伊藤詩織さんが会見で、「安倍元首相」銃撃の責任を問われる「中村警察庁長官」について語ったこと

会見を開いた伊藤詩織さん

■裁判闘争は5年に及んだ


 最高裁は7月7日、伊藤詩織さん(33)が元TBS記者の山口敬之氏(56)を相手に性被害を受けたと訴えた裁判の上告審で、山口氏の上告を退ける決定を下した。この決定をもって、山口氏が伊藤さんに性被害を与えたという事実が民事裁判の場で確定的に認められたことになる。7月20日に行った会見では、逮捕状を握りつぶした当時の刑事部長で現在の警察庁長官である中村格氏への質問も出た。

(左から2番目)伊藤詩織さん

 伊藤さんは7月20日午前11時から都内で、弁護士同席の下、記者会見を開催。最高裁判決とこれまでの歩みについて1時間以上にわたり語った。

 伊藤さんは会見の冒頭、

「この度、最高裁からの判断が最終的に出ました。5年間、闘って来た民事裁判の区切りを迎えることになりました。振り返れば、私にとっては、被害を受けてから7年の年月が過ぎていました」

 と挨拶し、初めて記者会見を開いた5年前に言及し、こう続けた。

「公に自分の性被害について語るということについて、家族からも反対されました。いろいろな溝が周囲とできてしまった出来事でもありました」
「私の中で公で語るということは、その前の生活には戻れない気がして」

 実際、5年前の会見以前と以降とでは生活が激変したことは間違いないだろう。

伊藤詩織さん

■警備の不備を問われた中村長官への質問も


 伊藤さんは会見で、世間の関心を集めた「逮捕状の執行取り消し」についてもこう触れた。

「(週刊新潮が)中村格氏が(山口氏に)逮捕状が出ているのに逮捕しなくてもいいという指示をしたんだということの(情報の)ウラを取っていただいたおかげで、今までわからなかったことがわかって、(物事を)進められたということがあります」

 この点について、改めておさらいしておこう。

警視庁高輪署は2016年、山口氏への逮捕状を取り、捜査をさらに進めようとしていた。しかし当時、警視庁の刑事部長だった中村格警察庁長官が逮捕の中止を命じ、逮捕は直前になって取り止めとなった。中村長官は週刊新潮の取材に対して「私が決済した。(捜査の中止については)指揮として当然」とその事実を認めている。

 中村長官と言えば、安倍晋三元首相(享年・67)の殺害事件に関して、警備の不備に関する責任を問われる立場で、予想されたよりも任期を短縮され、秋にも事実上更迭されるのではと見られている人物だ。

 会見でも、伊藤さんとの質疑応答の中で、次のような質問があった。

――逮捕状の執行取り消しを認めた中村格さんは現在、警察庁長官になっており、先日の安倍元首相の襲撃事件を受けて「痛恨の極み」などと発言しました。最終的に今回の責任を取って辞任する可能性が指摘されています。逮捕状執行の取り消しを命じた中村さんが今、こういう状況になっていることについて、伝えたいこと、想いを教えていただけますか?

伊藤詩織さん

■もし辞められるのであれば


 逮捕状の取り消しと安倍元首相の警備に問題があったか否かは直接関係のないことだが、伊藤さんは大要こんな風に答えている。

「中村格氏に対しては、これまでの様々な決断について、いろいろな質問が投げかけられています。それらに答えを出さないということは私の中でも気持ち悪いものがあります。もし辞められるのであれば、辞める前に、投げかけられた疑問についてお話をしてほしいなと思っています」

 会見に同席した西廣洋子弁護士からは、ここまでの流れと最高裁の決定などについて以下の説明があった。

「詩織さんが山口氏に対して損害賠償請求をした本訴については一審、二審で勝訴して、最高裁でもその判決は維持され、山口氏による(伊藤詩織さんへの)性的暴行があったと認められ、詩織さんへの330万円の損害賠償請求が認容されるという判決になりました。一方、山口氏から詩織さんに対して名誉棄損に基づく損害賠償請求が反訴されておりましたが、これについては、一部認容されています。デートレイプドラッグのくだりについて山口氏の名誉を棄損したということで55万円の慰謝料が認容されています」

 デートレイプドラッグ云々というのは、山口氏がそういう薬物を用いた可能性があると伊藤さんは自身の経験を下に語っていたが、それが認められず、その部分に関しては山口氏への名誉棄損を裁判所が認定したことを指している。もっとも、本筋の性的暴行に関しては一審以降一貫して裁判所は「あった」と認めてきたというわけだ。もう少し西廣弁護士の話をご紹介しよう。


■嫌疑不十分の意味


「本訴については刑事事件については嫌疑不十分ということで不起訴処分になりました。起訴猶予という形です。しかし、民事事件では性的暴行があったということが認められています。刑事事件でも無罪とされたわけではなく、嫌疑不十分、疑いは残るけども証拠が不十分であるので起訴しないと、検事が決断したということになります。一方で、民事裁判では性的暴行があったという風に裁判所の方で認定されています。これは結局、なかったことにはしなかった、ということで、詩織さんご本人にとっても、性被害の事件にとっても、大きな意義があったなという風に感じています」

 先の中村長官の「指揮として当然」発言の後には、「その後の経緯を確認してもらえば」という言葉もあった。検察が起訴していないのだから逮捕中止の判断は正しいという主張のようなのだが、民事での裁判所の判断が確定した今、どのように当時のことを捉えているのだろうか。現在の気持ちや考えを語ってほしいと感じているのは伊藤さんだけではないかもしれない。

 いずれにせよ、被害から7年、裁判から5年を経て、いったんの「区切り」がついたことになる。

デイリー新潮編集部

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