山上容疑者の母親が語った“本音”「信仰は続けたい」 妹は「事件起こしたとか言われても、知らん」

山上徹也容疑者の妹が知人に心情吐露 「事件起こしたとか言われても、知らん」

記事まとめ

  • 安倍晋三元首相を暗殺した山上徹也容疑者の、心の軌跡がたどられている
  • 容疑者の母は安倍氏の家族に謝罪したいとは話したが、教会批判は口にしていないという
  • 山上容疑者の妹は知人に対して「事件起こしたとか言われても、知らん」と打明けたそう

山上容疑者の母親が語った“本音”「信仰は続けたい」 妹は「事件起こしたとか言われても、知らん」

送検時の様子

 元宰相を2発の銃声と共に葬り去った男の半生は、虐遇への絶望と呪詛の言葉に満ちていた。家族を奈落に突き落とした新興宗教を憎悪し、ドス黒い怨念の炎を燃えたぎらせてきた暗殺犯の心の軌跡をたどる。

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「今は少し落ち着いてきたけど、まだ今後のことは考えられない。まずは、安倍さんのご家族、親族の方々に謝罪したい。私の至らなさで……」

 7月17日の朝、山上徹也容疑者(41)の母親は親しい統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関係者に、電話でこう打ち明けていたという。彼女が打ち砕いてしまった息子の人生。彼が行動を起こすにあたり、触発された映画があった。

 3年前、愛知県常滑市の国際展示場から自宅に帰る道すがら、山上容疑者の脳裏には時折、前々日に観たその映画のシーンが、断片的に浮かんでは消えていたことだろう。

頻繁に投稿していた

■教会トップの暗殺は失敗


 その日、2019年10月6日は、統一教会の信者にとって特別な一日だった。

 教祖文鮮明亡き後、信者たちが「真のお母様」と崇める教団のトップ・韓鶴子(79)。彼女が、日本の信者の前に姿を見せる日だったのである。

 絶対に殺す――。山上容疑者は固い決意と共に、荷物に火炎瓶を忍ばせて、イベント会場に入ろうとした。だが、

「部外者は会場に入場できず、この時、山上容疑者は計画を断念しています」(捜査関係者)

 あの映画の主人公みたいにはなれなかった……。失意は深かったに違いない。

 後に彼はTwitterにこう書きつけている。

〈オレがJOKERを観たのは鶴子がやって来る前日、名古屋でだった。〉(20年8月12日)

 国際展示場でのイベント前日の5日、韓は名古屋市内のホテルに米下院議員や自民党議員たちを招き「ジャパン・サミット」を開いている。

 その前の日、つまり19年10月4日は映画「ジョーカー」が日米同時公開となった初日だったのである。

〈ジョーカーは何故ジョーカーに変貌したのか。何に絶望したのか。何を笑うのか。〉(20年1月26日)

「ジョーカー」は、特殊な疾病を抱えた男が、社会の底辺から這い上がろうとするも、心折れ、社会へ復讐する悪役・ジョーカーになり、世上を騒乱の渦に陥れる物語である。

山上容疑者がルポライターに送った手紙

■事件前日に送られた手紙


 では、現実ではどのような道筋をたどり、山上容疑者は「ジョーカーに変貌したのか」。読み解く鍵は、彼がしたためた手紙にある。

〈ご無沙汰しております。「まだ足りない」として貴殿のブログに書き込んでどれぐらい経つでしょうか。〉

 この書き出しで始まるA4判1枚の書面が入った封書の送り先は、統一教会を批判する活動を行っているルポライターである。消印は「岡山中央」になっていた。

 山上容疑者は事件前日の7月7日、遊説中の安倍晋三元首相(享年67)を、岡山でも狙っており、かの地から投函したのである。もっとも、

「安倍さんが今月6日、横浜に応援演説に入る際にも山上容疑者が狙っていたという情報があります。前日、三原じゅん子の事務所に、執拗に翌日の安倍元首相の立ち位置などを確認する問い合わせがあったのです」(前出・捜査関係者)

 手紙はこう続く。

〈私は「喉から手が出るほど銃が欲しい」と書きましたがあの時からこれまで、銃の入手に費やして参りました。その様はまるで生活の全てを偽救世主のために投げ打つ統一教会員、方向は真逆でも、よく似たものでもありました。〉

「銃の入手」と記しているが、実際は“自製”。昨年秋からネットで銃の作り方を調べ、部品も通販で仕入れて試作を繰り返していた。

「黒色火薬もお手製。犯行に使った銃は金属製の筒2本を木製の板やテープで固定し、発火用の電気コードを接続したものでした」(社会部記者)


