統一教会 殺人事件も起きた日本人妻の悲劇 従軍慰安婦の過去があるからどんな韓国人と結婚させられても感謝しなければらない

統一教会 殺人事件も起きた日本人妻の悲劇 従軍慰安婦の過去があるからどんな韓国人と結婚させられても感謝しなければらない

文鮮明

 全国霊感商法対策弁護士連絡会は、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合/註)による霊感商法の被害者救済と被害根絶を目指している。結成は1987年と古く、安倍晋三元首相(享年67)が射殺された事件の影響で、再び大きな注目を集めている。(註:以下、「統一教会」と表記)。

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 7月11日、統一協会の田中富広会長が会見を開いた。ところが、その内容が「あまりにも事実と反する」として、連絡会も翌12日に会見を開いた。

 テレビや新聞の報道で目にした方も多いだろう。会見には“二世信者”も出席し、苦難に満ちた半生を振り返った。担当記者が言う。

「この二世信者は女性で、衝立で顔などを隠し、プライバシーを保護して出席しました。女性は信者だった母親から信仰を強要され、“親孝行のため”に受け入れたそうです。そして1995年、21歳の時に合同結婚式に参加し、韓国人男性と結婚させられます」

 ニュースサイト「TBS NEWS DIG」は19日、「【記者会見の全容】『全国霊感商法対策弁護士連絡会』の会見 『夫からの暴力』『自己破産』旧統一教会の二世信者も出席し“苦悩”語る」の記事を配信した。

 女性は統一教会から、どんな国籍の男性であっても、どんなに相手の学歴が低くても、そして、たとえ経済的に難しい事情を持っていたとしても、《全てを神に預けて断っては決していけません》と事前に誓わされたという。

 結婚を強制された男性は韓国人。女性よりも2歳年下で、相手は当時19歳だった。


■永住権目当ての夫


《家もなく、職もなく、親もない。そして学歴は中学中退という人でした。住むところがなかったので、教会に転がり込んできた男性でした。そのような男性が私のいわゆる主体者、永遠の伴侶としてマッチングされたわけです》

 信者以外の人なら誰もが、こんな結婚はうまくいくはずがないと思うだろう。おまけに韓国人の夫は、《気に入らないことがあると私のことを殴る人》だったというから論外だ。

 二世信者の女性は離婚を希望したが、母親にも統一教会にも止められた。長い間、苦しんでいたが、夫が《日本での永住権欲しさに統一教会を利用した》ことを知るに及び、別れる決心がついたという。

 母親も、暴力を振るう夫を当たりにして、ようやく離婚を認めた。だが、洗脳状態にあった女性は、《罪悪感が生まれましたし、私は天国に行けないんだな》と考えていた。

 女性は再婚するため“再祝福”、つまり2度目の結婚を選ぶ。その際、日本と韓国とでは必要な献金額が違うことに気づいた。日本の統一教会は140万円を要求してきたが、韓国の場合は14万円だった。


■「日本人女性と結婚できる」


《韓国のうら若き乙女を従軍慰安婦として蹂躙した過去が日本人にはあるから(中略)結婚させられても、感謝しなければならないという根本的なそういう教え、反日的な教えがあるからなんですね。だから日本人はそう大金を払わされて当たり前。大金を払わされて、感謝しろという言い方をよくしていました》

 再婚相手も韓国人男性だった。後に《学歴、職業、年齢全て嘘をついて、申請をしてきた人》だったことが判明したという。

 再婚相手とは10年間、韓国で生活を共にしたが、夫のクレジットカードによる浪費が原因で自己破産。統一教会の教祖・文鮮明(1920〜2012)が死去したことから洗脳が解け、2013年に子供を連れて日本に帰国した。

 統一教会は1954年、韓国ソウルで設立された。そして韓国国内で信者を獲得するため、特に“嫁不足”に悩む農村部で、「合同結婚式に参加すれば日本人女性と結婚できる」と宣伝していた。

