が統一教会に納めた金が安倍に流れていると、そうなりますわな。生活が苦しいときに私が母親に送っていた生活資金だって全部、教会に流れている。統一教会の言っていることなんて全部でたらめですからね。全部ね」


■「うちの妻を勧誘することも過去にあったみたいで…」


 山上家、そして伯父とトラブルを抱えていたことについて、統一教会の広報は、

「(徹也の)お母さんは1998年に入信しています。(トラブルについては)私どもがお母さんと接触できていないため、お答えできません」

 実は事件発生直後、徹也の実家から一人の人物が警察やメディアの目をかいくぐり、“脱出”していた。徹也の母、その人である。

「射殺事件の起きた日の午後、母親は実家にタクシーを呼び、密かに大阪府内の一軒家に向かっていることが確認されています」(捜査関係者)

 彼女が向かった先がこの伯父の自宅だった。

「事件後はすべてが大変やからね、私が呼んだんですよ。いまうちの部屋におりますけどね、元気ですよ」(伯父)

 伯父は元総理を射殺した凶悪犯をかばい、その遠因を作った母をかくまう。

 先の親族がうつむく。

「(徹也の母が)うちの妻を勧誘することも過去にあったみたいで、彼女からの連絡は拒否していました。この状況であってもあの母親とは話したくないんです。でも子どもにとって、母親は絶対なんでしょうね。なんぼ憎くても母親を撃つことはできへん、だから安倍さんを撃った。そうじゃないかと思えてきて……」

 呪われた一家の中で鬱積してきた積年の恨みと歪んだ愛憎の念に打ち砕かれた「政治家・安倍晋三」。あまりに突然すぎる人生の幕切れだった。

「週刊新潮」2022年7月21日号 掲載

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