■深夜に異音が


 家賃3万5千円、19平方メートルで間取り1Kの部屋は武器工場と化し、外に異音が漏れていた。マンション階下の住民が言う。

「月に1、2回、深夜に“ギュイーン、ドドドド”という音が響いていました」

 今月5日、山上容疑者を目撃していた別の住人は、

「こちらからあいさつをしたんですが、会釈すらなく、目も伏せたまま。まるで、自分以外は世界に誰も存在しないかのようでした」

 手紙の先を読もう。

〈私と統一教会の因縁は約30年前に遡ります。母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産‥,この経過と共に私の10代は過ぎ去りました。その間の経験は私の一生を歪ませ続けたと言って過言ではありません。

 個人が自分の人格と人生を形作っていくその過程、私にとってそれは、親が子を、家族を、何とも思わない故に吐ける嘘、止める術のない確信に満ちた悪行、故に終わる事のない衝突、その先にある破壊。〉


■夫の死亡保険も寄付


 手紙を受け取ったルポライター、米本和広氏が語る。

「山上容疑者の犯罪は許されることではないですけど、家庭環境を考えると、その苦しみは理解できます。実際、統一教会によって家庭が崩壊してしまうケースは多いですから」

 事件の背景には母親の統一教会への入信がある。山上容疑者の伯父によると、入信のきっかけは二つ。一つは、父親が1984年12月に自殺したことだ。

「翌年2月に妹が生まれたのですが、彼女は父親の顔を知りません」(伯父)

 加えて、山上容疑者の兄が6歳の時に小児がんになったことも、母親を信仰の道へと駆り立てた。

「長男は7歳で抗がん剤を投与され、その翌年には頭蓋骨を開ける手術まで行っています」(同)

 信仰は家族を一切顧みないものだった。

「統一教会は母親の入信時期を98年だと発表していますが、あれは間違い。本当は91年です。入会時に、2千万円を献金してますよ」(同)

 3年以内に母親は合計で6千万円を教会に寄付。原資は主に夫の死亡保険金だった。

 山上容疑者は手紙の続きでこう訴えている。

〈世界中の金と女は本来全て自分のものだと疑わず、その現実化に手段も結果も問わない自称現人神。

 私はそのような人間、それを現実に神と崇める集団、それが存在する社会、それらを「人類の恥」と書きましたが、今もそれは変わりません。〉


■親族にも献金を求め…


 実際、統一教会はあの手この手で金を吸い上げた。その一つが母親も参加したという“霊肉界祝福式”だ。

「寡婦が死別した伴侶と祝福(結婚式)に臨む儀式で、参加するに当たり、教会からは多額の献金を要求されます」(宗教ジャーナリスト)

 また母親は、伯父に教会への献金を乞うてもいた。

「“献金してくれ”と母親に言われてな。入信を勧められたわけではなく、お金だけ払うよう勧められたんや。“私の霊や夫の霊を慰めなさい”って。4代前までの霊を治めるために1回40万円払えって理屈です」(前出・伯父)

 山上容疑者自身もTwitterで、

〈オレが14歳の時、家族は破綻を迎えた。統一教会の本分は、家族に家族から窃盗・横領・特殊詐欺で巻き上げさせたアガリを全て上納させることだ。70を超えてバブル崩壊に苦しむ祖父は母に怒り狂った、いや絶望したと言う方が正しい。包丁を持ち出したの(ママ)その時だ。〉(20年1月26日)

 と、統一教会によって、一家が苦境に立たされていった様子をつづっている。


■大学は金銭面の問題で断念


 山上容疑者は地元の小学校と中学校を卒業後、奈良県下の名門・郡山高校に進学する。

 母親の信仰は彼の人生に暗い影を落としていたものの、その時点までは、前途は決して悲観すべきものではなかっただろう。だが、98年に建設会社を営んでいた母方の祖父が死去すると、状況は一変。母親が会社の土地を相続したが、

「それを処分して、2千万円を作り、即座に献金してしまいました」(同)

 結局、母親が教会に献金したのは、保険金と自宅を含め複数の不動産の売却代金などを合計し、1億円は下らないという。結果、

「大学は入学金や学費の問題があって、断念せなあかんかった。それで、公務員として働こうと、進路を変えたんです。消防士になりたいという話が徹也からあり、そのための予備校にも通わせました」(同)

 だが、努力のかいなく、

「消防士の試験、筆記は通ったんやけど、実技で落ちて。かなりの近眼だったからでしょう。結局、私の親族が徹也に海自の働き口を見つけてきました」

 任期制自衛官として、02年8月、海上自衛隊の佐世保教育隊に入隊。ようやく人生が上向きになるかと思われたのも束の間、今度は母親がその年の12月に自己破産に追い込まれる。


■兄と妹を救おうと自殺未遂を


 もはや、宗教が一家の生活基盤を根こそぎ奪ったのは明らかだ。この点、統一教会側は今月14日のコメントで、これまで自発的に一家に5千万円を返金してきたかのように説明したが、

「それは違います。私が、統一教会側に対して母親の破産の情報を全部知らせろ、献金の一覧を全部出せと迫ったんです。そしたら教会側から、5千万円で全部勘弁してくれと言ってきたんです。全部うやむやにするために」(同)