 AERAは1992年8月18日号に、「花嫁難の韓国農村、合同結婚式で日本人妻 統一教会の農村布教」の特集記事を掲載し、現地の実情を詳しく伝えた。


■“現世利益”


「前ソウル特派員による署名記事で、掲載された時期は信者の桜田淳子さん(64)が合同結婚式に臨む直前にあたります。文中には農業を営む32歳の韓国人男性が登場し、《入会後、7日間と21日間の2回にわたる修練と、7日間の断食》だけで合同結婚式に参加したことを明かしています。この男性が見せた“釣書”によると、結婚相手となる日本人の女性信者は33歳、四国の教会に所属、信仰は《11年3カ月》と書かれていたそうです」(同・記者)

 記事では文鮮明による《農村男性を日本の娘と祝福(合同結婚)させた場合、村中がひっくり返る》、《農村男性に嫁をとらせてやると、みなさんに対する評価は面長(村長)や郡守(郡の首長)を超える》との発言も伝えている。

 統一教会が韓国人男性に「教会に入れば日本人女性と結婚できる」ことを、一種の“現世利益”として強調していたことが分かる。

 では、日本人の女性信者は、どのような想いを抱きながら韓国に渡ったのだろうか。彼女たちの心情がよく分かる記事が、週刊文春の1995年8月31日号に掲載されている。


■信仰でもギャップ


 署名は《有田芳生&本誌特別取材班》。前参議院議員でジャーナリストの有田芳生氏(70)は、80年代後半から霊感商法の取材に携わっていたことでも知られる。

「有田さんたち取材班も韓国の農村地帯に注目しました。大田(テジョン)市郊外の農村部に住む34歳の男性信者に『なぜ入信したのか』と質問すると、あっさり『「信者になれば結婚できる」と言われたから』と答えています」(同・記者)

 洗脳状態にある日本人の女性信者は、《教祖の生まれた国である韓国の男性信者と結婚することが、「光栄で自慢」になる》という。

 興味深いことに、この特集記事では韓国人男性の悩みやトラブルにも誌面を割いている。33歳のサラリーマンが登場し、合同結婚式で日本人女性と結婚したが、《日本人を嫌う両親》との諍いが絶えないと打ち明けた。

 そもそも男性は、熱心な信者ではない。一方、女性の信仰は並外れている。そのギャップを次のように語っている。

《「一心不乱に教えとひとつになろうという彼女の姿勢にはただただ驚いて、口を挟むことができません。韓国での信仰は、あっちを見たり、こっちを見たりというものですから、日本人の一途な一生懸命さにはついていけません」》


■性的トラブル


 信者である日本人女性は、韓国で生活することになっても、何とか順応しようと努力を重ねる。その理由について女性たちは、有田氏らに《「日本よりは楽だ」》と口を揃えたという。

 有田氏は《それはそうだろう》と書く。日本の信者は《常に、伝道と経済活動のノルマに追われている》が、韓国ではそれほどでもないからだ。

 とはいえ、合同結婚式自体に無理があるのは言うまでもない。夫の暴力や散財は前に見た通りだ。時間が経てば経つほど、トラブルの報道は増えていく。

 2010年3月には600ページを超える大著、『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会)が出版された。

 著者は北海道大学教授・櫻井義秀氏と中西尋子氏(註)。2人とも専門は宗教学だ。

 この労作を元に、週刊ポストは2010年6月4日号に特集記事を掲載した。櫻井・中西の両氏は同誌の取材に、日本人妻は夫と性的、金銭的なトラブルを抱えるケースが少なくないと指摘する。


■困窮を極めた生活


 統一教会が《「教団が関連団体を使って」結婚難にあえぐ農村部の男性に「信者になれば、日本人と結婚できますよ」と、勧誘》しているため、金銭トラブルは必然的に起きるようだ。中西氏の解説を引用しよう。

