側近2人を解任したゼレンスキー大統領 ロシアの魔の手が忍び寄る!

側近2人を解任したゼレンスキー大統領 ロシアの魔の手が忍び寄る!

ゼレンスキー大統領(自身のFacebookより)

 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、解任されたゼレンスキー大統領の2人の側近について聞いた。

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 ウクライナのゼレンスキー大統領は7月17日、情報機関である保安局(SBU)のバカノフ長官とベネディクトワ検事総長の解任を発表した。60人以上のSBUと検察の職員がロシアに協力していたことが分かり、その責任を取らせたという。

「ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク州や南部のヘルソン州など、ロシアの支配下にある地域にいるSBUや検察の職員が、ロシアに情報を漏らしているのです」

 と解説するのは、勝丸氏。かつて公安部外事警察に所属していた同氏は、ロシアを担当していた。

「SBUや検察の職員は、現在ロシア軍の戦争犯罪を調査しています。ところが、多くの職員が、ロシア側の依頼で戦争犯罪の証拠を破棄したり焼却したりしていたのです」


■60人以上が寝返った


 ロシアに対して、ウクライナ人は一致団結して戦っているのではなかったのか。

「日本の報道だけではピンと来ないかもしれませんが、現在ウクライナ南部や東部は、かなり深刻な状況に追い込まれています。ロシアの占領下にある南部のヘルソンとメリトポリでは、地元住民へのロシアのパスポートの配布が始まっています。東部のドネツク州やルガンスク州もロシア銀行の支店が置かれ、ロシア通貨ルーブルが流通しています」

 着々と“ロシア化”が進んでいるのだ。

「東部や南部に住むウクライナ人は、将来に不安を抱いている者が少なくない。そこでロシアの諜報機関であるGRU(ロシア軍参謀本部情報総局)やSVR(ロシア対外情報庁)の諜報員はSBUや検察の職員と接触、ロシアに協力してくれたら、将来の仕事や年金、住居などを保障すると持ちかけています。それで寝返った職員が60人以上も出てしまったというのです」

 ロシアは、人の弱みに付け込んだとも言える。

「それに元々、ロシアとウクライナは親戚国家ですからね。ウクライナ人の親戚がロシアにいるのは珍しいことではありません。SBUや検察の職員に、『協力してくれないなら、ロシアにいる両親が不利な目に遭うぞ』と脅かされたら、ひとたまりもないでしょう」

 寝返ったSBUや検察の職員は、戦争犯罪の証拠を隠滅しているだけではないという。

「中には、職員名簿をロシアへ提供し、協力してくれそうな人物を教えているのです。ロシアの諜報員は、その名簿をもとに、次々と職員を協力者にしているそうです」


■自宅に軟禁状態


 解任されたバカノフ長官やベネディクトワ検事総長は、職員が寝返ったことを承知していたのか。

「バカノフ長官は、捜査情報の破棄や職員名簿がロシア側に漏れていることを知っていました。ところが、それを制止しなかったのです。本来なら、情報漏洩を止めさせ、職員を逮捕すべきですが、ゼレンスキー大統領にも報告しなかったのです。ベネディクトワ検事総長も同様に情報漏洩を知りながら、大統領に報告しませんでした」

 元々、バカノフ長官とゼレンスキー大統領は友人だったという。

「3月に行われたロシアとウクライナの停戦交渉にバカノフ長官も参加しています。この時点では、ゼレンスキー大統領はバカノフ長官を信頼していました。ところがその後、戦局が次第にウクライナに不利になってきたため、バカノフ長官は職員の寝返りに目をつぶるようになった。さらに問題なことに、ウクライナの政権中枢にはロシアのGRUやSVRのスパイがかなりいるといいます。バカノフ長官やベネディクトワ検事総長がロシアの諜報員に取り込まれている可能性すらありますね」

 バカノフ長官やベネディクトワ検事総長は現在、自宅などで軟禁状態にあるそうだが、ゼレンスキー大統領は、職員の寝返りをどうやって知ったのか。

「ゼレンスキー大統領は、親しくしている記者などの情報源から、ロシアの諜報活動に関する色々な情報を入手しています。ところが、それらをバカノフ長官や検事総長に聞いても、そんな情報は上がっていないと答えたそうです。そんなことが何度か繰り返されるうちに、これはおかしいと気づいたそうです。そして職員の裏切り行為が判明したのです」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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