 もっとも、伯父の交渉虚しく、母親は返金された分まで再び統一教会に寄付してしまったという。息子の絶望は想像に難くない。そして05年1月、“事件”が起きる。

「徹也が自殺未遂したんです。統一教会が原因で兄と妹の生活まで困窮している。そこで、自分が自殺して保険金を渡そうと考えたというわけです。本人からそう聞きました」(同)

 一命を取り留め退院したのち、海自を抜けた彼は測量会社など複数の勤務先でアルバイトをしながら暮らし始める。

「生活を立て直そうとしたのでしょう、山上容疑者は働きながら宅地建物取引主任者(現・宅地建物取引士)、2級ファイナンシャル・プランナーなどの資格を取得しました」(社会部記者)

 ところがそんな中、さらなる不幸が。彼が自らの命と引き換えにその生活を守ろうとした兄が、15年に将来を悲観して自殺。親族によれば、山上容疑者は葬儀で、

「なんで兄ちゃん死んだんや。アホやな、生きていたらええことあるのに」

 そう嘆いていたという。


■〈安倍は本来の敵ではない〉


 兄の死をもって、ジョーカーに変貌する素地は整ったといえよう。ただあくまでも、憎しみの対象は一貫して統一教会であり、米本氏への手紙でもこう記している。

〈苦々しくは思っていましたが、安倍は本来の敵ではないのです。あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会シンパの一人に過ぎません。

 文一族を皆殺しにしたくとも、私にはそれが不可能な事は分かっています。分裂には一挙に叩くのが難しいという側面もあるのです。

 現実に可能な範囲として韓鶴子本人、無理なら少なくとも文の血族の一人には死んでもらうつもりでしたが鶴子やその娘が死ねば3男と7男が喜ぶのか或いは統一教会が再び結集するのか、どちらにしても私の目的には沿わないのです。〉

 なお、ここに登場する三男は教団から追放された存在で、七男もサンクチュアリ教会なる分派を率いている。山上容疑者が韓鶴子を敵視し、“銃器礼賛”思想のサンクチュアリに属しているとの情報が一部であったが、それは誤りのようだ。

 米本氏は、

「“安倍は本来の敵ではない”という認識は合っていますよね。本人が自覚している通り、一番に韓鶴子を狙いたかったけど、できないから安倍さんを、というのはおかしいよね。もっと違う方法があるはずなのに、それを考えられないくらい追い込まれていたということでしょうか」


■「喉から手が出るほど銃が欲しい」


 一昨年末には、米本氏のブログへのコメントでも教団に対する激しい憎悪を見せていた。

〈統一教会(中略)を破壊しようと思えば、最低でも自分の人生を捨てる覚悟がなければ不可能ですよ。

(中略)我、一命を賭して全ての統一教会に関わる者の解放者とならん〉

〈世界平和家庭連合? ポルポトか? スターリンか? ヒトラーか? どんな地獄だ?
 人の生き血はどんな味だ?〉

〈統一教会の所業が彼ら(ヒトラーやスターリン)に比肩し得る人類に対する罪レベルだからだ。

(中略)いずれ誰かが殺されるだろう。

 私と社会にはそれをビールでも飲みながら娯楽として消費する権利がある。行使するかは自由だが。

 だが言っておく。復讐は己でやってこそ意味がある。不思議な事に私も喉から手が出るほど銃が欲しいのだ。何故だろうな?〉


■「信仰は続けたい」


 そして今年1月、派遣先の工場で同僚と仕事の仕方などを巡って衝突。その後もトラブルがあり、5月に自己都合で退職している。

 増幅する狂気がそのまま犯行直前の手紙に記された決意につながっていることが分かる。“狂弾”の原因を作った母親の現在の心境は冒頭で紹介したが、教団に対してはどう思っているのか。前出の統一教会関係者が声を潜めて言う。

「母親は安倍さんのご家族に謝罪したいとは話していましたが、一方で、息子さんがこれだけ重大な事件を起こしたのに、教会の批判は一切、口にしていません。事件後も“私の至らなさで、こんなことになってしまった。でも、信仰は続けたい”と言っています」

 この期に及んで、信心は揺らいでいないというのだ。

 一方で、山上容疑者の妹に遭遇した知人は、こう打ち明けられたという。

「あの事件あったやろ。あれの犯人、ちょっと身内っていうか、私のお兄ちゃんやねん。だから今ちょっと面倒くさくて大変なんや。でも、もう4年くらい会ってないし、一緒に住んでもおらんから、事件起こしたとか言われても、知らん」

 山上容疑者の手紙は最後、こう結ぶ。

〈安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません。〉

 だが邪宗にもたらす意味、結果は明確に見通していた。彼はこう供述している。

「自分が安倍氏を襲えば、家庭連合に非難が集まると思った」

「週刊新潮」2022年7月28日号 掲載

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