《「韓国は超学歴社会なのですが、農村部の男性は中学校卒という人も珍しくはない。そうなると自ずと仕事も制限されます。『夫は失業しているのでサラ金に借金をしている』『月給がたったの30万ウォン(約2万3000円)しかない』と嘆く声もありました」》

 桜田淳子氏が合同結婚式に出席したのは1992年。それから20年が経過した2012年、週刊文春は12月6日号に「統一教会『合同結婚式』の悲劇 日本人妻はなぜ韓国人夫を殺したのか?」の特集記事を掲載した。

 フリーライター・石井謙一郎氏の署名記事だ。52歳の“日本人妻”が夫で51歳の韓国人男性を殺害した事件について、詳細に取材している。

 もちろん殺人が重罪であることは論を俟たないが、《結婚してからずっと、貧乏や夫の飲酒、乱暴に苦しんできた》という苦しみが存在したのは事実だ。

 95年の合同結婚式に参加して以来17年間、夫は常に無職。子供はいなかったが、生活は困窮を極めた。


■「アルコール依存症で4、5年間仕事をしていません」


 国からの基礎生活受給費約50万ウォン(当時で約4万円)、妻が食堂や家政婦の仕事で一日12時間働いて得る50万ウォン(同)、合計約8万円で生計を立ててきた。

 更に夫は腎臓病に罹患、人工透析の費用70万ウォンが家計を圧迫した。妻は懸命に看病するが、夫は飲酒しては暴れ、家を壊し、悪態をつく……。記事には《その扱いは、飼っていた犬以下に感じられるほどだった》と書かれている。

 夫を殺害して“洗脳”が解けたのか、記事には興味深い記述がある。警察の取り調べで宗教を信じているかと質問された妻は、《「いまは宗教はもっていません」と答えた》という。

 週刊文春の記事も、前出の『統一教会』の共著者である中西尋子氏が取材に協力している。日本語で書かれた韓国での機関紙を入手したところ、“日本人妻”が困窮し、統一教会の内部に作られた「互助会」に助けを求める記述があったという。

《夫がアルコール依存症で4、5年間仕事をしていません。本人が工場で働いていますが、月57万(編集部註:ウォン。現在のレートで約5万9000円)の給料で生活が困難です。現在、不景気のため2カ月給料が出ていません。(略)身も心も疲れ果て、生き地獄から解放されたい心境ですが、逃げる訳にもいかないので、互助会で何か力になっていただけたらと思います》


■「家庭崩壊の瀬戸際」


 こうした“日本人妻”の辛苦は、まさに氷山の一角に過ぎない。統一教会では、苦難に耐えるほど幸せになると教える。そのため被害が表面化しない傾向が強い。

 櫻井・中西の両氏が執筆した『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』の「おわりに」には、以下のような記述がある。約10年前の文章だが、全く古びていない。統一教会の問題点が全く変わっていないからだ。

《統一教会は高度経済成長下にあった日本を打出の小槌として使い、世界宣教の布石を打った。統一教会の事業体で生活の糧を得ているのは一部の幹部に限られ、日本において青年信者の多くは合同結婚式まで数年間ただ同然で使用され、壮婦と呼ばれる既婚婦人達は自己破産や家庭崩壊の瀬戸際まで資産を献金するよう迫られている》

《統一教会の信者は、地上天国の実現、霊界の解放という宗教的理念のために生活の安定、家族の扶養、老後の保障といった問題を一切度外視して、文鮮明をメシヤとして信奉し、配偶者選択から家族の将来を含めて一切を委ねきる。このような信仰や組織のあり方を構築してきた統一教会の責任は韓国のみならず、日本の幹部にも問われるべきものだ》

註:中西尋子氏の肩書きは、書籍には《関西学院大学、関西大学、京都女子大学、阪南大学等非常勤講師》と記載。

デイリー新潮編集部

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